定年退職した大学教授の新たな冒険

長らく勤めていた大学を2024年春定年退職しました。これまで研究に明け暮れ、それ以外全…

定年退職した大学教授の新たな冒険

長らく勤めていた大学を2024年春定年退職しました。これまで研究に明け暮れ、それ以外全てを二の次にしてきた元教授が、世の中を体験していく様子をお伝えします。新しい発見や楽しい出来事の一方で、頭を抱えて戸惑うポンコツな瞬間もあることでしょう。彼の新たな冒険の日々をお楽しみください。

記事一覧

元教授、科研費の報告書にそろそろ取りかかって下さい!:定年退職52日目

私はこの3月末に大学を定年退職し、研究の現場から一歩退きました。しかし、少しですがいくつかの仕事が残っています。旧研究室にも学生がまだ少数残っていますし、企業か…

何にでも使える言葉 : 大阪の「いける」と茨城の「いやどうも」(元教授、なまってる?その3)定年退職51日目

前々回からお話ししている通り、私は茨城県の水戸の出身で、現在は大阪に住んでいます。大阪の言葉には他の地方にはない様々な使い方があり、とても楽しいです。少し紹介し…

アクセントって何?(元教授、なまってる?:その2)定年退職50日目

キリの良い定年退職50日目なので、少し気の利いた話題も考えたのですが、折角なので昨日からのつづきにしました。今回はアクセントの話です。 私が生きてきて(大げさです…

元教授、なまってる?(その1)定年退職49日目

実は私は関東、具体的には茨城県水戸市の出身です(タイトル地図:注1)。ただし、関東に住んでいた期間と現在住んでいる関西の期間がほぼ半々、むしろ関西の方がやや長い…

元教授、先輩にご馳走になる @梅田界隈:定年退職48日目

先日(4/23、note で公開)大阪産業創造館にて偶然お会いした大学時代の先輩からお誘いをいただき、二人で食事&飲み会に行きました。当日は、先輩の仕事の終了を待ち、新…

接着・接合 Expo から次世代型接着システム @高機能素材 Week[大阪](元教授、技術展に行く:その8)定年退職47日目

先日「ご飯粒からポストイットへ」(5/9)という文章の中で、3M(スリーエム)のポストイット発明の話をいたしました。今回は、高機能素材Week[大阪]の接着・接合 Expo で…

iPad Pro M4 到着!!(元教授、物欲にはしる?)定年退職46日目

以前(4/28)に、私がバスの中で iPad から「中島みゆき」を大音量で流してしまい、周りに迷惑をかけたエピソードを披露しました(その投稿は比較的評判が良かったようで(…

体温でフィットする形状記憶ポリマー (後編) @機能性プラスチック展(元教授、技術展に行く:その7)定年退職45日目

今日は、前回紹介した機能性プラスチック展の三井化学ブースで見つけた「体温でフィットする形状記憶ポリマー」(タイトル写真は用途例:注1)の後編をお届けします。前回…

体温でフィットする形状記憶ポリマー (前編) @機能性プラスチック展(元教授、技術展に行く:その6)定年退職44日目

今日は、大阪インテックスで5月8日から10日まで開催された「高機能素材Week[大阪]」で最も衝撃的だった材料の話を紹介します。それは機能性プラスチック展の三井化学のブ…

サステナブル マテリアル展からパームヤシとナノセルロースの話題(元教授、技術展に行く:その5)定年退職43日目

4月に「技術展に行くシリーズ(その3)」で、紙の加工技術展の中から、植物性廃棄物を活用した新素材について紹介しました。たとえば、竹から手漉きで紙を作ったり、不要に…

高機能素材Week[大阪]の規模と内容に驚く(元教授、技術展に行く。その4)定年退職42日目

先日、第12回高機能素材Week[大阪]がインテックス大阪で、5月8日から10日までの3日間にわたって開催されました。日本の素材産業は製造業GDPの2割を占め、日本の基幹産業…

小学生の天晴れな発明と紙用接着剤の話(元教授の接着・粘着シリーズ、その3):定年退職41日目

先日、茨城県の小学4年の琴音さんが、世界発明大会などで「指用の絆創膏」で賞を受賞しました。テレビでも取り上げられているので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませ…

