431番

東京に住んでいます。

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最近の記事

土曜日の東横線で

たまに会う学芸大に住んでいる セフレの家から帰ろうと東横線に乗る なんだかいつもと雰囲気が違う あ、今日は土曜日かと気づく 平日と休日の電車はまるで空気が違う 平日14時頃の車内は なんだかまったりのんびりしていて、 時間がゆっくり流れている みんな目的地がないみたいに ただただ静かに電車に揺られている 一人で乗っている人がほとんどだから 会話が聞こえることもない スマホを触っていたり本を読んでいたり ぼーっと外を眺めていたり眠っていたり 平日昼間の東横線は心

    • この世で一番太っている

      私はこの世で一番太っている 実際そんなことないのは分かっている ただ、学生時代に数回言われた 「デブ」という言葉が脳裏にこびりついていて 鏡に映る自分がどうしようもなく醜く見える いくら痩せても いくら整形しても いくら努力しても 私は世の中で一番太っていて一番醜い 私にとってなんでもない人から言われる 「可愛い」なんてなんの意味もない 私のことを可愛いと思う馬鹿な男なんて興味ない 好きな男に言われないと意味がない でも私が好きな男はセンスがいいから 私みたいな

      • 彼が指差した先にあったのは

        愛がなんだのマモちゃんみたいな 本当にどうしようもない男に 本当にどうしようもなく恋をしていた時の話。 彼は私の名前をほとんど呼ばなかった。 呼びかけられる時は 「ねえ」とか「なあ」とか。 他の女の名前を間違えて呼ばないようにという 彼なりの気遣いだったのかもしれない。 定時頃、その日も突然「今日会える?」の連絡。 もちろん会える。 何がなんでも会いに行く。 残っている仕事を1秒でも早く終わらせるために 必死で手を動かしながら、 頭は彼のことでいっぱいになる。

        • 平野紫耀を崇める中学生を見た夏

          あれは確か2016年の夏 EXシアターに毎日のように通っていた時のこと 平野紫耀という神様と、 彼を崇める中学生をこの目で見た その日私は2階席で、 斜め1列前にいる可愛らしい服装の 中学生くらいの女の子が 平野紫耀の一挙手一投足に高く大きな声で 反応しているのが嫌でも視界と耳に入った 初めて平野紫耀を見るのか、 それとも久しぶりに見るのか、 それくらいの新鮮なリアクションだった 正直少しうるさいなと思ってしまったけれど、 毎日来ているせいでリアクションもせず 声も出

        土曜日の東横線で

          ましてやワクチンも打ってないし

          水曜日 喉に少しだけ違和感を覚えた。 熱はない。 念のため友人と会う予定をずらしてもらった。 木曜日 喉の痛みが悪化。 声枯れも起こっていた。 相変わらず熱はない。 近所の病院が軒並み木曜日が休診日で 誰にも会わず自宅で過ごす。 どうやらオミクロン株は喉に症状が出る ことが多いらしい。 金曜日 ついに声が出なくなった。 唾を飲み込むだけで痛い。熱はない。 発熱外来のある病院が近所にない。 めんどくせーと思いながら探す。 ようやく見つけた病院はすこぶる評判が悪かった。 Go

          ましてやワクチンも打ってないし

          ハルは2年で死んだ

          初めて風俗の面接に行ったのは 大学生になってすぐの18歳の4月だった 最初の奨学金が振り込まれるのは5月の半ば それまで普通の大学生として生きるためには この方法しかなかった 教科書代や友達とのランチ代、 洋服代、化粧品代、美容院代 「普通の大学生」はお金がかかる 風俗の求人サイトを見ても何を基準に選べばいいか 分からなかったから適当に渋谷のホテヘルを選んだ 面接の日は道玄坂のファミマの前まで来たら 店に電話するように言われていた 風俗の面接で落ちることもある、

          ハルは2年で死んだ

          甘い卵焼きはおそらく愛だった

          母は不器用な人だった。 家はいつも物で溢れていて、 駄目な父をなんだかんだ男として必要としていて、 ほとんど料理をしない人だった。 小学生の頃友達の家に遊びに行った時。 その家があまりに整理整頓されていて お母さんがおやつにクッキーを焼いてくれて 自分の家との違いに驚いた。 母はお弁当を作ってくれなかった。 自分で作ればいい話、と今では思えるけれど、 当時は寂しかった。 母はやはり私に対して愛情がないんだと思った。 母の子供である私はやはり料理が得意ではなく、 お

          甘い卵焼きはおそらく愛だった

          そうやって自分を蔑ろにして

          昔からの癖。 自分を蔑ろにするという自衛。 誰かに傷つけられるくらいなら その前に自分で傷つける。 痛いけど、しょうがない。 自分で自分を刺す時は タイミングを図れるし痛みも調整できる。 他人に刺されるタイミングは予想できないし 痛みも容赦ない。 他人に傷つけられるより 自傷した方がマシ。多分。 でも自分を蔑ろにするような人間からは 「そういう人間」の雰囲気が きっと滲み出てしまっていて。 そんな人間を大事にしようなんて思う 慈悲深い人は稀有な存在で。 どう

