6月の路上に猫が死んでいました。
猫は、そんなところで死ぬべきではなかったのです。
アスファルトの上の死は、何処にも辿り着きません。
出来ることなら、繁茂な森の中の、温かい草の上で、安寧の旅路につくべきなのです。
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猫にも、当日の予定があったはずです。
ネズミを追い、モグラを追い
もしかしたら、素敵な恋に落ちることだって、あったのかもしれません。
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薄らいだ闇の中で目覚めた猫は、その日の糧を求めて走り出します。
一台の躁急なトラックが、そんな猫の柔らかな夢ごと轢き殺したのです。
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