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体温でフィットする形状記憶ポリマー (前編) @機能性プラスチック展(元教授、技術展に行く:その6)定年退職44日目

今日は、大阪インテックスで5月8日から10日まで開催された「高機能素材Week[大阪]」で最も衝撃的だった材料の話を紹介します。それは機能性プラスチック展の三井化学のブースにありました(タイトル写真:注1)。そのブースは、お客さんが押し合いへし合いでしたが (古い表現w)、体を割り込ませ担当者を何とか探しました。


そうそう、この材料はテレビで見たことがありました。日曜朝7時半から放送される「がっちりマンデー」という番組があり(下写真、TBS、注2)、私は大好きでそれをよく見ています(特に年始の社長さんシリーズが大好きです。実は note も、この番組で知りました)が、その中でこの材料が紹介されていました。番組の内容までははっきりとは覚えていませんが、私の専門に近いことだったからか、記憶によく残っていました。

私がよく見る番組「がっちりマンデー」

” それから、何年か前にも同じく「がっちりマンデー」で三井化学の製品は紹介されていましたね。豆腐のような柔らかいものから画鋲の尖ったものまでパックできる真空包装の紹介でした。調べてみると、正確には三井・ダウポリケミカル(株)の「ハイミラン」で、スキンパック包装に使用されているそうです。それは真空包装(真空パック)の進化版で、生鮮食品や惣菜の鮮度保持を向上させるだけでなく、フードロス削減、流通や陳列の在り方を変え、小売業界等での人手不足の解消も期待されているそうです(注1)。”


さて、今回の「体温でフィットする形状記憶ポリマー」ですが、テレビで見た時より実際に触ってみるとその大きな変化に驚きました。室温では、普通の硬さのフィルムですが、指で押すと指がどんどん中に入っていきます。押した部分はかなり柔らかくなります。しかし、指を離すとその形のまま固定されました(指を離すと、室温まで温度が下がるためです)。ちなみに名前は HUMOFIT(ヒューモフィット)といいますが、Human + Thermo + Fit から来ているそうで、素材はポリオレフィンでした。

実際に指で押しているところ。上部には、指を離すとその形のまま固定された部分も見えます

思わず、担当者にサンプルをいただけないかお願いしました。今回の展示会で唯一名刺をお渡しし、サンプルを頂戴し、家に帰って触り続けました。


少し科学的なことを書きますと、高分子の性質でガラス転移温度というものがあります。簡単に説明しますと、ある温度以下ではガラス状態ですが、その温度以上ではゴム状態になる温度です。その温度がこの材料の場合、体温より少し低い28℃ とのことで、室温ではガラス状態、体温でゴム状態になったのです(追記、参照)


そして、使い道がとても広くて驚きました。他の企業とのコラボも含め、次回に続きます。お楽しみに!


【追記】昔、チューイングガムで同じようなガラス転移温度の話がありました。素材の高分子は今回のものとは異なり酢酸ビニルのポリマーでしたが、やはり体温以下にガラス転移温度があり(30〜34℃)、室温では硬いですが、噛みだすと柔らかくなる材料です(口の中の水分で柔らかくなっていると思われがちですが、これも温度で変化しています)。面白いことに、子供と大人で体温が微妙に違うので、その温度を調節する必要があったと聞いています。

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注1:三井化学(株)ホームページ及び配付資料より
注2:「がっちりマンデー」ホームページより


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