マガジンのカバー画像

現世界グルメ

30
運営しているクリエイター

記事一覧

現世界グルメ『揚げそば』

現世界グルメ『揚げそば』

 この日本には、蕎麦という素晴らしい食べ物がある。
 いわゆる蕎麦粉を使った麺状の料理だ。
 もともと蕎麦は痩せた寒い土地でも育つため、食物としてのポテンシャルが高い。
 だが悲しいかな、その特性から蕎麦は長らく、劣化版の麦として扱われてきた感がある。
 残念だが、白い米を最上位とし、その下に麦、更にその下に蕎麦というヒエラルキーが存在していたのだ。
 実際、今でも稗や粟と言った穀物は「雑穀」とし

もっとみる
現世界グルメ『デパ地下』

現世界グルメ『デパ地下』

 美食とは何だろう、と考える事がある。いや、そんな簡単な事もわからないのか?と問われそうだが、少し考えてもらいたい。
 「グルメとは、少しでも美味しいものを追い求める生き方である」 こう言うと特に何も間違っていないし、問題はない。
 では、続けよう。
 「グルメとは、手間暇を惜しまず、美味しいものを求める生き方である」 おそらく、ここまでならば「そりゃそうだろ」と思うだけであろう。
 問題は次であ

もっとみる
現世界グルメ『焼肉』

現世界グルメ『焼肉』

 焼肉。それは夢の食事である。
 人間は雑食であり、古来より肉を食べて生きてきた。それは変えられない事実なのだ。
 とある「自然派レストラン」の店主がいた。夫婦で営む小さな店だ。
 食材にこだわり、調理法にこだわり、次第にそのこだわりが強い思想へと凝り固まり、彼は菜食主義者の「ヴィーガン」になり、自分の店もヴィーガン料理専門店になったと言う。
 だが、シェフのこだわりが通じなかったのか、次第に客足

もっとみる
現世界グルメ「伊勢うどん」

現世界グルメ「伊勢うどん」

 この世には、納得いかない食い物と言うものがある。
 誤解なきように言っておくが、味覚なんてものは個人の好みが大きい。いや、味覚に限らない。どんな趣味も大概は、詰まる所、個人の好みに過ぎないものなのである。
 どの料理が美味いとか、誰の歌が上手いとか、誰の絵が美しいとか、誰の顔が綺麗だとか。100mを何秒で走れるか、と言うような明確な基準でもない限り、そんなのはただの好き嫌いに過ぎない。
 ある程

もっとみる
現世界グルメ『ローストビーフ丼』

現世界グルメ『ローストビーフ丼』

 英国料理。世界中から馬鹿にされる、不味さの代名詞。それが英国料理である。
 だが、個人的見解は世間票と大きく異なる。そう。英国料理は美味いのだ。
 ミートパイ、ハギス、スコッチエッグ、サンドイッチ、フィッシュ・アンド・チップス、マフィン、スコーンなどなど。
 美味い料理はちゃんとある。そもそも飲み物に関しては、紅茶、ビール、ウィスキーと世界を牽引してきた国なのだ。
 スターゲイジー・パイ(イワシ

もっとみる
現世界グルメ「ガーリックシュリンプ」

現世界グルメ「ガーリックシュリンプ」

 流行りの料理、と言うものがある。
 料理に限らず、何にでも流行り廃りは付いて回るものだが、美食に関する流行り廃りは概ね感心しない。
 この点は料理の中でもデザートにおいて顕著である。おそらくは1990年頃のティラミス辺りが最初ではないだろうか。
 ティラミス、シフォンケーキ、生チョコ、生キャラメル、ナタデココ、なめらかプリン、カヌレ、ベルギーワッフル、ニューヨークチーズケーキ、マカロン、クリスピ

もっとみる
現世界グルメ「シチュー」

現世界グルメ「シチュー」

 シチュー。魅惑の料理のひとつである。だが、問題はもう始まっているのだ。
 そう。シチューと聞いた瞬間に、ブラウン・シチューとホワイト・シチューのどちらを思い浮かべたか、である。
 無論、ブイヤベースやほうれん草のシチューなど、それ以外のシチューを思い浮かべた人もいるだろうが、それはまず間違いなく少数派なので、申し訳ないが割愛させていただく。
 ロールキャベツなら、トマトの赤とクリームの白と出汁の

