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見つけた大切なかけら
新居の鍵が届いた。
今住んでいる場所を出て行くまでに
あと3ヶ月を切った。
仕事は意外にも続けている。
手を止めていたジュエリーをまた作り始めた。
お店に置いてもらうという
夢が叶う間近である。
心がぎゅうぎゅうに押し潰されそうなくらい
不安と期待が入り混じった気持ちで
日々を過ごしている。
けれども、なんだかとても大切なかけらを
取り戻したような、見つけたような
そんな
記憶が形を亡くしても
今年が始まったと思ったら
もう2月も終わりかけている。
そろそろちゃんとした大人になりたいな、
そんな漠然とした希望が
私が生きる理由であり、死ぬ理由でもある。
部屋の整理を始めて
料理を作って体をととのえて
何かを頑張る程に虚しいと感じてしまうのは
いつも自分の気持ちを置き去りにして
暮らすことしか知らないからだったのだと思う。
血の繋がった人たちへ
もしも最後の手紙を書く
切ないという言葉を知らなかった
あなたは私に何本もの薔薇をくれた。
ほら、綺麗でしょう?と笑顔で首を傾げながら。
私は笑って、きれいだねと言った。
指にいくつもの棘が刺さって血が滲んだ。
愛は痛いことなんだと
苦しいことなんだと
ずっと思ったまま
私はひとりの大人になった。
握りしめた薔薇の本数だけ
消えない棘が刺さって
だけどあなたはこれだけ沢山の美しいものを
与えてきたのに、と言う。
そうだね。綺麗ね