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美術展・アート鑑賞

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自分の行った美術展の感想や、一つのアート作品について掘り下げた記事をまとめています。
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記事一覧

狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」展下関市立美術館(山口県)その1 2024/2/6~3/17

狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」展下関市立美術館(山口県)その1 2024/2/6~3/17

 この展覧会では、狩野芳崖「悲母観音」(東京藝術大学)、「仁王捉鬼図」(東京国立近代美術館)を中心に、彼の直弟子が描い芳崖作品の模写や、明治期の東京美術学校の画学生から、今現在、現役で活躍している画家まで、彼の作品に影響を受けて、それらから派生して描かれた作品が多数展示されています。
 
 狩野芳崖(1828-1888年)は、明治前期に米国人アーネスト・フェロノサの元で新日本画の制作に取り組み、岡

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狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」下関市立美術館その2 2024/2/6~3/17

狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」下関市立美術館その2 2024/2/6~3/17

前回記事の続きです。
その1はこちら狩野芳崖「継がれる想い 悲母観音からはじまる物語」展下関市立美術館(山口県)その1 2024/2/6~3/17やむやむ (note.com)

 この展覧会では、狩野芳崖「悲母観音」(東京藝術大学)、「仁王捉鬼図」(東京国立近代美術館)を中心に、彼の絵画から派生して作られた作品が多数展示されていました。
絵画については、三つの作品群がありました。
・狩野芳崖の直

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ダムタイプ|2022:remap 、2023/2/25~5/14 アーティゾン美術館

ダムタイプ|2022:remap 、2023/2/25~5/14 アーティゾン美術館

 本作は、私が2023年に鑑賞したアート作品の中でもっとも謎めいていた作品でした。
謎、といっても私が難しく考えすぎていただけだったようで、あえて記事にしなくてもよいかと思いましたが、高谷史郎氏が制作して、これから公開される二つのパフォーマンス作品のタイトルが、本作「2022:remap 」と関連しているような気がするので、私の個人的感想とともに、考えたことをつづります。
 
いよいよ今週末2/9

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北斎「春郎期、宗理期編」永田コレクションの全貌公開第一章 島根県立石見美術館2023/12/23~2024/02/12

北斎「春郎期、宗理期編」永田コレクションの全貌公開第一章 島根県立石見美術館2023/12/23~2024/02/12

 葛飾北斎の春郎期と宗理期に焦点をあてた展覧会です。
この展覧会の特徴は、北斎の研究者永田生慈氏が研究のために蒐集したコレクションを、その研究内容に沿った形で展示されている所です。

 そのため、多数の展示作品があり、それらが明確に分類されていて各々の解説が詳しく、また「現存するものはこれ一つまたは数点」といった稀覯な作品や資料を見ることができます。

 今回は永田コレクションの中から、北斎の70

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広島市の美術館周辺おすすめ喫茶店3つ(2)

広島市の美術館周辺おすすめ喫茶店3つ(2)

広島市中心部にある三つの美術館、広島県立美術館、ひろしま美術館、広島市現代美術館周辺のおすすめ喫茶店を紹介する記事の第二弾です。

 第一弾はこちら
「広島市の美術館周辺おすすめ喫茶店3つ」
https://note.com/yamyam5656/n/n3941025e240f

 広島駅周辺から市の中心部はたくさん飲食店がありますが、私の好みで、あえて昭和の香りのする喫茶店をご紹介します。

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山口晃「アウトラインアナグラム」感想2/2ジャムセッション石橋財団コレクション×山口晃「ここへきてやむに止まれぬサンサシオン」展より

山口晃「アウトラインアナグラム」感想2/2ジャムセッション石橋財団コレクション×山口晃「ここへきてやむに止まれぬサンサシオン」展より

 アーティゾン美術館にて、ジャムセッション 石橋財団コレクション×山口晃「ここへきてやむに止まれぬサンサシオン」展( 2023/9/9〜11/19 ) を11/18に鑑賞しました。 とくに印象に残った「アウトラインアナグラム」について感想を書きます。前回記事の続きです。
前回記事はこちら 山口晃「アウトラインアナグラム」感想 ジャムセッション石橋財団コレクション×山口晃「ここへきてやむに止まれぬ

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竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー展 京都市京セラ美術館2023/10/7〜12/3

竹内栖鳳 破壊と創生のエネルギー展 京都市京セラ美術館2023/10/7〜12/3

 竹内栖鳳(1864〜1942) の初期から晩年まで、代表作を選りすぐって絵画作品が89点(前期展示)、写生帖が25点、絵葉書や愛用の品など参考資料が8点展示されていました。

 どの作品も印刷物やモニター画面からは伝わらない迫力と上品な雰囲気に満ちていて、実物が見られて良かった、と思いました。

展示は前期(11/6まで)と後期(11/7〜)で入れ替えがあり、目録を見ると11/21から展示のもの

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山口晃「アウトラインアナグラム」感想1/2 ジャムセッション石橋財団コレクション×山口晃「ここへきてやむに止まれぬサンサシオン」展より