瞬間接着剤の驚き(元教授の接着・粘着シリーズ、その2):定年退職40日目

接着・粘着について思い出すのは、かなり昔のことですが、神戸大学におられたM教授という先生のことです。私が存じあげたのは、先生がすでに定年間近の時でしたので、多く…

ご飯粒からポストイットへ(元教授の接着・粘着シリーズ、その1):定年退職39日目

皆さん、昔の接着剤として何が一番思い浮かびますか? 私たちの世代ではご飯粒でした(私たちは、裏の白いチラシがあると今だにメモ用紙に使いたくなる世代ですので、参考…

ステッドラーのシャープペンシル、新製品ボールペン2選(元教授の鞄の中身。その5):定年退職38日目

先日、自分用のお土産として、ドイツ出張時によく買ってきたラミーのボールペンについてお話ししました(定年退職27日目)。その際、ラミー以外にもロットリングやステッド…

ロンドン半日で巡ったビートルズ、ホームズ、世界No.1本屋(元教授、大阪駅でヨーロッパの鉄道旅を思い出す。その13)定年退職37…

ダラムで開催された学会は2年に1度の国際学会で、会場は世界中を巡っています。この2年前はボルドー(仏)で行われ、これ以降は、北京、ゲント(ベルギー)の予定となってい…

元教授、科研費の報告書にそろそろ取りかかって下さい!:定年退職52日目

元教授、科研費の報告書にそろそろ取りかかって下さい!:定年退職52日目

私はこの3月末に大学を定年退職し、研究の現場から一歩退きました。しかし、少しですがいくつかの仕事が残っています。旧研究室にも学生がまだ少数残っていますし、企業からの依頼や各種審査などの業務もあり、それなりに多忙な日々を送っています。中でも一番忙しいのは、毎日の「note」執筆ですw(これがなかなか大変なんです!)。

さて、科研費報告書の締め切りが近づいてきました(タイトル図:注1)。科研費とは、

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何にでも使える言葉 : 大阪の「いける」と茨城の「いやどうも」(元教授、なまってる?その3)定年退職51日目

何にでも使える言葉 : 大阪の「いける」と茨城の「いやどうも」(元教授、なまってる?その3)定年退職51日目

前々回からお話ししている通り、私は茨城県の水戸の出身で、現在は大阪に住んでいます。大阪の言葉には他の地方にはない様々な使い方があり、とても楽しいです。少し紹介します。

まず、関西以外の地域から来る学生に対して困ることがあります。「なおす」や「ほかす」が通じにくいのです。それぞれ、「元に戻す」、「捨てる」という意味ですが、たとえば学生実験で学生に「道具をなおして」とか「ゴミはきちんとほかすように(

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アクセントって何?(元教授、なまってる?:その2)定年退職50日目

アクセントって何?(元教授、なまってる?:その2)定年退職50日目

キリの良い定年退職50日目なので、少し気の利いた話題も考えたのですが、折角なので昨日からのつづきにしました。今回はアクセントの話です。

私が生きてきて(大げさですが)未だに全く修得できていないことの一つが「アクセント」です。他にもあるかもしれませんが、今日はそんな話です。

前回も書きましたが、私の出身は茨城県の水戸です。実は茨城は、アクセントがわからない人が多いことで知られています(タイトル図

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元教授、なまってる?(その1)定年退職49日目

元教授、なまってる?(その1)定年退職49日目

実は私は関東、具体的には茨城県水戸市の出身です(タイトル地図:注1)。ただし、関東に住んでいた期間と現在住んでいる関西の期間がほぼ半々、むしろ関西の方がやや長いくらいです(下地図:注1)。特に大阪が一番長く、関西弁にも慣れていますが、話し方はどうやら中途半端なようです。九州出身ですか? と聞かれることもあります。なぜでしょうか?

