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なぜマルチタスクになってしまうのか? 「時間」概念の変化と持つべきマインドセットとは
「マルチタスクからシングルタスクへ、とは言うもののなかなか集中できない。なぜだろうか…」
最近、シングルタスクの重要性について、各種メディアで見聞きする機会が増えました。その重要性は私も日々痛感しています。マルチタスクがいかにマイナスの影響を及ぼすのかについて、脳と自律神経への影響も含めて以前記事にまとめました。
シングルタスクの重要性については上記の記事でまとめた通り、大きく4つのメリットがあります。
1:タスクスイッチの頻度が減り、脳の負担軽減
2:一つのことに集中でき、精度が上がる
3:目の前の人と密に会話でき、関係がよくなる
4:五感が敏感になり、感受性が高まる
そして、シングルタスクを行うためには時間管理の徹底がポイントとなります。しかしこの「時間」を管理するのが非常に難しいのも事実。
ではなぜ難しいのか?時代の変化からその要点はどこにあるのか、そして我々が持つべきマインドセットは何なのかを考えます。
時間概念の変化
そもそも時間という概念は、産業の発達に合わせて形成されていった側面があります。社会の時間感覚が共通基盤になったことで、学校や鉄道などのインフラが発達してきました。会社の始業時間、終業時間、学校のチャイムが鳴る時間、決められたお昼の休憩時間など、社会通念としての時間があり、それに従って行動して来ました。つまり、私達は長く「社会の時間」に自分の時間を合わせて生きてきたと言えます。
しかし、ここ数年でその時間の概念が大きく変わってきています。特にこのコロナショックによってその概念変化は急激に起こっています。今までの「社会の時間に自分の時間軸を合わせる」スタイルが崩壊してきています。
時間の「山」「塊」「際」の崩壊
時間変化で特徴的なのは「山」「塊」「際」の3つの変化です。
1.「山」
これまでは、生活のタイミングは「社会の時間」に合わせて一斉に行動していました。分かりやすいのが通勤です。会社の始業時間が固定されており、職場に向かうために誰もが一斉に行動する。それが今はテレワークが広がり、密を避けて行動することがデフォルトになりつつあります。「ソーシャルディスタンス」という言葉がこの「山」を崩したことになります。
2.「塊」
今までは、仕事の時間、食事の時間、睡眠時間など時間は一定の塊であるほど価値があると考えられていました。しかし、そこにスマホが浸透する中で「隙間時間」の価値が注目され、仕事の移動の間に5分だけゲームをする、〇〇の合間に▢▢をする、という風に時間の「小粒化」が起こっています。
3.「際」
これまでは、ワークとプライベートの境目がはっきり分かれているのが一般的でした。一旦職場に着くと就業まではしっかりと仕事をし、帰宅後はプライベートの時間という風に線引きが明確でした。しかしテレワークの広がりにより自宅が職場になり、オンラインの会議と会議の間に家事をしたり、子守しながら会議に参加するなど、公私の境目が曖昧になっています。
予防医学研究者の石川善樹さんはコロナ禍の変化について「サンマ(三つの間)」の変化を指摘しています。
自宅で過ごすことが圧倒的に多くなる中で、家庭では時間と空間を巡る問題が勃発しています。突然、長い時間を共にすることになり、夫婦間や子どもとの関係性が変わり、友人や同僚とのコミュニケーションも、オンラインだと雑談がしにくいなど、従来のようにはいきません。だから、Withコロナの時代では、いわゆる「サンマ(=三間)」という「時間」「空間」「仲間」の在り方が見直されることが大きな変化でしょう。
ここでいう時間と空間の「際」が曖昧になることで、公私が一緒になり、これまでのような「アフターファイブ」といった概念は崩壊しています。つまり、仕事もプライベートも壁がなくなり、「一つに集中する」ということがとても難しい世の中になってきているということです。
時間効率の意識の加速
以上のように「社会の時間」から解放されたことで、今は時間を自分でコントロールする時代になっていると言えます。そうなると、その時間効率、つまりはより生産性の高い時間の過ごし方をしたいというニーズが高まります。
例えば、ニュースや内容だけ知りたいコンテンツは倍速で視聴する。一方で好きな映画は劇場でゆっくり楽しむ。こうした、 外れ時間のリスクを最小にしたいというニーズが高まっています。
また時間当たりの生産性を高めるために自分を取り巻く空間を組み替えるというニーズもあります。例えば、集中して仕事をするためにカフェ感覚で避暑地まで行くという行動です。最近「ワーケーション」という言葉も生まれました。ワーケーションとは、「ワーク」(労働)と「バケーション」(休暇)を組み合わせた造語で、観光地やリゾート地でテレワーク(リモートワーク)を活用しながら、働きながら休暇をとる過ごし方です。これは先に述べた「際」のシームレス化の代表格と言えそうです。
自分で時間をコントロールできるがゆえに、仕事のタスクと、プライベートのやりたいことが近づき、重なり、「〇〇しながら▢▢する」というマルチタスクが当たり前になってきています。
シングルタスクのマインドセット
マルチタスクがデフォルトの時代に生きる我々は、放っておくと常に脳に負荷がかかり、自律神経が乱れっぱなしになりがちです。マルチタスクからシングルタスクに移行するには相当な意識付けが必要であり、そのために持っておくべきマインドセットがあります。
それは「不器用に生きる」というスタンスです。
我々は「短時間で複数のことをこなした方が生産性が高い」と思いがちです。しかし、こうした器用な生き方は、広く浅く「処理する」生き方になってしまい、結局自分の中に残るものも浅いものばかりになりがちです。そして、そのプロセスは非常に目まぐるしく頭も体も動き続けるため心身ともに疲弊してしまいます。
そうではなく、「不器用に生きる」という意識を持つことで、目の前のことだけをやるという意識が強くなります。この考え方は一見時代遅れに見えるかもしれません。ですが、マルチタスクからシングルタスクへシフトしている今、時代は一周回って効率から効果の時代に変わっているように思います。一つのことに丁寧に向き合う。そんな時間が増えることで、人生の豊かさは大きく変わるのではないでしょうか。
そして「不器用に生きる」ということは、1つのことを選ぶ、選び続けるということ。言い換えれば1つ以外を捨てる、捨て続けるということです。あれもこれもやりたい私達にとっては難しいことかも知れませんが、人生を太く豊かに生きるということは、そういうことだと思います。
まとめ
我々の生活は知らず知らず変化しています。その大きな変化として挙げられるのが「時間」の概念です。「社会の時間」に合わせて来た時代は終わり、「自分でコントロールする時間」に概念はスイッチしています。
そんな時代では公私の壁はなくなり、ワーケーションという言葉が生まれたように、あらゆる「際」がボーダーレスになって来ます。これはつまり、「〇〇しながら▢▢する」というマルチタスクがデフォルトになってしまう時代です。
マルチタスクは一見、時間生産効率が高いように思えますが、その裏で脳や自律神経に悪影響を及ぼすとともに、広く浅くただ目の前のことを処理する毎日になりがちです。
自分で時間をコントロールできるこの時代だからこそ、マルチタスクからシングルタスクに切り替え、太く丁寧に自分の人生を生きていきたいものです。
その時に有効なマインドセットは「不器用に生きる」というスタンスです。あれもこれも広く浅く処理するのではなく、目の前の1つを選びそれと丁寧に向き合う。
そんなマインドセットを持つことで、日々を豊かに過ごしていけたらいいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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