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渇仰

温泉は神の恩寵であると考えます。

慈悲深い神が、過酷な環境で暮らす砂漠の民に与えたのが石油なら、火山と地震に苦しむ島国の民に与えたのが、温泉です。

そして、当然のことながら、その神の光は、すべての民の頭上に、あまねく降り注がなければなりません。

秋田県の温泉地の数は、青森県、福島県に次いで、全国6位を誇っております。
(1位は北海道)

ただし、温泉の本数自体は少なく、他県に比べると一軒宿や小規模な温泉地の割合が高い傾向にあるそうです。

それは、つまり秋田の人々が「温泉に貴賤はない」と考えている証左であり、湧出量の大小・泉質の種別に関わらず、それぞれの温泉の個性を認め、愛してきたことを示しています。

「源泉掛け流し」であろうが
「循環」であろうが

「硫黄泉」であろうが
「単純泉」であろうが。

それが地域の人々から必要とされ、日常的に利用されている限りは、敬意を払う必要があるのです。

確かに一泊数万円もするような温泉旅館にも、アトラクション的な楽しみ方があるとは思います。

ただ、温泉の本来の「趣旨」からすれば、毎日通えて、その効用を実感できるのが一番なのです。

温泉には、様々な事情を抱えた人々が集まっています。

例えば、家族が重い病気に掛かっており、その看病の合間に、息抜きとして利用している人たちがいます。(かつての僕のように。)

また例えば、自身が難病を患い、最後の望みとして、すがるような気持ちで温泉に通っている人たちもいます。

温泉地に漂っているのは、切実で、真摯な、信仰にも似た気持ちなのです。

(参照:『あきたのいで湯100泉』著・長井登志樹 発行・無明舎)

【附記】
…というわけで、今後も身近な400円~600円ぐらいの(毎日通える)温泉を紹介していきたいと思います。

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