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創作物語

15
創作の中でも、物語に近いようなものを選んでいます。
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15歳の少年と25歳の男の対話

15歳の少年と25歳の男の対話

これはとある15歳の少年と、とある25歳の男のお話し。

どうやら男はその少年を見かけた時、話しかけずにはいられなかったらしい。

少年もその男から声をかけられて、なんだかんだで話し込んでしまったらしい。

男「聞いてもいい?君は今何歳なの?」

少年「僕は今15歳。今年の誕生日で16歳になる高校1年生だよ」

男「そっか。僕は今25歳なんだ。今年26歳になるよ。学校は楽しい?」

少年「うん。体

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【創作】刻々と朽ちていく

【創作】刻々と朽ちていく


あなたが側から居なくなってはや、幾星霜(いくせいそう)
あゝ、恋しくて堪らないのです。

あなたが綺麗だと褒めてくれた髪は、ボサボサで見る影も無くなって。

あなたが好きだと言ってくれたこの眼は、周りが窪んで(くぼんで)随分と黒ずんでいて。

あなたが優しく手を当ててくれた頬は痩せこけて、くっきりと頬骨が浮き上がっていて。

あなたが何度も包み込むように握ってくれたこの手は、今や目も当てられない

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出たこの芽は花となるか雑草か、はたまた樹となるか

出たこの芽は花となるか雑草か、はたまた樹となるか

ふと、視線を伸ばした先の路端に小さな芽を見つけた。
どうやらまだ花弁はつけていないらしい。
僕は植物の生態の知識に特別長けてはいないから、この芽がなんの植物かはわからない。
ただ、この芽が自問自答をしている声が聞こえた。
どうやら色々と悩んでいるようだ。
こんなに小さな芽ですら悩むのだから、それはさぞご苦労なことだ。

土の中深く、根を張り続けてきた。

そして、いよいよ芽が生えた。

土の中では

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綺麗な夜景の中に灯る明かりの下では

綺麗な夜景の中に灯る明かりの下では

夜に灯る明かりはとても綺麗に僕のこの両の眼に映ります。

しかし、この眼に映る建物やの中の部屋の灯りの数、そして走り去る車のヘッドライトの数。
そしてその明かりの下にいる「人」の数だけ、小さな世界がそこには広がっていると思うのです。

