平野紫耀を崇める中学生を見た夏

あれは確か2016年の夏
EXシアターに毎日のように通っていた時のこと

平野紫耀という神様と、
彼を崇める中学生をこの目で見た

その日私は2階席で、
斜め1列前にいる可愛らしい服装の
中学生くらいの女の子が
平野紫耀の一挙手一投足に高く大きな声で
反応しているのが嫌でも視界と耳に入った

初めて平野紫耀を見るのか、
それとも久しぶりに見るのか、
それくらいの新鮮なリアクションだった

正直少しうるさいなと思ってしまったけれど、
毎日来ているせいでリアクションもせず
声も出さない私みたいな地蔵客よりは
こういう子の方が出演者にとっては
有難いんだろうなと思った

今回彼がソロで歌うのは山下先輩のLOVE SONG
少し古いオタクは大体みんな好きな曲

バラードだったこともあって
私は座って少しうとうとしていた

ふと顔を上げると、その女の子が
祈るように口の前で手をぎゅっと握って
声も出さず静かに泣きながら
平野紫耀をただひたすらに真っ直ぐ見つめていた

2階席にも関わらず双眼鏡も使わず
絶対に肉眼で平野紫耀を目に焼き付ける、と
言わんばかりにじっと見つめていた

私にはそれがすごく美しい光景に見えた

「信仰」ってこういうことか、と
勝手に理解した気になった

アイドルって誰かの神様になることだったのか、
そりゃ大変だなとも思ってしまった


彼女の目には平野紫耀がどう映っているんだろうか

平野紫耀が歌うLOVE SONGは
彼女にとってどんな曲に聞こえているんだろうか

「ねえ平野紫耀さん、見てください
彼女はあなたを思って涙を流しています。」

思わず舞台に向かって叫びたくなった


アイドルにとっては年に何十回とある公演のうちの
たった1公演で、その中のたった1曲、たった数分

でもその数分間が誰かを救ってたりする

やっぱりアイドルって割に合わない仕事ですね、
あまりにも荷が重い


私は六本木を通るたびに
夏の蒸し暑さと日差しとあの信仰の光景を思い出す



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