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月岡芳年 新形三十六怪撰 山口県立萩美術館浦上記念館 会期2023/3/7〜4/9

月岡芳年(1839〜1892)の大判錦絵「新形三十六怪撰(しんけいさんじゅうろっかいせん) 」が目録を加えて36図全て展示されていました。

「新形三十六怪撰」は芳年の最晩年の代表作で、伝説や歴史物語、謡曲などをもとに描かれた古今の妖怪や幽霊たちは、繊細な描写と豊かな色彩により、妖気を醸し出しています

美術館リーフレットより

36図のどれも美しく保存状態のよいものばかり。
見応えありました! 展示作品はフラッシュ禁止で撮影可でした。
タイトル画像は 「貞信公夜宮中に怪を懼しむの図」の一部です。

🔸私が怖いと思った絵 三撰

三井寺頼豪阿闍梨悪念鼠と変ずる図

大判錦絵 明治24年(1891)

経文を咥えている阿闍梨の顔が怖い。全くの妖怪ではなくて人の顔の面影をとどめているのが怖い。
さらに、画面上部と下部のネズミの群れにゾッとしました。アカネズミやハムスターみたいに小型の齧歯類はかわいいと思うが、大きいのはちょっと・・・。


やとるへき水も氷にとちられて 今宵の月は更にこそあり 宗祇

大判錦絵 明治25年(1892)

画面左の後ろ向きの旅人姿が宗祇。右奥に、うつむいた白い影帽子のような幽霊たちがいる。

室町時代の連歌師・宗祇は、和歌の西行、俳諧の芭蕉とならぶ漂白の詩人です。丑三の時刻、ある古寺で複数の幽霊達が話し始め、「今宵の月は空にこそあり、今宵の月は空にこそあり」と言って悩んでいます。上の句が出来ずに悩んでいることを理解した宗祇が、「宿るべき 水も氷に閉じられて」と句をつけると幽霊達は消えていきました。(氷が張っているために、月は本来あるべき水面に宿ることが出来ずに、空に浮かんでいるのだという歌意)

展覧会会場の作品解説より

 幽霊達が寄り集まって連歌会を開いているのも怖いが、創作に悩んで成仏ができない霊がこの世に留まっているという意味にもとれて怖い。


藤原実方の執心雀となるの図


大判錦絵 明治23年(1890)


風にそよぐ菜の花と、羽ばたく雀たちが、春を感じさせて、のどかな絵かと思いきや。
解説を読むと、今際の際(いまわのきわ)の藤原実方が都の方角へ強い執念を向けている図なんですね。
よく見ると実方は裸足で、着物はあちこち破れている。
画面の色合いが明るく、異形のものが描かれていないだけに現実味があって怖い。

藤原実方は、平安時代の歌人。能書家として知られる藤原行成と口論になり行成の冠を取って投げ捨てたことにより、陸奥守に任ぜられ、その地で亡くなりました。死後、実方の遺恨が雀となって京都の御殿へ戻り、皿の上に盛られた料理を食べた、といった伝説が語られるようになります。

展覧会会場の作品解説より

🔸新形三十六怪撰に見られた様々な照明器具


上段左  鍾馗夢中ニ捉える鬼の図  上段右 葛の葉きつね童子にわかるるの図 中段左 四谷怪談  下段左 茂林寺の文福茶釜   下段中 地獄太夫悟道の図   下段右 清盛福原に数百の人頭を見る図 


🔸他の作品も見る快感が得られるものばかり。よかったです。

 県立萩美術館浦上記念館は、やきものと浮世絵コレクションが充実しています。ちなみに1/31〜2/29には、月岡芳年の「風俗三十二相」が展示されていました。こちらも様々な女性の衣装や姿態が描かれていて面白かったです。


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