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芍 shaku

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〈芍〉
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#日記

『夜に着いて』

『夜に着いて』

同じ空の下で
埋もれる君を見つけて
きっと明日も予定外で
見つけた幻想を放す

藍色に染まった夜のカーテンは
多くの人が好きだなんて言うけれど
幾つもの軽い嘘に塗れていて
本当は何もないんだから

私の好きな夜は
ここにあるたくさんの光
宇宙の真下にある地球
一人だけの世界

君と同じ夜で
全く違うもの

私だけの夜で
美しい孤独

『自分の理由』

君が嫌いです単純な理由で君が嫌いです

君に好かれるために飾らなくてはいけないその理由がもうないことに自由を見つけました

それはもうとても快適で

とても潤滑で

とても風通しがよくて寂しくもあるのでした

君から好かれるために飾らなくてもいい

飾り付けたいわけじゃない

誰からみても きれいだ と言われる

何かになりたかった

もう必要とされない
それは自由

『めがねがひつようです』

『めがねがひつようです』

『めがねがひつようです』

おしえて。

どこにも、逃げられないから、目をつぶるの。
目をつぶると殺されちゃうから、目をあけて、ただようように目をうようよさせていたら、ようやく眠れて、そうしたら、いつの間にか目が覚めて、
また繰り返すの。

繰り返すほど、このまま目をあけない日を考えるけれど、もしほんとうに目がこのままあかなくなったら、そのときに、あぁ、生きたかったなってきっとおもうの。生きていた

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『積年の思いが皺』

『積年の思いが皺』

『積年の思いが皺』

ヤバいくらい手をかけている日常が
圧倒的に映えないから
首を傾げて立っていてもそれが日常

かさ増しの食事で
立体感を味わうふりをして
財布の顔色伺っているのなんで
異常

肉を食べたら罪悪感くらうの
周りがとやかく言うから
草を食べてみるの
花の命は人の死に捧げるのに相応しいって
彼ら平気な顔で殺戮繰り返して

さっき恨んだすれ違いを
見て見ぬ振りできたならわたし
人でなし

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『おじいちゃんおばあちゃんたち』

『おじいちゃんおばあちゃんたち』



『おじいちゃんおばあちゃんたち』

昔はおじいちゃんおばあちゃんっていう存在は変わらないと思ってた
わたしも
わたし達も同じおじいちゃんおばあちゃんになるんだと思ってたのに
小さい頃にいた街のおじいちゃんおばあちゃんはもうほとんど
ここには居なくなってしまって
今いるおじいちゃんおばあちゃんは
おじいちゃんおばあちゃんであっておじいちゃんおばあちゃんじゃない
おじいちゃんやおばあちゃんにはこう

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『風のつよい日』

『風のつよい日』

『風のつよい日』

風の強い日わんころ
君は
枯葉になりたい
歩道の脇の小さく真っ直ぐな
乾ききった溝のトンネル
コロコロ駆ける葉っぱに
おいつけ追い越せ
君も
風のように駆け抜けたい
その溝ぴったりの体沈ませて
枯葉のように突き進みたい
ジャストフィットわんころ
溝に挟まれて
ただコロコロと
転がるように疾走したい
風の強い日
君の名前は
風子
あだ名よりも
正しく呼んでもらえると
目をぱちくり

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『しっぽ』

『しっぽ』



『しっぽ』

かつて
みんなぼくを殺したがった
なぜなら
わたしが天使だったから

ぼくを殺せば答えが見つかると
わたしがいるからみんな苦しいんだと
ふと世界は気づいてしまった
明日なんかいらないから
手早く答えを引き摺り出したがった
大切なものなんて
みんな分からなくなってしまった
わたしは怯えて
ぼくは逃げる決意をした
わたしは何も守れなかった
ぼくはみんなを見捨てたんだ
みんなに生きてほ

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2022.5.22

2022.5.22

























冬浴びて
誇る数多の桜より
初夏一本の芍薬なりたし

初めて芍薬を見たとき、一輪の、淡く儚そうなのに、華奢な細長い茎で背筋を伸ばして、花の重さにものともせず、凛として咲く様子に、驚かされました。

桜も大切で好きだから、また言葉にしてみたい。けれど、私は芍薬が好き。

私は芍薬を去年初めて見て、それから今

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『忘れた買いもの』

『忘れた買いもの』



『忘れた買いもの』

花器を買った
茶色と青で深い海を
思い出せるような色の

ケーキ屋のアイスを買った
冷凍のソフトクリーム
店主が少し寂しげだった

水を買った
隣の隣の隣の県から
運ばれて来たペットボトル

マウントレーニアを買った
コンビニの店員さん
少しやさしく手渡してくれた
数枚のお釣りとレシート

日傘は買わなかった
気に入る生地のものがなかった
一昨年失くして
それがまだ残って

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『花の目』

『花の目』

『花の目』

花と目が合うときがある
一つの花と目が合って揺れる
周りは揺れていないのに
そのひとつだけが揺れる
すると二つ隣の草が揺れる
反対に三つ隣の葉っぱが揺れる
今日はたくさん目が合った
「こっちを見て」
と揺れておしえてくれる
話しかけてくる
笑いかける
近づくと緊張して
揺れるのをやめて止まっている
息をひそめて窺っている
風が吹くとさようなら
揺れない草木は眠っている
止まった時間の

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『素直』

『素直』



『素直』

雨の日に愛していないと云った。
次の朝
愛していると思った。

狂おしい思いは偽りだと睨んだ。
滴る中
傾く人生は現実だと信じた。

思い出の内に包み込んでくれる毛布を探した。
引っ張って
くるまったつもりになったけど暑かった。

深海みたいな光の届かない嘘を考えた。
並べて
小綺麗にしてもどれも暗号に過ぎなかった。

笑顔が溢れるように少し大きく動いた。
疲れて
笑うのも躊躇う程

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『星座ビーズ』

『星座ビーズ』



『星座ビーズ』

夜の奥の狭間で
足音も飲み込まれて
遠くの灯りと音だけが頼りの

しゅわしゅわ泡泡

閉めたはずの栓を思い出して
繋いでみたビーズは星座のきらきら

長い長い夢をみてたの
冷え切った指にも気付かずに
それでよかったのに
覚めた夜中は寝付けない

『そうでした』

『そうでした』

『そうでした』

そうでした
わたし生かされてるんでした
ふつうの日常
過ごしてしまってごめんなさい
きょうは休みだから
昼まで寝てやろうなんて
老けこんでやろうなんて
考えてました
寝たふりしてたら
あいつヤバイヤバイヤバイヤバイ
なんて
カラスに叩き起こされました
がっこう!
なんて言われてしまいました
ごめんなさいでも、
わたし
こどもじゃないんですが
よくばって
ゆっくりねたかったんです。

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『うまくいかない羊』

『うまくいかない羊』

『うまくいかない羊』

「そのままでいい」って言ってよ私ずっとこうやって生きてきたのでもずっと藻搔いて変わってきたの日に日に私が分からなくなってそれなのに変わらなきゃって明日もたぶん分からない私は私で居てもいいって思いたいそのままでいいよって言ってくれたらなでもそれは

「そのまま死んでくれ」ってことに
なっちゃうのかな