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佐藤 慈雨/@ameyoru
2019年6月29日 11:18
2011年3月11日。あなたはどこで、何をしていましたか?恐らく、健全な(あるいは、多少不健全であっても)日本人であれば、その答えを持っているはずです。2011年3月11日。僕は青森県の十和田市にいました。それは何の特徴もない、平凡な一日のはずでした。僕はアパートで、罪のないワイドショーを見ながら、遅めの昼食を取った後、「めんどくさいなぁ」と呟きながら、午後の仕事に向かって
2019年6月21日 11:34
夜に車を運転しながら、カーステレオでビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』を聴いていました。壊れやすい陶磁器のような、ピアノの音色は、アウトロの一音まで美しい。しかし、実生活での彼は、とても美しいとは言えない人間だったようです。麻薬とアルコールに耽溺し、身を滅ぼしていきます。ある人は、彼の人生を評して『緩慢な自殺』と呼びました。*僕が住んでいる秋田県も、自殺率が全国一
2019年6月20日 20:59
「路地裏ばかり覚えている」夜に缶コーヒーを買いに出掛け、十和田市の街中を歩きながら、そう思いました。虚ろな青白い顔をした佐藤青年が、この街に初めて住んだときも、同じようにふらふらとあてもなく彷徨したのでしょう。ドリーミングで、ノイジーな音楽を聴きながら。*自分がかつて住んでいた土地を再訪するのは、微かな緊張感を伴うものです。すれ違う人々の中に、見知った顔を探してしまう。
2019年6月18日 08:06
6月の路上に猫が死んでいました。猫は、そんなところで死ぬべきではなかったのです。アスファルトの上の死は、何処にも辿り着きません。出来ることなら、繁茂な森の中の、温かい草の上で、安寧の旅路につくべきなのです。*猫にも、当日の予定があったはずです。ネズミを追い、モグラを追いもしかしたら、素敵な恋に落ちることだって、あったのかもしれません。*薄らいだ闇の中で目覚めた猫は
2019年5月22日 21:01
温泉は神の恩寵であると考えます。慈悲深い神が、過酷な環境で暮らす砂漠の民に与えたのが石油なら、火山と地震に苦しむ島国の民に与えたのが、温泉です。そして、当然のことながら、その神の光は、すべての民の頭上に、あまねく降り注がなければなりません。秋田県の温泉地の数は、青森県、福島県に次いで、全国6位を誇っております。(1位は北海道)ただし、温泉の本数自体は少なく、他県に比べると一軒宿や
2019年5月19日 21:22
(前回の続き)高村光太郎が長沼智恵子と出会ったのは、彼が最も荒んだ生活をしていた28歳の頃です。旧態依然とした日本の美術界で孤立し、自己憐憫と退廃の中に、その身を落としていた時です。ちょうど、出会った頃の智恵子の言葉を、友人が日記に残しております。「世の中の習慣なんて、どうせ人間が作ったもの。それに縛られて、一生涯自分の心を偽って暮らすのは、つまらないことです。だって、私の人生なんで
2019年5月18日 15:44
真夜中に一人、部屋で古い日記を読み返しておりました。僕がまだ20代で、仕事の関係で青森県に住んでいた頃のものです。当時の僕は友人が一人もいなくて、孤独で、お金もなく、特に肌に突き刺さるような青森の冬の寒さは、心身共に堪えました。自分の存在の希薄さに嫌気がさして、いっそのこと消えてしまおうかと考えたこともありました。行きつけの古本屋で、高村光太郎の詩に出会ったのは、そんな時です。
2019年5月15日 19:06
女には、女の匂いがある。その事に気付いたのは、いつの頃でしょうか?「男くさい」とも違うし、「ガキくさい」のとも違う。ましてや、「年寄りくさい」のとも全然違う。女性には、女性特有の匂いがあるのです。特に文学や音楽の世界において、女性がその「女くささ」を発揮するとき、僕たち男の子は全く太刀打ちできません。例えば、「熱き血潮に…」なんて詠まれた日には、ただただ感心し、平身低頭するしか
2019年5月9日 23:21
部屋は人の心だといいます。そこに住んでいる人の心の有り様が、部屋には反映されていると。散らかった部屋の住人は心が乱れているし、美しい調度品が飾られた部屋には、豊かな心の持ち主が住んでいるといいます。先日、秋田市立千秋美術館で開催されている「デンマーク・デザイン展」を訪れました。蓮の池が有名な千秋公園の向かい側。「アトリオン」という名の複合ビルの1階に美術館はあります。受付で入館料
2019年5月7日 23:04
仕事終りの夕方にキッチンでひとり、アサリのスープを作っておりました。丁寧に砂を抜いたアサリを鍋に放り込み、水を加えて、コンロの火を点けます。難しいことは何もありません。特に今日のような、久しぶりの仕事で疲れた体には、シンプルで旨い料理がいちばんです。僕はキッチンの椅子に座ると、口笛を吹きながら、アサリの貝殻が開くのを待ちました。その時、吹いていたのは、ジョン・コルトレーンの『マイ
2019年5月6日 13:34
これからブログを書き始めるにあたって、本来であれば、まず自己紹介をするのが通例であろうかと思います。ただ、皆さんにとっては、僕がどこで生まれたとか、どのような(チャチな)少年時代だったかという話は興味がないと思いますし、『ライ麦畑』の少年の言うとおり、そういったことを書くのは僕にしても「退屈」なんですね。そこで、とりあえず僕が住んでいる町について、お話ししたいと思います。生まれ育った町