431番

東京に住んでいます。

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記事一覧

土曜日の東横線で

たまに会う学芸大に住んでいる セフレの家から帰ろうと東横線に乗る なんだかいつもと雰囲気が違う あ、今日は土曜日かと気づく 平日と休日の電車はまるで空気が違う …

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2年前
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この世で一番太っている

私はこの世で一番太っている 実際そんなことないのは分かっている ただ、学生時代に数回言われた 「デブ」という言葉が脳裏にこびりついていて 鏡に映る自分がどうしよう…

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2年前
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彼が指差した先にあったのは

愛がなんだのマモちゃんみたいな 本当にどうしようもない男に 本当にどうしようもなく恋をしていた時の話。 彼は私の名前をほとんど呼ばなかった。 呼びかけられる時は …

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2年前

平野紫耀を崇める中学生を見た夏

あれは確か2016年の夏 EXシアターに毎日のように通っていた時のこと 平野紫耀という神様と、 彼を崇める中学生をこの目で見た その日私は2階席で、 斜め1列前にいる可愛…

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2年前
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ましてやワクチンも打ってないし

水曜日 喉に少しだけ違和感を覚えた。 熱はない。 念のため友人と会う予定をずらしてもらった。 木曜日 喉の痛みが悪化。 声枯れも起こっていた。 相変わらず熱はない。 …

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2年前
2

ハルは2年で死んだ

初めて風俗の面接に行ったのは 大学生になってすぐの18歳の4月だった 最初の奨学金が振り込まれるのは5月の半ば それまで普通の大学生として生きるためには この方法しか…

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2年前
2

甘い卵焼きはおそらく愛だった

母は不器用な人だった。 家はいつも物で溢れていて、 駄目な父をなんだかんだ男として必要としていて、 ほとんど料理をしない人だった。 小学生の頃友達の家に遊びに行っ…

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2年前
2

そうやって自分を蔑ろにして

昔からの癖。 自分を蔑ろにするという自衛。 誰かに傷つけられるくらいなら その前に自分で傷つける。 痛いけど、しょうがない。 自分で自分を刺す時は タイミングを図…

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2年前
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恋になりませんように

恋とはもうお別れした 疲れるし、傷つくし、寂しいし どうせさよならするんだし 嫌なことや苦しいことの方が多かったはずなのに、 最初の頃のきらきらした瞬間とか 一回…

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2年前
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穏やかな地獄を

SNSには華やかな世界が広がる そういえば今日は土曜日か 私はベッドから動けない 外は雨が降っている あ、そういえば洗濯物干してたな まあまた洗えばいいか 私が立ち…

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2年前
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はちみつの瓶の蓋が開かなくても

何度やってもだめ。 ネット上に存在するありとあらゆる方法を試したけどだめ。 はちみつの瓶の蓋がどうしても開かない。 一人で毎晩必死に瓶の蓋と格闘する。 孤独だ。そ…

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2年前

愛がなんだを日比谷で観た後で

愛がなんだがどうしても大好きで、 映画化するのが心底嬉しくて心底寂しかった。 私だけの中にとどめておきたかった。 それくらい大切に思っていた物語。 公開されて1ヶ…

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2年前
1

投げつけられたリモコン

また父の話。 父が刑務所に入る前の話。 昔から父は感情がすぐに表に出る人だった。 気分の上がり下がりがとても分かりやすい人だった。 本当に子供みたいな人。すごく悪…

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2年前

分かられてたまるか

「その気持ち分かるよ。」 え、分かるの?私の気持ち。 私ですら分かってないのに? 分かるわけないじゃん。 てか、分かられてたまるかよ。 私の中のギャルがリプトン…

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2年前
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脳みそがゴミ屋敷

常にごちゃついている。 ほんの少しの不愉快。 それを大きく上回る安らぎ。 必要なもの、そうじゃないもの、 区別がつかない。 整理するための判断力がない。 整理する…

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2年前

美咲ちゃん

あまりにも求めすぎ。 咲くだけでも精いっぱいなのに。 そもそも咲けるかも分からないのに。 というか「美しく」って誰がジャッジするの。 咲きたいかどうかも私が決め…