          そうやって自分を蔑ろにして

          恋になりませんように

          恋とはもうお別れした 疲れるし、傷つくし、寂しいし どうせさよならするんだし 嫌なことや苦しいことの方が多かったはずなのに、 最初の頃のきらきらした瞬間とか 一回だけ言ってくれたあまりにも優しい言葉とか 二人の将来について話したこととか そういうのだけが都合よく鮮烈に 脳裏にこびりついて離れないし どうせ私の方がずっとずっと好きだし そんなの、悲しい だからもう恋はやめた どうかこの人に対する感情が ただの人として好きという感情でありますように 触れたいとか思

          恋になりませんように

          穏やかな地獄を

          SNSには華やかな世界が広がる そういえば今日は土曜日か 私はベッドから動けない 外は雨が降っている あ、そういえば洗濯物干してたな まあまた洗えばいいか 私が立ち止まっている間に 周りの人はぐんぐんと進んでいて もう背中すら見えなくなってしまった 意外と地獄ってこういうものだと思う 物語でよくある火炙りとか熱湯で茹でられるとか 爪とか舌とかを剥がされるとかそういうのじゃなくて こういう、じわじわと、穏やかに、確実に、 落ちていくものだと思う 布団をかぶる

          穏やかな地獄を

          はちみつの瓶の蓋が開かなくても

          何度やってもだめ。 ネット上に存在するありとあらゆる方法を試したけどだめ。 はちみつの瓶の蓋がどうしても開かない。 一人で毎晩必死に瓶の蓋と格闘する。 孤独だ。そして無力だ。 自分の非力さをこういう時に改めて痛感する。 びくともしないはちみつ。 開かないと余計に食べたくなる。 成城石井で買った少し高いやつ。 でも、絶対に誰も頼りたくない。 何の意地? 「はちみつの瓶の蓋が開かない」 女友達に言ったところで開けられる確証はない。 力的に。 あと、こういう時に頼れる男

          はちみつの瓶の蓋が開かなくても

          愛がなんだを日比谷で観た後で

          愛がなんだがどうしても大好きで、 映画化するのが心底嬉しくて心底寂しかった。 私だけの中にとどめておきたかった。 それくらい大切に思っていた物語。 公開されて1ヶ月以上経った後、 仕事帰りに一人で日比谷TOHOに観に行った。 「うわあ」 観た感想。以上。 マモちゃん、マモちゃん。 どうしてあなたはそんなに情けなくて愛らしいの。 その猫背でひょろっとした薄っぺらい身体に 思いっきり抱きつきたい。 スクリーンに映るマモちゃんは 私が頭の中でずっと妄想していたマモちゃ

          愛がなんだを日比谷で観た後で

          投げつけられたリモコン

          また父の話。 父が刑務所に入る前の話。 昔から父は感情がすぐに表に出る人だった。 気分の上がり下がりがとても分かりやすい人だった。 本当に子供みたいな人。すごく悪い意味で。 父が仕事から帰ってくると、 玄関のドアを開け閉めする音で 彼が不機嫌かどうか分かる。 不機嫌な父は何よりも最悪で、 「俺は不機嫌だ」オーラを全面に出して その日の夕食が気に入らなければ文句を言うし 私たちの前で会社の電話をして電話の相手に怒鳴る。 夕食中はもちろん会話をしない。 下手に会話をしてそ

          投げつけられたリモコン

          分かられてたまるか

          「その気持ち分かるよ。」 え、分かるの?私の気持ち。 私ですら分かってないのに? 分かるわけないじゃん。 てか、分かられてたまるかよ。 私の中のギャルがリプトンのレモンティーを投げつける。 私の気持ちはあなたが考えるよりも ずっとずっと複雑だし。 勝手に分かった気になられるのうざいし。 どっか行けし。 近づいてくんなし。 自分の気持ちを分かってほしい、 理解してほしいって心底願って じたばたもがいてるくせに。 可愛さのかけらもないあまのじゃく。 精神が成長しない

          分かられてたまるか

          脳みそがゴミ屋敷

          常にごちゃついている。 ほんの少しの不愉快。 それを大きく上回る安らぎ。 必要なもの、そうじゃないもの、 区別がつかない。 整理するための判断力がない。 整理するための収納がない。 整理する必要性を感じない。 大半が腐っている。 そんなことは知っている。 私はこれらを抱えて生きていく。 いつからか、 ここにあるものは全て大事なもの、 ということにした。 そうすれば何も考えなくて済む。 何も、考えたくない。 ただ、安心したい。 これらは私を傷つけない。

          脳みそがゴミ屋敷

          美咲ちゃん

          あまりにも求めすぎ。 咲くだけでも精いっぱいなのに。 そもそも咲けるかも分からないのに。 というか「美しく」って誰がジャッジするの。 咲きたいかどうかも私が決めることだし。 元々花の咲かない植物かもしれませんし。 「美しく」「咲け」なんて。 ちょっと荷が重いです。 お父さん、お母さん。 名前は願いでもあり呪い。 求めすぎるな、自分にも他人にも、 もちろん子供にも。

          美咲ちゃん