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#絆

ちぎれ雲|詩

ちぎれ雲|詩

「ちぎれ雲」

ふたえ重なり伸びゆく影法師
途切れた音に溢れるしずく

見あげる青には忘れた頃の
その名残のようなちぎれた雲に

吹かんすな……

迷い子ごとく差しだす右の手
腫らす涙は赤子のようで

遠い夏、
あぐんだ風を此処にあつめて

旅のおわり|詩

旅のおわり|詩

「旅のおわり」

夜にとける既の強がりが
ふわり音に寝転んで流れはじめた

見失いそうになった月あかり
雲の隙間から溢れ落ちる
悪戯好きな星くずの吐息に擽って

降り始めた雨に満たされていた
古より聴こゆ懐かしい痛み
幾度となく繰り返してきたはずの

旅のおわり、
ため息を閉じこめた時の欠片

夏まつり|詩

夏まつり|詩

「夏まつり」

ゆらゆらと游ぐ金魚すくいの空

まるで笑顔みたいなまん丸の瞳に
僕は釘付けになってしまった

お姫様をさがしているんだ
鼻歌まじりなあの頃のお喋り
おおきな空にちいさな波がたつ

とおくに聴こえる祭囃子が
子守唄のように気泡に溶けた

僕なら此処にいるよ
精一杯に伸ばした指さき
真夏の夜に向かってまっすぐな……

尽きんもの|詩

尽きんもの|詩

「尽きんもの」

遠まわりを選んだリアスな潮風

嘘みたいな本当の話の横顔は
心なしか、
いつもの其れとは違ってみえた

繋ぎあわせて
君がみつめる空を創りあげる
其処に輝く星たちを想像しながら

たった一枚
手もとに残された古い写真

消えることのない海の記憶と
尽きること、
それを知らないあの頃の俤ゆれて

微睡みに繋いで|詩

微睡みに繋いで|詩

「微睡みに繋いで」

何もない空に朝がやってくる

瞳のまえに広がる
きっと淡いであろう赤子のみどり
産声をあげたひかりの匂い
それは素足の心に
くすぐったいを教えてくれる

背から絡みつく
まるでカフェモカのような温もりと
何もないはずの空に手を伸ばす

微睡み……

昨日より、きょう
今日よりも明日なんだって

違うよ
深い眠りにつく前に
僕たちは誰よりも何よりも、ふたり

そして、君へと。|詩

そして、君へと。|詩

「そして、君へと。」

ひとつ、ふたつ……

見あげる夜空に終わりゆく星と
透明な瞳をもつ少年の背中

ひとつ、また ひとつ……

雨粒の代わりに拾いあげた
小さな正義をポケットにしまって

膨らんだ拳から溢れる涙は
きみの宝物へと流れていくから
ほら、大丈夫
真昼の空には消えない星がある

ひとつぼし|詩

ひとつぼし|詩

「ひとつぼし」

君を独りにはしないから

空に
まだ星が遊んでいた

存在意義を失くした僕と
見失いそうに立ち尽くす君と

決して、君を……

あの日の君が
そう言って空を見上げていた

君、物語|詩

君、物語|詩

「君、物語」

天色に紛れこんだ優しい嘘
みなみの海に眠る桜の貝殻は
遠いお空をみはるかす

囲った想いの水面に触れて
くるりくるりと左にまわす
心を軸にしたならば
ゆるり愛おしさが弧をえがく

君の声が聴きたいんだ
どんな物語だって構いはしない

君の声が、聴きたいんだ……

君だけに見える景色|詩

君だけに見える景色|詩

「君だけに見える景色」

奪われゆく視界に想いめぐる

つたい歩きが空に舞うとき
零れ落ちたサヨナラは
せめて君に掬い上げて欲しいと

とても優しいひとだった
とても愉しいひとだった
誰よりも弱さを教えてくれる
とても強いひとだった

奪われゆく視界に君がゆれる
つたい歩き、
その先にある景色を
君だけは知っているのだろうか

Ka'pilina|詩

Ka'pilina|詩

「Ka'pilina」

蹴破られた扉の向こう側
弱さの中にある強さの意味を知る

甘くて苦いひかり白く激しく
メザメルト消えていく黒の記憶たち

愛してると触れる指先
永遠を意味する
マウロアのくちづけ心地よく