19
どうか、朝を迎えて
毎日、同じ場所で眠れますように。
毎日、同じ場所へ通えますように。
わたしにとっての切な真っ直ぐな願いは
これしかなかった。
何かをたよりにしようとしても
なにも上手に掴めず
不確かな1日の中から
ひとつでも、ひとつでも、多く
そして、できるだけはやく
確かなものをつかんでいくしかなかった。
努力していること、すべて
決して口には発さず
誰にも知られてはいけないような、
そんな気がした。
最近になるまで
ただいま、と、おかえり、を
わたしはちゃんと言えなかった。
どちらがどっちか、分からなくなるから。
借りてきた猫みたいな
前から、ここに住んでいます
というような、当たり前みたいな顔をして
できる限りの、生活感を消して
いくつもの駅、町、家に住んで暮らした。
転々と生活をすることに慣れて
広い海の目の前に建つ土地にも
都心から電車で一時間くらいかかる
静かな海の近くにある町にも
東京の外れにも
新宿にも
暮らしてきたけれど
今、住んでいる家は
横浜のどこか。
古い町並みが残っていて
冴えないスーパーや
肉屋、八百屋
誰が買うのか分からない
一昔前の洋服店。
ここに来たとき
また、知らない駅に来てしまった、と
仕事へ向かう途中
一人で電車を待っているとき
また、途方に暮れていたけれど
そんなこんな
日々をやり繰りしながら
半年が経ちました。
私はこの町がとても好き。
どうか、これから先ずっと
ここの町で今の恋人と
平和に暮らしていけますように。
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