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接着・接合 Expo から次世代型接着システム @高機能素材 Week[大阪](元教授、技術展に行く:その8)定年退職47日目

先日「ご飯粒からポストイットへ」(5/9)という文章の中で、3M(スリーエム)のポストイット発明の話をいたしました。今回は、高機能素材Week[大阪]の接着・接合 Expo で、同じく3M が開発した次世代型接着剤「VHBエクストルーダブル テープ(押し出し成形可能なテープ)」システム(タイトル写真:注1)を紹介します。また後半では、サステナブル マテリアル展から日本リファイン(株)の「バイオ溶剤」への取り組みと、三菱ケミカル(株)の「サスティナブルMMA/PMMA」にも触れます。
(いずれも、科学・技術上の面白さの紹介であり、各企業の宣伝等ではございません。)


接着・接合 Expo から

皆さんはポスターを貼る時に、どのようにしていますか? もちろん普通は画鋲を使いますが、気に入った「推し」のポスターの場合は両面テープを使うことが多いと思います。そして最近では、3M のコマンドタブ(下写真、左)という粘着剤を使う方が増えてきたようです。しっかり貼れてキレイにはがせる粘着剤で、壁を傷つけないところがポイントです。「伸ばしてはがす」ことができる仕組みです。

3Mのコマンドタブ(左)とコマンドフック(右)

これは粘着剤をつまんで伸ばすことにより、粘着剤が硬くなり(粘着性が減って)はがれるのです。少し科学的に説明すると、粘着剤は結晶部と非晶部(結晶部ではないアモルファス部)からなるポリマーですが、引き伸ばすことにより非晶部の一部が結晶化して硬くなり、粘着性が下がります。


今回の接着剤「VHBエクストルーダブル テープ」もこれを利用しているようです。もちろん、素材のポリマーは異なります(質問するとアクリレート系ポリマーとのことでした)。最初にまず接着剤を加熱し、エクストルーダーから押し出し、必要な箇所にテープ状に成形します。

自動化されたシステム(注1)


このシステムの重要なポイントは、効率性、汎用性、シンプルさ、持続可能性があげられ、具体的には、

・事前の表面処理が不要
・多くの基材(金属、ガラス、ゴム、プラスチック、生地など)に接着可能
・全自動化が可能で、接着後すぐに取り扱える
・使用後、接着剤を引き伸ばすことにより容易に剥離可能
・接着剤のメンテナンス(使用・保管)が容易

適用できる範囲は限られるかも知れませんが、今後非常に有用なシステムになると感じました。接着操作の容易さ・汎用性ももちろんですが、「コマンドタブ」同様の「引き伸ばして剥がせる」ところが大きな特徴です。


サステナブル マテリアル展から

他の展示会場のサステナブル マテリアル展から2つの取り組みを紹介します。まず日本リファイン(株)です。この会社は、さまざまな生産工程から排出される使用済み溶剤を引き取り、処理・再生する、分離精製技術が得意な企業です。

今回は新しい活動として、植物原料からの「バイオ溶剤」の製造とリサイクルに関しての展示でした。具体的には、ブタノール、酢酸エチル、グリコール類などです。現時点ではバイオ溶剤は石油由来のものに比べ高価ですが、今後コストダウンが進めば、大きな産業に展開する可能性があると感じました。


もう一歩踏み込んだ研究としては、三菱ケミカル(株)が汎用高分子材料のメチルメタクリレート(MMA)ポリマー(プラスチックでできた透明ガラスなど)を再検討し、「サスティナブル MMA/PMMA」プロジェクトを進めていました。その内容は、

・回収、分解、再利用するケミカルリサイクル
・植物由来材料を適用したMMA の製造
・植物由来原料から発酵法によりるMMA の製造

に焦点を当てていました。

サスティナブルMMA(注2)


以上、高機能素材Weekから3点の紹介をしました。新しい技術が確立し、拡がり始めている様子を感じていただければうれしいです。

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注1:3M、会場配付パンフレットより
注2:三菱ケミカル(株)、会場配付パンフレットより

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