431番
2年前
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土曜日の東横線で

たまに会う学芸大に住んでいる
セフレの家から帰ろうと東横線に乗る

なんだかいつもと雰囲気が違う

あ、今日は土曜日かと気づく

平日と休日の電車はまるで空気が違う

平日14時頃の車内は
なんだかまったりのんびりしていて、
時間がゆっくり流れている

みんな目的地がないみたいに
ただただ静かに電車に揺られている

一人で乗っている人がほとんどだから
会話が聞こえることもない

スマホを触っていた

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この世で一番太っている

私はこの世で一番太っている

実際そんなことないのは分かっている

ただ、学生時代に数回言われた
「デブ」という言葉が脳裏にこびりついていて
鏡に映る自分がどうしようもなく醜く見える

いくら痩せても
いくら整形しても
いくら努力しても
私は世の中で一番太っていて一番醜い

私にとってなんでもない人から言われる
「可愛い」なんてなんの意味もない

私のことを可愛いと思う馬鹿な男なんて興味ない

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彼が指差した先にあったのは

愛がなんだのマモちゃんみたいな
本当にどうしようもない男に
本当にどうしようもなく恋をしていた時の話。

彼は私の名前をほとんど呼ばなかった。

呼びかけられる時は
「ねえ」とか「なあ」とか。

他の女の名前を間違えて呼ばないようにという
彼なりの気遣いだったのかもしれない。

定時頃、その日も突然「今日会える?」の連絡。

もちろん会える。
何がなんでも会いに行く。

残っている仕事を1秒でも早

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平野紫耀を崇める中学生を見た夏

あれは確か2016年の夏
EXシアターに毎日のように通っていた時のこと

平野紫耀という神様と、
彼を崇める中学生をこの目で見た

その日私は2階席で、
斜め1列前にいる可愛らしい服装の
中学生くらいの女の子が
平野紫耀の一挙手一投足に高く大きな声で
反応しているのが嫌でも視界と耳に入った

初めて平野紫耀を見るのか、
それとも久しぶりに見るのか、
それくらいの新鮮なリアクションだった

正直少し

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ましてやワクチンも打ってないし

水曜日
喉に少しだけ違和感を覚えた。
熱はない。
念のため友人と会う予定をずらしてもらった。

木曜日
喉の痛みが悪化。
声枯れも起こっていた。
相変わらず熱はない。
近所の病院が軒並み木曜日が休診日で
誰にも会わず自宅で過ごす。
どうやらオミクロン株は喉に症状が出る
ことが多いらしい。

金曜日
ついに声が出なくなった。
唾を飲み込むだけで痛い。熱はない。
発熱外来のある病院が近所にない。
めん

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ハルは2年で死んだ

初めて風俗の面接に行ったのは
大学生になってすぐの18歳の4月だった

最初の奨学金が振り込まれるのは5月の半ば

それまで普通の大学生として生きるためには
この方法しかなかった

教科書代や友達とのランチ代、
洋服代、化粧品代、美容院代

「普通の大学生」はお金がかかる

風俗の求人サイトを見ても何を基準に選べばいいか
分からなかったから適当に渋谷のホテヘルを選んだ

面接の日は道玄坂のファミマ

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甘い卵焼きはおそらく愛だった

母は不器用な人だった。

家はいつも物で溢れていて、
駄目な父をなんだかんだ男として必要としていて、
ほとんど料理をしない人だった。

小学生の頃友達の家に遊びに行った時。
その家があまりに整理整頓されていて
お母さんがおやつにクッキーを焼いてくれて
自分の家との違いに驚いた。

母はお弁当を作ってくれなかった。

自分で作ればいい話、と今では思えるけれど、
当時は寂しかった。

母はやはり私に対

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そうやって自分を蔑ろにして

昔からの癖。

自分を蔑ろにするという自衛。

誰かに傷つけられるくらいなら
その前に自分で傷つける。

痛いけど、しょうがない。

自分で自分を刺す時は
タイミングを図れるし痛みも調整できる。

他人に刺されるタイミングは予想できないし
痛みも容赦ない。

他人に傷つけられるより
自傷した方がマシ。多分。

でも自分を蔑ろにするような人間からは
「そういう人間」の雰囲気が
きっと滲み出てしまって

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恋になりませんように

恋とはもうお別れした

疲れるし、傷つくし、寂しいし

どうせさよならするんだし

嫌なことや苦しいことの方が多かったはずなのに、
最初の頃のきらきらした瞬間とか
一回だけ言ってくれたあまりにも優しい言葉とか
二人の将来について話したこととか
そういうのだけが都合よく鮮烈に
脳裏にこびりついて離れないし

