hibi

国語が苦手だけど、言葉が好き。

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国語が苦手だけど、言葉が好き。

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世界を愛してるから、嫌い

悲しい言葉の雨が降った。コップに注いだ水を床に投げつけたかった。血が滲むまでガラスの破片を握りしめたかった。玄関のドアを乱暴に開けて、裸足でどこまでも遠くへ行けたらよかった。町の名前も知らないまま切符を買えたらよかった。昼間の川辺で白鳥を見た。土の匂いがする中で遠い国に関する本を読んだ。味気のないコーヒーに死ぬほど砂糖を入れた。大声で歌いながら道を歩いた。疲れ果てるまでシャッターを切った。爪先のネイルが剥げていた。どこまでも正しく生きられないから、私は私でいられた。魂の叫びが

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    • 見つけた大切なかけら

      新居の鍵が届いた。 今住んでいる場所を出て行くまでに あと3ヶ月を切った。 仕事は意外にも続けている。 手を止めていたジュエリーをまた作り始めた。 お店に置いてもらうという 夢が叶う間近である。   心がぎゅうぎゅうに押し潰されそうなくらい 不安と期待が入り混じった気持ちで 日々を過ごしている。 けれども、なんだかとても大切なかけらを 取り戻したような、見つけたような そんな気がしている。 すごく辛かったアパレルのお給料が入って 父へ贈り物をした。

      • 夜に働く私

        夜に働く私はASDである。 ASDというと、なにそれ?と聞き返す人が 未だに大半のような気がする。 簡潔にまとめると以下のような特性を持つ。 ・複数人の会話に入れない ・一つの事に集中しすぎてしまう (マルチタスクが苦手) ・聴覚情報が弱く過敏、視覚情報優位 症状は人によって様々である。 今まで辞めた仕事の数は知れず とても上手くいくかとても劣っているか どちらかのパターンしかなかった。 コロナ禍に直面して仕事を失い そこからは体の不調と退職の繰り返し

        • 記憶が形を亡くしても

          今年が始まったと思ったら もう2月も終わりかけている。 そろそろちゃんとした大人になりたいな、 そんな漠然とした希望が 私が生きる理由であり、死ぬ理由でもある。 部屋の整理を始めて 料理を作って体をととのえて 何かを頑張る程に虚しいと感じてしまうのは いつも自分の気持ちを置き去りにして 暮らすことしか知らないからだったのだと思う。 血の繋がった人たちへ もしも最後の手紙を書くならば あなたたちのことが私は大好きだった。 それは本当のことで、嘘のことだ

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        世界を愛してるから、嫌い

          切ないという言葉を知らなかった

          あなたは私に何本もの薔薇をくれた。 ほら、綺麗でしょう?と笑顔で首を傾げながら。 私は笑って、きれいだねと言った。 指にいくつもの棘が刺さって血が滲んだ。 愛は痛いことなんだと 苦しいことなんだと ずっと思ったまま 私はひとりの大人になった。 握りしめた薔薇の本数だけ 消えない棘が刺さって だけどあなたはこれだけ沢山の美しいものを 与えてきたのに、と言う。 そうだね。綺麗ね。うつくしいね。 何回も何回もわたしは 私じゃない人になりたいと願って く

          切ないという言葉を知らなかった

          私の体は光っている

          私の体は光っている、確かに光っていた。 目に見えなくても。 コーヒーの香りが好きだ。雨の匂いが好きだ。雨が止んだ夜の川辺の匂いが好きだ。枯れかけた花びらがテーブルに落ちていく様子が好きだ。花瓶の水に光が差し込んで反射するのを眺めるのが好きだ。道端ですれ違う人に靡かない猫が自由で好きだ。夕日に照らされた毛が陽だまりのように柔らかくて温かくて好きだ。どんな日であっても海を眺めるのが好きだ。読んだ本について、心の中で問い続けていることを木に話しかけるのが好きだ。車の窓から眺める

          私の体は光っている

          遠くへ行くこと

          生きていたい場所がみつからない。 だから雨の味がするコーヒーをのんで 私はいつも優雅な記憶に助けをもとめた。 叫びはうねり、捻り、鋭く色を変えて 電車の揺れる音に不協和音を溶け込ませた。 木々が淋しく冷たい風に当たる様子を眺めて 沈黙の言葉だけがつづいている世界から 静かな生命のことばを分けてもらった。 「どこか遠くへ行ってくれる人を募集します」 そう書いた貼り紙をしようかと考えたけれど 孤独が二人分に増えることは、長旅の荷物を増やすことでしかなかった。

          遠くへ行くこと

          あなたの知らない街

          わたしが、どこに住んでいて どんな職について働いていて 誰と一緒に日々を過ごすのか ママは、わたしに関心がなかった。 海の目の前に、住んだことがありますか? 誰にも話せないことを 何度も、何度も、永遠と繰り返す 波の前で過ごしました。 わたしの人生は、少し不思議で たまに、知らない人が ふらりと現れて助けてくれはするけど やっぱり飽きて、みんないなくなります。 けど、わたしだって ある日とつぜん、世界一周に出かけて すきな国をすきなだけ旅したら