もっとみる
現世界グルメ『大豆』

現世界グルメ『大豆』

 豆。それは夢の食品である。おそらくは穀物に次ぐ人類にとって不可欠食品のひとつである。
 最強が穀物である点は否めない。米、麦、蕎麦、コーン。生産性、栄養価、保存性。どれを取っても超一級品の最強食品である。
 欠点はただひとつ、人間が穀物を食べて生きていけるように設計されていない事だけだろう。
 人類が穀物を栽培する事によって食料供給を安定させた事は紛れもない偉業だが、人類の肉体は穀物を食って栄養

もっとみる
現世界グルメ『牛肉麺』

現世界グルメ『牛肉麺』

 中華麺、と言うと世間では多くの人がラーメンを思い浮かべる事だろう。
 読んで字の如く、中華の麺である。漢字では拉麺と書く。もはや、カレーと並んで日本の国民食と呼んでも差し支えない浸透具合である。
 だが、私は今ひとつ、ラーメンという食べ物に執着を感じないのだ。いや、別に嫌いな訳ではないし、ラーメンが好きかと問われれば無論好きだと答える。
 しかし、他の食べ物に比べると、魅力を感じていないのが本音

もっとみる
現世界グルメ「ピザ・トースト」

現世界グルメ「ピザ・トースト」

 私が愛して止まない料理のひとつに、ピザ・トーストと言うものがある。
 とんでもなく美味いシロモノだ。
 だが、このピザ・トーストについて語る前に、通過儀礼として語らねばならない料理がある。そう。
 ピザだ。
 おそらく、1980年代以降に生まれた日本人には信じ難い話だろう。だが、これは事実だ。
 1980年代に入るぐらいまで、ピザという料理は存在していなかった。
 本当の話だ。
 無論、日本には

もっとみる
現世界グルメ「美味いということ」

現世界グルメ「美味いということ」

 美味いものが好きだ。おそらく、これに異を唱える人は少ないだろう。
 まあ、全く食べ物に興味がないって人もいなくはないだろうが、美食という意味ではなく、明確に「自分が美味しいと思うもの」と付け加えたなら、否定する人は更に減ると思われる。
 そりゃそうだ。自分が美味い、と思うのは、自分の好みとして美味いのだから、嫌いな筈はない。
 無論、中には壮絶な幼少時代を過ごし、美味しいものを親の仇のように思っ

もっとみる
現世界グルメ『卵かけご飯』

現世界グルメ『卵かけご飯』

 お茶漬けナショナリズム、という言葉がある。かの三島由紀夫の造語ではあるが、近年のネットを見ていると、三島の弁は非常に正しかったと言わざるを得ない。
 お茶漬けナショナリズムとは、ちょっと海外に行っただけで、「日本はダメだ」と日本をこき下ろしたり、「日本に比べると海外はダメだ」と海外をこき下ろしたりする薄っぺらいく浅慮な意識の事である。
 くだらない比較はやめるべき、と言うのが三島の論。筆者も概ね

もっとみる
現世界グルメ『チャーシュー丼』

現世界グルメ『チャーシュー丼』

 まず最初に言いたい事がある。これを言うと多くの人から反感を買うのはわかっているのだが、ラーメンという食べ物が、あまり好きではない。
 別に嫌いな訳ではないし、普通に食べる。特にインスタントラーメンなんて大好きなぐらいだ。
 だが、外食における、うどんや蕎麦やパスタに比べると、ラーメンの価値や重要性を強く感じないのである。
 ハッキリ言ってしまうが、値段が高い。近年のラーメンは下手をするとイタリア

もっとみる
現世界グルメ『弁当』

現世界グルメ『弁当』

 美味いものが好きである。いや、考えても見てほしい。イギリスには食い道楽を賤しいとする文化があるらしいが、度し難い話だ。
 我々は食わねば生きていけないのである。
 特に食事は日に数回、まず必ず摂らねばならない。
 しかも、人間が起きて活動する時間は限られている。つまり、数時間に一度、必ず訪れるイベントなのだ。加えて、一度の食事に掛かる時間を計算すれば、我々にとって食事がどれほど大事かは理解できる

もっとみる