茨城県は方言が多いことで有名です。東京に中途半端に近いこともあり(

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元教授、先輩にご馳走になる @梅田界隈:定年退職48日目

元教授、先輩にご馳走になる @梅田界隈:定年退職48日目

先日(4/23、note で公開)大阪産業創造館にて偶然お会いした大学時代の先輩からお誘いをいただき、二人で食事&飲み会に行きました。当日は、先輩の仕事の終了を待ち、新阪急ホテル(下写真)で待ち合わせました。

私が新阪急ホテルに来たのは何年振りでしょうか。大阪在住なので今は宿泊しませんが、若い頃には何回かお世話になりました。35年前、初めて大阪に宿泊したのがここでした(遠い目)。1964年に開業

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接着・接合 Expo から次世代型接着システム @高機能素材 Week[大阪](元教授、技術展に行く:その8)定年退職47日目

接着・接合 Expo から次世代型接着システム @高機能素材 Week[大阪](元教授、技術展に行く:その8)定年退職47日目

先日「ご飯粒からポストイットへ」(5/9)という文章の中で、3M(スリーエム)のポストイット発明の話をいたしました。今回は、高機能素材Week[大阪]の接着・接合 Expo で、同じく3M が開発した次世代型接着剤「VHBエクストルーダブル テープ(押し出し成形可能なテープ)」システム(タイトル写真:注1)を紹介します。また後半では、サステナブル マテリアル展から日本リファイン(株)の「バイオ溶剤

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iPad Pro M4 到着!!(元教授、物欲にはしる?)定年退職46日目

iPad Pro M4 到着!!(元教授、物欲にはしる?)定年退職46日目

以前(4/28)に、私がバスの中で iPad から「中島みゆき」を大音量で流してしまい、周りに迷惑をかけたエピソードを披露しました(その投稿は比較的評判が良かったようで(私の原稿の中では)、多くの方に見ていただきました)。現在、その iPad は元通り作動していますが、再び同じ問題が発生する可能性があるので、新しい iPad を購入する決意をその原稿の中でしました(半分、購入の口実ですが)。

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体温でフィットする形状記憶ポリマー (後編) @機能性プラスチック展(元教授、技術展に行く:その7)定年退職45日目

体温でフィットする形状記憶ポリマー (後編) @機能性プラスチック展(元教授、技術展に行く:その7)定年退職45日目

今日は、前回紹介した機能性プラスチック展の三井化学ブースで見つけた「体温でフィットする形状記憶ポリマー」(タイトル写真は用途例:注1)の後編をお届けします。前回は主に概要とポリマーの印象でしたが、今回は最初にサンプルの性質を簡単な実験で調べた後、パンフレットに示されていたデータを少し解説し、最後にこのポリマーの広い用途や他社とのコラボレーションについてお話しします。

まず、提供していただいた3種

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体温でフィットする形状記憶ポリマー (前編) @機能性プラスチック展(元教授、技術展に行く:その6)定年退職44日目

体温でフィットする形状記憶ポリマー (前編) @機能性プラスチック展(元教授、技術展に行く:その6)定年退職44日目

今日は、大阪インテックスで5月8日から10日まで開催された「高機能素材Week[大阪]」で最も衝撃的だった材料の話を紹介します。それは機能性プラスチック展の三井化学のブースにありました(タイトル写真:注1)。そのブースは、お客さんが押し合いへし合いでしたが (古い表現w)、体を割り込ませ担当者を何とか探しました。

そうそう、この材料はテレビで見たことがありました。日曜朝7時半から放送される「がっ

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サステナブル マテリアル展からパームヤシとナノセルロースの話題(元教授、技術展に行く:その5)定年退職43日目

サステナブル マテリアル展からパームヤシとナノセルロースの話題(元教授、技術展に行く:その5)定年退職43日目

4月に「技術展に行くシリーズ(その3)」で、紙の加工技術展の中から、植物性廃棄物を活用した新素材について紹介しました。たとえば、竹から手漉きで紙を作ったり、不要になった廃材・端材をパルプに混ぜ合わせて紙を作成するなど、いずれもアップサイクル型環境紙(注1)の製造が注目されていました。今日は「高機能素材Week」のサステナブル マテリアル展から、紙に関する新たな展示内容2つの紹介をします(タイトル写

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高機能素材Week[大阪]の規模と内容に驚く(元教授、技術展に行く。その4)定年退職42日目