例えばあのビルの灯りは明日の会議の準備で大忙しなのかもしれない。

その隣のビルの灯りは誰かの退職のささやかなお祝い中なのかもしれない。

そしてその奥のビルの灯り

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歳を重ねるということ

歳を重ねるということ

お母さんのお腹で十月十日の時間を経て、目一杯大きな産声を上げた瞬間からあなたの体に命の灯火が宿った。
産声はカウントダウンのスタートの合図。

歳を重ねるということ。
それは産まれてきてから暦で365日、もしくは366日経って、皆んながとびきりの笑顔でお祝いしてくれるということ。

歳を重ねるということ。
それは自分の意思で誰かを呼んで、何かをしてもらえるということ。

歳を重ねるということ。

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夏の夜空に灯るいっとう綺麗な一番星

夏の夜空に灯るいっとう綺麗な一番星

ふと見上げた夏の夜の空はあまりにも大きくて。

夜とはいえど蒸し返るような暑さに、着ているシャツの首元をパタパタと仰ぎながらただじっくりと夜空を眺める。

夜空の他に遠くに見えるのは山の上の赤色灯。

あれはなんのために毎日赤く光っているのだろう。

今晩は月灯りが無い分、星がいたく光ってこの両の眼に映される。

そんな夏の夜空にいっとう輝く一番星。

誰かの想いの込められた、それはそれは綺麗な星

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人の命を、"迷惑"だなんて言わないでやってほしい

人の命を、"迷惑"だなんて言わないでやってほしい

○月×日 AM8:15 頃────

国内某所のとある駅にて。

通勤や通学に電車を利用する人で朝のホームはごった返している。

突如鳴ったアナウンスの音声。

「ただいま、○○駅、××駅区間にて、人身事故発生のため、電車の遅れが発生しております。利用者のお客様には大変ご迷惑をお掛けしております」

戸惑うホームの人たち。

「え、事故?」「マジかよ…」「遅刻確定だな」
「誰かが飛び込んだらしいぞ

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もしも明日死ぬとして

もしも明日死ぬとして

ありきたりなテーマ。ありきたりな文章。

きっとnoteのサイトではこの程度の文章など、他の文才に長けた方の文章に埋もれるだろう。

それでも書いておかなきゃ。

もしも、明日で死んでしまうとしたら、24年の人生の最期の今日はどんな日にするだろう。

できることなら、仲良くしてくれた友達や、

お世話になった先輩方、学生時代の恩師の先生方、

剣道の道場で剣を教えてくれた先生方に、

拙い(つたな

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貴方が覗き込んだ先に

貴方が覗き込んだ先に

貴方が今、覗き込んだ海辺の望遠鏡の先に僕は見えていますか?

こっちに来る前に、僕を見つけられるようにと、

いつもの海辺に望遠鏡を置いておいたのですが。

いかんせん、陽が沈んだ後の夜空は数多の星が見えるものでしょうから、

その中からたった一つの僕を見つけ出すのは、

例えば広大な砂漠に落とした一本の細い針を見つけるかの如く、

途方もなく難しいことなのかもしれません。

こちらとそちらは、ど

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海に抱かれて

海に抱かれて

ぷかぷか。

ぷかぷか。

ぷかぷか。

海に浮かぶ時の様を表す言葉のこの響きが昔からなんとも好きだから。

なんとなく降りてきて、海のど真ん中に浮かんでみた。

波が体を優しく揺さぶる。

この海はどこの海だろう。

どうにも足は海底には到底付きそうもない。

この海はかなり深くて、あまりにも広いみたいだ。

全身の力を抜いて、海に文字通り身を委ねる。

目の先はとてつもなく広大な空。

今日は

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人生がもし一冊の書籍だとしたら

人生がもし一冊の書籍だとしたら

人の一生涯を、仮に書籍で例えるとしたら、

一体全部で何ページで、何部構成なのだろうか。

そして、今の僕は第何章を生きているのだろうか。

人生の長さがその本のページ数になるとは限らない。

短い生涯でも、その人が深く、濃ゆく、厚みのある人生を送ったのなら

きっとその人生という本は分厚くなるだろう。

長い人生を送ったとしても、ページ数の少ない可能性もある。

きっと人生という本のページ数は、

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皆んなと同じはずだったのに

皆んなと同じはずだったのに

真っ新なスーツを身に纏い、僕は周りの皆んなと同じエレベーターに乗った。

はずだった。

しかし、気がついたら地下何階かもわからないくらい、僕だけ地下へと降りていた。

エレベーターの扉が開く。

目の前には大きく「精神疾患者」の文字。

そういう人のためのフロアだとすぐにわかった。

薄暗いそのフロアにいる沢山の人は皆一様に頭を抱え、苦痛の表情を浮かべ蹲っている。

どこからか「助けて」と声が聴

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"人生"という長い道を走る、"僕"というオンボロ車

"人生"という長い道を走る、"僕"というオンボロ車

いつの間にか車はオンボロになってた。

不安や悩みといった荷物をトランクに載っけて、一人ひたすらに走る。

エンストは最早当たり前、空調もぶっ壊れてる。

加えて燃費も悪いときた。

ボロボロのこの車の行先は、いくつかは決まってる。

最後の目的地だけは最初から決まってる。

あとはふらふらと走ろうと思っている。

周りの車がビュンビュンと追い越していく。

そう。
この車はいかんせんスピードが出

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あの世の六文銭

あの世の六文銭

昔、テレビで有名な占い師が「地獄に落ちるわよ」って言ってたっけ。

死後に天国と地獄があるのなら。

僕はあの世に逝った時に、天国に行ける自信は無い。

散々沢山の人に心配と迷惑をかけてきた。

それは、これからも続くだろう。

母から昔、こんな話を聞いた。

「親より先に逝った子は、罰として天国には行けない」って。

仮に、自死を選んだ人間は生きるのが地獄だからその選択を取ったのではないか。

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