山口晃「アウトラインアナグラム」感想1/2 ジャムセッション石橋財団コレクション×山口晃「ここへきてやむに止まれぬサンサシオン」展より

 アーティゾン美術館にて、ジャムセッション 石橋財団コレクション×山口晃「ここへきてやむに止まれぬサンサシオン」展( 2023/9/9〜11/19 ) を11/18に鑑賞しました。

とくに印象に残った「アウトラインアナグラム」について感想を書きます。

 最初にある「汝、経験に依りて過つ」の部屋の次に、「セザンヌへの小径」が人で混み合っていたこともあり、「雪舟の翳る部屋」から見始めました。

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「浪のしたにも都のさぶらうぞ」展 YCAM山口情報芸術センター 2/2

「浪のしたにも都のさぶらうぞ」展 YCAM山口情報芸術センター 2/2

 メディアアート作品の感想を記します。
作品タイトル 「浪のしたにも都のさぶらうぞ」
制作 許家維+張碩伊+鄭先喩+YCAM 
展覧会期間 2023/06/03〜2023/09/03
会場 山口情報芸術センターYCAM (山口県山口市中園町)
 ※作品は撮影、録音禁止であったため、作品の画像は載せていません。

 前回記事の続きです
 →前回 「浪のしたにも都のさぶらうぞ」展 YCAM山口情報芸術

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「浪のしたにも都のさぶらうぞ」展2023/6/3-9/3YCAM山口情報芸術センター 1/2

「浪のしたにも都のさぶらうぞ」展2023/6/3-9/3YCAM山口情報芸術センター 1/2

メディアアート作品です。台湾の3人のアーティストとYCAMの共同制作。
9/3が展覧会最終日でした。
見ごたえあり大変に面白い作品でした。作品の感想を書きます。
※作品は撮影録音禁止だったため、作品の画像はありません。

1 作品の基本情報

タイトル 「浪のしたにも都のさぶらうぞ」
制作 許家維+張碩伊+鄭先喩+YCAM 
展覧会期間 2023/06/03〜2023/09/03
会場 山口情報芸

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「イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき」島根県立石見美術館2023/4/22〜6/19

「イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき」島根県立石見美術館2023/4/22〜6/19

 フィンランドを代表するガラス食器や花瓶、置物などのインテリア製品のブランド、イッタラ。
イッタラのブランドとしての歩みとその製品を、時代とデザイナーごとに多数の展示品で紹介する展覧会です。
 2022年秋に渋谷Bunkamuraザミュージアムであった展覧会の巡回です。
 一部を除いて、撮影はOKでした。

展覧会解説より 「1881年に、フィンランド南部にあるイッタラ村のガラス工場からイッタラは

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安野光雅美術館(島根県津和野町) へ行ってきました

安野光雅美術館(島根県津和野町) へ行ってきました

 4月初めに訪れました。爽やかな風が吹く天気の良い日でした。
桜の時期は過ぎてしまっていましたが、山々の新緑が輝いていました。

JR山口線津和野駅の改札口を出で右手、道路をはさんだ向かい側、徒歩約2分のところに安野光雅美術館はあります。
 白壁に赤茶色の石州瓦が美しい和風の建物です。

安野光雅氏ご自身が建物の設計や内装のデザインに関わり、2001年に開館しました。昔の酒蔵と学校の木造校舎をイメ

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浮世絵の摺実演を見学

浮世絵の摺実演を見学

「浮世絵の摺実演」を見る機会がありました。
場所 山口県立萩美術館 日時2023/3/11、13時〜

浮世絵の制作は、版元、絵師、彫師、摺師の完全分業制。
今回実演があったのは摺師(すりし)の仕事です。

実演者は、アダチ伝統木版画技術保存財団(東京都新宿区下落合) 所属 
摺師:長沼翔太氏、解説:田崎正志氏

 写真のような道具の配置で普段仕事をなさっているとのこと。
摺師は江戸時代からこの

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月岡芳年 新形三十六怪撰 山口県立萩美術館浦上記念館 会期2023/3/7〜4/9

月岡芳年 新形三十六怪撰 山口県立萩美術館浦上記念館 会期2023/3/7〜4/9

月岡芳年(1839〜1892)の大判錦絵「新形三十六怪撰(しんけいさんじゅうろっかいせん) 」が目録を加えて36図全て展示されていました。

36図のどれも美しく保存状態のよいものばかり。
見応えありました! 展示作品はフラッシュ禁止で撮影可でした。
タイトル画像は 「貞信公夜宮中に怪を懼しむの図」の一部です。

🔸私が怖いと思った絵 三撰三井寺頼豪阿闍梨悪念鼠と変ずる図

経文を咥えている阿闍

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