高機能素材Week[大阪]の規模と内容に驚く(元教授、技術展に行く。その4)定年退職42日目

先日、第12回高機能素材Week[大阪]がインテックス大阪で、5月8日から10日までの3日間にわたって開催されました。日本の素材産業は製造業GDPの2割を占め、日本の基幹産業の一つとされています(注1)。今回の展示会は、機能性フィルム、プラスチック、接着、塗料、光レーザー、金属、セラミック、サステナブル材料の8つの展示会から成り立っていました。最先端の素材技術が一堂に集まる西日本最大の総合展であり

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小学生の天晴れな発明と紙用接着剤の話(元教授の接着・粘着シリーズ、その3):定年退職41日目

小学生の天晴れな発明と紙用接着剤の話(元教授の接着・粘着シリーズ、その3):定年退職41日目

先日、茨城県の小学4年の琴音さんが、世界発明大会などで「指用の絆創膏」で賞を受賞しました。テレビでも取り上げられているので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、彼女の発明は素晴らしい見事なものでした。

指を怪我した時、絆創膏を貼る際に上手く巻けないことがよくあります。ガーゼの左右にテープの部分がありますが、指に貼るときにそれ同士がくっついてしまいます。皆さんも経験があるかと思いますが、大抵

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瞬間接着剤の驚き(元教授の接着・粘着シリーズ、その2):定年退職40日目

瞬間接着剤の驚き(元教授の接着・粘着シリーズ、その2):定年退職40日目

接着・粘着について思い出すのは、かなり昔のことですが、神戸大学におられたM教授という先生のことです。私が存じあげたのは、先生がすでに定年間近の時でしたので、多くの研究に直接触れることはできませんでしたが、いくつかの総合講演を聴くことができました。

先生は界面の物理化学がご専門で、接着・剥離に関する研究をされていて、ある時はうなぎのヌルヌル(ハイドロゲル)の科学を研究しておられました。大学の予算で

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ご飯粒からポストイットへ(元教授の接着・粘着シリーズ、その1):定年退職39日目

ご飯粒からポストイットへ(元教授の接着・粘着シリーズ、その1):定年退職39日目

皆さん、昔の接着剤として何が一番思い浮かびますか? 私たちの世代ではご飯粒でした(私たちは、裏の白いチラシがあると今だにメモ用紙に使いたくなる世代ですので、参考にしなくてよいですが、昔は本当にそうでした)。紙が破れると、ご飯粒をつけた紙で補修していたのです。

今回から少し「糊」の話を書こうと思います。というのも、前回「紙」の技術展が開催された大阪産業創造館で、5月の末に接着・粘着に関する技術展が

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ステッドラーのシャープペンシル、新製品ボールペン2選(元教授の鞄の中身。その5):定年退職38日目

ステッドラーのシャープペンシル、新製品ボールペン2選(元教授の鞄の中身。その5):定年退職38日目

先日、自分用のお土産として、ドイツ出張時によく買ってきたラミーのボールペンについてお話ししました(定年退職27日目)。その際、ラミー以外にもロットリングやステッドラーにも少しだけ触れました。両社ともドイツらしい文房具屋さんです。少し昔話から始めてみたいと思います。

ロットリングは、学生時代にとてもお世話になりました。学会近くになると、私たちはロットリングのペン、文字定規、雲型定規(タイトル写真、

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ロンドン半日で巡ったビートルズ、ホームズ、世界No.1本屋(元教授、大阪駅でヨーロッパの鉄道旅を思い出す。その13)定年退職37日目

ロンドン半日で巡ったビートルズ、ホームズ、世界No.1本屋(元教授、大阪駅でヨーロッパの鉄道旅を思い出す。その13)定年退職37日目

ダラムで開催された学会は2年に1度の国際学会で、会場は世界中を巡っています。この2年前はボルドー(仏)で行われ、これ以降は、北京、ゲント(ベルギー)の予定となっていました。毎回趣向を凝らした会議です。今回の目玉は、歴史のあるダラム大学(英でオックスフォード、ケンブリッジに次ぐ3番目に古い大学、1832年設立)で行われたことで、さらに懇親会は、世界遺産のダラム城内のホールで開催されました。無事に成功

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