          あなたの知らない街

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          どうか、朝を迎えて 毎日、同じ場所で眠れますように。 毎日、同じ場所へ通えますように。 わたしにとっての切な真っ直ぐな願いは これしかなかった。 何かをたよりにしようとしても なにも上手に掴めず 不確かな1日の中から ひとつでも、ひとつでも、多く そして、できるだけはやく 確かなものをつかんでいくしかなかった。 努力していること、すべて 決して口には発さず 誰にも知られてはいけないような、 そんな気がした。 最近になるまで ただいま、と、おかえ

          大切なものを、失ったとき

          ・銀色のブレスレット おじいちゃんの病院へ通っていた帰り道 叔母さんと近くの雑貨屋さんへ行った。 そこで一目惚れした紺色のまっさらなワンピースと、華奢な銀色のブレスレットを買った。 それは、それは、私のとても大切な宝物だった。 どんなにくしゃくしゃにしてリュックに詰めても 一晩ハンガーに吊るせば着られた。 高価な洋服を沢山持っていなくても 健やかな綿をたっぷりとって作られたそのワンピースはとても丈夫で、ベンチに転がっても、階段に座ってソフトクリームを食べても派

          大切なものを、失ったとき

          もし神様がいたら

          もし神様がいるなら 長い睫毛に日溜まりを落としてほしい もし神様がいるなら 悲しい言葉の雨を降らせないでほしい もし神様がいるなら 淀んだ夜に抱き締めてほしい もし神様がいるなら 冷たい朝にスープを差し出してほしい もし神様がいるなら 醜い世界を生きる最期の日まで 手を繋いでいてほしい 私の肉体がクジラの生命となってゆくまで どうか見守ってください この拙い命が与えた叫びが実となったとき 一羽の鳥に知らせてください

          もし神様がいたら

          どうしたって君の隣に居たかった

          私は、きみのことが好きだ。 だって、とっても普通だから。 むかついて怒って、笑って、かなしくて泣いて とっても理不尽。 正しくなくて、人間らしいところが ほんとうに今でも大好き。 もし、もう一度生まれることができるなら わたし、次は必ず犬になって ずっとずっと隣でごはんを食べたい。 晴れの日も、雨の日も、ずっと一緒がいいよ。 公園でたくさん走ろうよ。 きみの隣に居られて どんなにうれしいか、たのしくてたまらないか ぴょんぴょん飛び跳ねたら きっと、

          どうしたって君の隣に居たかった

          言葉の絨毯

          am 1:23 ママへ、落ち葉みたいな愛をもらったよ。 パパへ。夜は自由で海の中を泳いでるみたいだよ。 星は名前のついた貝殻だから 一つ一つ拾い集めるの。 季節の記憶の贈り物を、冬がまたやってくる度に きっと教えてくれるよ。 心の中にやさしく積もっていく落ち葉は いろんな色をしていて、綺麗で、太陽のいい匂いがするし、踏まれてもなくならない。 だから、朝が少しずつ悲しくなくなって 夜はだんだんとあたたかくなった。 ケンカをしても木漏れ日の下で眠って、許すこ

          言葉の絨毯

          みかこちゃん

          ー生意気 言葉をまっすぐ信じていた。 変な味がするもの、怪しい香りがするもの すべて、ごくんとのみこんだ。 だから、大人になりかけたとき あ、また、だまされた。 気が付くたびにクスッと笑った。 ああ、くだらない。くだらない。 大人の遊びってほんとうにつまんない。 こんなに小さなことで 崖から落として不幸にできると思ったの? わたしの方がずっと、世界の美しさを知っているのに。 ーみかこちゃん 小学生の頃、友だちにはイマジナリーフレンズがいた。 だから

          みかこちゃん

          どうしたって、形に残る愛が欲しいよ。

          ー ワガママ どうしても どうしても ショートケーキの上にのっている苺がほしい。 ー 紅茶の記憶 香りの良い花やバニラの紅茶 冬の温かい飲み物の記憶は 日常に小さなローソクの火を灯しつづける。 たとえ、みんな忘れてしまっても。 どんなに年老いても同じお茶を飲む。 時が経っても、愛している人が死んでしまっても 素敵な記憶の元に連れてってね。 ハーリー、サンズ。 だから、老舗ブランドのものでなくちゃ困る。 雨の日、聴いた音楽、何気ない会話。 宝物の側

          どうしたって、形に残る愛が欲しいよ。

          スピッツの愛は掴めない

          まず、スピッツとは。誰もが知ってる名曲。空も飛べるはず、チェリー。なんか愛とか平和とかそんな感じだよね。そう思って、歌詞を読み返し始めたらそこには永遠と沼が広がっている。夢を渡る黄色い砂?神様の影を恐れて?解読のしようがないフレーズに惑わされながら、草野正宗はやはり天才なんだと気付く。天才であり繊細であり、変態。私は草野正宗ほどミステリアスな男を未だ他に知らない。どこまでも掴めないのに、私の心を掴んで離さない。 僕と君について歌い、汚れた獣の心は消せなくても君に会えたことは

          スピッツの愛は掴めない