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かったぱしから読書生活

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大学卒業以来、ずっと出版業界。本が好きで、ずっとこの世界で暮らしている。読書はフィクション派。ファンタジー好きなれど、時代物、ミステリー、純文学、何でも来いで、ひたすら濫読。読書… もっと読む
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2023年5月の記事一覧

『京都不案内』どころか『京都首ったけ』

『京都不案内』どころか『京都首ったけ』

森まゆみ『京都不案内』(世界思想社)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0BQN431FX/
 冒頭には、身体を壊して、気功で体質改善するために京都に行ったとある。しかし『京都不案内』というタイトルを裏切って(これは謙譲の科白だろう)、縦横無尽に京都に深入りしてゆく。それも若い頃からの京都とのおつきあいの集大成である。京都と言っても神社

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今野敏「トランパー 横浜みなとみらい署暴対係」

今野敏「トランパー 横浜みなとみらい署暴対係」

今野敏「トランパー 横浜みなとみらい署暴対係」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C4YD9DGN/
 県警本部暴対課・平賀松太郎警部補が横浜港埠頭に浮かんだ「サツカン殺し」。もとは県警本部捜査第二課の永田優子課長から振られた、高級食材の取り込み詐欺捜査だった。仲間を殺られたことで神奈川県警は怒りに震える。しかし捜査過程で、平賀が詐欺犯人

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森沢明夫「ロールキャベツ」

森沢明夫「ロールキャベツ」

森沢明夫「ロールキャベツ」(徳間書店)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C4YM6BXL/
 就活前に進路を決められない夏川誠。人生の目的を見つけられずに鬱々としていた彼に、新たな場が与えられた。2人の女子大生のパンクを修理したキッカケで生まれた「チェアリング部」。それは景色のいい場所に椅子を置て、マッタリとした場を持つことだった。シェアハウスして

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西村京太郎「南紀白浜殺人事件」

西村京太郎「南紀白浜殺人事件」

西村京太郎「南紀白浜殺人事件」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C4P4914G/
「貴女の死期が近づいていることを、お知らせするのは、残念ですが、事実です…」“死の予告状”を受け取ったR建設のOL・広田ユカ。同僚の木島多恵が、ユカの悩みを十津川警部の妻・直子に相談し、助力を求めた。しかしユカは、母親の葬儀のため故郷の南紀白浜に帰省した

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六道慧「公儀鬼役御膳帳」

六道慧「公儀鬼役御膳帳」

六道慧「公儀鬼役御膳帳」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C4P3HPL9/
 将軍の毒味役「鬼役」を務める御膳奉行いわゆる膳之五家。その筆頭格である木藤家の妾腹の子である隼之助。父である多聞は、隼之助を敢えて武家ではなく市井で暮らさせる。それは多聞が嫡男を差し置いて、隼之助に「鬼の舌」の天分を見切ったからだった。多聞には毒味役としてだ

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夢枕獏「黄金宮Ⅱ 仏呪編・暴竜編」

夢枕獏「黄金宮Ⅱ 仏呪編・暴竜編」

夢枕獏「黄金宮Ⅱ 仏呪編・暴竜編」(徳間文庫)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/dp/B0C4P448B5/
 黄金の勃起仏と一枚の地図を、託された地虫平八郎。アフリカから持ち帰った探検隊のメンバーは、奪還に来た黒人に次々と殺される。その秘宝は、かつて空海が伝えた密教の一部に由来していた。物語は中盤にかかる。未だ完結はしていない。まだまだ続く。ついにアフリカ

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絵画や彫刻が公の場にあること

絵画や彫刻が公の場にあること

鹿島神宮の近くにある、日本キリスト教団の鹿島教会。

ここには大海赫先生の描いた絵やサインがいくつもある。久しぶりに迫力のある絵を我流解釈で堪能した。「終わりの日」はヨハネの黙示録からイメージされる、この世の最後の阿鼻叫喚図。

「死者は生き返り」は、復活したイエスが生まれたばかりの嬰児イエスを抱く姿を描く。

もう一枚は受難に遭ったイエスの背後に迫る悪魔の影。

よくもこんなオドロオドロしい絵を

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ヨシタケシンスケ「みえるとかみえないとか」

ヨシタケシンスケ「みえるとかみえないとか」

ヨシタケシンスケの読書その5「みえるとかみえないとか」(アリス館)。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4752008424/
 僕は宇宙飛行士。ある星に降り立ったら、宇宙人(形状は火星人っぽい)には目が3つあった。しかも1つは後ろ向き。「それじゃあ(自分の)背中が見えないじゃない」「後ろが見えないのに歩けるなんてすごい」「とっても不便じゃない?」と、僕はひた

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ヨシタケシンスケ「ねぐせのしくみ」

ヨシタケシンスケ「ねぐせのしくみ」

ヨシタケシンスケの読書その4「ねぐせのしくみ」(ブロンズ新社)。
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4893096753/
 お母さんにおやすみを告げて自分の部屋のベットで眠りについた女の子。しかし熟睡の最中、小人のような何者たちが窓から侵入してくる。そこからは女の子は眠ったままで移動させられて、ディズニーランドのエレクトリカルパレードのような行進や、富士急ハ

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村上春樹『街とその不確かな壁』

村上春樹『街とその不確かな壁』

村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社)。電子書籍版はこちら↓
https://www.amazon.co.jp/gp/product/B0BTGK1HHS/
 主な登場人物は僅かこれだけ。この登場人物たちを読めば、物語の大筋はわかると思う。
1️⃣主人公と彼の影
・2️⃣との失恋(⁈)を引きずって、壁に囲まれた異世界を心象に想像して、そこで故人たちの残した夢を読む。異世界から現実の世界に戻って、

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