どうせ私の方がずっとずっと好きだし

そんなの、悲しい

だからもう恋はやめた

どうかこの

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穏やかな地獄を

SNSには華やかな世界が広がる

そういえば今日は土曜日か

私はベッドから動けない

外は雨が降っている

あ、そういえば洗濯物干してたな
まあまた洗えばいいか

私が立ち止まっている間に
周りの人はぐんぐんと進んでいて
もう背中すら見えなくなってしまった

意外と地獄ってこういうものだと思う

物語でよくある火炙りとか熱湯で茹でられるとか
爪とか舌とかを剥がされるとかそういうのじゃなくて

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はちみつの瓶の蓋が開かなくても

何度やってもだめ。
ネット上に存在するありとあらゆる方法を試したけどだめ。

はちみつの瓶の蓋がどうしても開かない。

一人で毎晩必死に瓶の蓋と格闘する。
孤独だ。そして無力だ。
自分の非力さをこういう時に改めて痛感する。

びくともしないはちみつ。
開かないと余計に食べたくなる。
成城石井で買った少し高いやつ。

でも、絶対に誰も頼りたくない。
何の意地?

「はちみつの瓶の蓋が開かない」

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愛がなんだを日比谷で観た後で

愛がなんだを日比谷で観た後で

愛がなんだがどうしても大好きで、
映画化するのが心底嬉しくて心底寂しかった。

私だけの中にとどめておきたかった。
それくらい大切に思っていた物語。

公開されて1ヶ月以上経った後、
仕事帰りに一人で日比谷TOHOに観に行った。

「うわあ」

観た感想。以上。

マモちゃん、マモちゃん。
どうしてあなたはそんなに情けなくて愛らしいの。

その猫背でひょろっとした薄っぺらい身体に
思いっきり抱きつ

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投げつけられたリモコン

また父の話。
父が刑務所に入る前の話。

昔から父は感情がすぐに表に出る人だった。
気分の上がり下がりがとても分かりやすい人だった。
本当に子供みたいな人。すごく悪い意味で。

父が仕事から帰ってくると、
玄関のドアを開け閉めする音で
彼が不機嫌かどうか分かる。

不機嫌な父は何よりも最悪で、
「俺は不機嫌だ」オーラを全面に出して
その日の夕食が気に入らなければ文句を言うし
私たちの前で会社の電話

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分かられてたまるか

「その気持ち分かるよ。」

え、分かるの?私の気持ち。
私ですら分かってないのに?

分かるわけないじゃん。

てか、分かられてたまるかよ。

私の中のギャルがリプトンのレモンティーを投げつける。

私の気持ちはあなたが考えるよりも
ずっとずっと複雑だし。
勝手に分かった気になられるのうざいし。
どっか行けし。
近づいてくんなし。

自分の気持ちを分かってほしい、
理解してほしいって心底願って

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脳みそがゴミ屋敷

常にごちゃついている。

ほんの少しの不愉快。
それを大きく上回る安らぎ。

必要なもの、そうじゃないもの、
区別がつかない。

整理するための判断力がない。

整理するための収納がない。

整理する必要性を感じない。

大半が腐っている。
そんなことは知っている。

私はこれらを抱えて生きていく。

いつからか、
ここにあるものは全て大事なもの、
ということにした。

そうすれば何も考えなくて済

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美咲ちゃん

あまりにも求めすぎ。

咲くだけでも精いっぱいなのに。

そもそも咲けるかも分からないのに。

というか「美しく」って誰がジャッジするの。

咲きたいかどうかも私が決めることだし。

元々花の咲かない植物かもしれませんし。

「美しく」「咲け」なんて。

ちょっと荷が重いです。
お父さん、お母さん。

名前は願いでもあり呪い。

求めすぎるな、自分にも他人にも、
もちろん子供にも。