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愛がなんだを日比谷で観た後で

愛がなんだがどうしても大好きで、
映画化するのが心底嬉しくて心底寂しかった。

私だけの中にとどめておきたかった。
それくらい大切に思っていた物語。

公開されて1ヶ月以上経った後、
仕事帰りに一人で日比谷TOHOに観に行った。

「うわあ」

観た感想。以上。

マモちゃん、マモちゃん。
どうしてあなたはそんなに情けなくて愛らしいの。

その猫背でひょろっとした薄っぺらい身体に
思いっきり抱きつきたい。

スクリーンに映るマモちゃんは
私が頭の中でずっと妄想していたマモちゃんのままで、
成田凌という役者のことを
私は多分今後一生嫌いになれないと思った。
彼はマモちゃんだった。

当時、私はマモちゃんみたいな男に
どうしようもなく恋をしていた。

だからこそ無駄にテルコと中原くんに感情移入して
勝手に傷ついていた。ただの自傷行為。

映画を見終わった後でスマホを開いた。

マモちゃんみたいな男から
「今日何してる?会いたい。」とLINEが来ていた。

映画館のロビーのソファーに座ってうなだれる。

明日も仕事なんだけどな。
どうせ他の女に予定すっぽかされたんだろうな。

いつだって都合のいい女ポジション。
それでいいんです。
あなたにとって便利な人間でいさせてください。

「会いたい。」の一言で全て解決すると
彼は分かっている。ただの確信犯。

実際、その一言で全ては解決する。

好きな男に「会いたい」と言ってもらえるなら
私の人生はもう十分じゃないですか、とさえ思う。
それがただ性欲を満たすためだったとしても。

あなたに求めてもらえて私は幸せです。

「今仕事終わったところ!
そっちに着く時間分かったら連絡するね」
と返信して急いで駅に向かう。

多くのカップルが行き交う日比谷を一人で走る。
全然寂しくなんかない。

「私は好きな男に「会いたい」と言われた女です!!!」
と大声で叫びたい。

有楽町駅に着く。息があがっている。
京浜東北線に乗り込む。
仕事帰りのくたびれたサラリーマンでいっぱいの中で
一人だけふわふわした気持ちで席に座る。

私はふとテルコのことを思い出していた。






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