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続ちょこっとひとこと

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故郷・神戸に戻り、今を綴るもまだまだヨチヨチのエッセイ集。
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#京都

この香りは僕を30年前に一気に引き戻す

この香りは僕を30年前に一気に引き戻す

昨日の夕食にトーストを焼いた。
ハムをのせ、マヨネーズをかけて。

グリルで2分、あっという間に焼き上がる。
キッチンに焦げはじめたマヨネーズが香りたつ。



昼から始めた仕事は14時を回るといったん眠気に襲われる。

今の話ではない。
ちょうど30年前、大学3回生の頃の話だ。
僕はその頃、編集プロダクションで編集者の卵として仕事をしていた。

編集など興味がなかった僕がその世界に入ったのは、

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嬉しいではないか、その1人目に僕を選んでくれて

嬉しいではないか、その1人目に僕を選んでくれて

梅雨の中休みの昨日、僕は再び上洛した。
先日娘のところに行ったばかりというのに。
なぜかこのところ京都づいている。

前職の同僚と呑むために京都に足を伸ばしたのだ。
同僚といっても二回りほど若いのだけど。
大学は僕の後輩であり、会社では僕の先輩だった。

前職を僕が辞したのは昨年の6月。
詳しくは書かないが、まぁいろいろあって退職の道を選んだ。
きっと苦悶の表情を浮かべていたはずだ。
昨日呑んだそ

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収穫多い、京の旅

収穫多い、京の旅

一昨日、上洛。
昨年10月の大学時代のサークル同窓会以来だ。

一人暮らしの娘がPCの不調を見てほしいというので。
PCに詳しい人と認識してくれているようだ。

娘の下宿を訪ねるのは2年ぶりくらい。
生活のすべてが詰め込まれた狭い空間はいかにも大学生らしい。

さっそくPCの様子を窺うがどこも異常はない。
まぁそのうち分かるだろう。
そういって、晩メシに出かけた。

大文字山を遠くに望みながら、夕

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ハイブリッド同窓会で30年を遡り、京都で過ごした時間をしみじみ思う

ハイブリッド同窓会で30年を遡り、京都で過ごした時間をしみじみ思う

3連休の初日、京都で同窓会を開いた。
京都は大学の4年間を送った思い出の地。

2回生のとき、テニスサークルの代表を務めた。
そのせいで、卒業して結成した同期の集まりの代表も任された。

大学を出ると、その後の人生はもうバラバラだ。
ほぼ男子の大学だったから、サークルの女子は近隣のいくつかの女子大・短大から集まっていて、バラバラ度合いはさらに大きかった。

放っておくと、もう二度と連絡を取らない可

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初めての仕送りをATMから引き出したときの昂揚感は今も忘れない

初めての仕送りをATMから引き出したときの昂揚感は今も忘れない

大学への進学で、京都で一人暮らしを始めたあの日。

初めての仕送りをATMから引き出したときの昂揚感は今も忘れない。
自分が少し大人に近づいたような、そんな気がしたのだ。

でも僕にとって“仕送り”は、実はそれが初めではなかった。

***

中2の春。
大学生になった兄が家を出て、京都で一人暮らしを始めることになった。

仲のよかった兄だから、行ってしまうのはとても淋しかった。
それに、両親の仲

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「ぶぶ漬けでもどうどす」と訊かれたら

「ぶぶ漬けでもどうどす」と訊かれたら

京には有名な言葉がある。

――ぶぶ漬けでもどうどす。

京に暮らした大学4年間、そんな空気は肌で感じた。
大家がおだてるから、ま、まぁ…と乗っかったら突然ハシゴはずされたり。
社会人としてこの千年の都でやっていくなら、本音と建て前の使い分けを修得しなければ難しいと思った。

***

京はやっぱり漬物だ。
すぐき、しば漬、千枚漬。
内陸の町ゆえ野菜の保存技術が発達し、漬物が盛んになった。

漬物

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自分が望めば空腹も空虚も埋めることができるのだと気づいた

自分が望めば空腹も空虚も埋めることができるのだと気づいた

人づきあいがあまりうまくいかず、もがき苦しんでいた時期がある。
大学2回生の秋も深まった頃のことだ。

2回生といえば、所属していたサークルの運営を任されていた頃。
なかでも僕は、前年の新歓コンパでへべれけになったことから、サークルの決まりで代表になり、いろんな面倒も舞い込んでいた。
体重も10kg減って50kgを割り込んだ。

どんより曇った午後、僕はあてもなく自転車をよろよろと漕ぎだした。

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いざ家計簿でタイムトラベル!

いざ家計簿でタイムトラベル!

小学生の頃からこづかい帳は欠かさずつけていた。
こう見えて意外とマメなのだ。

大学生になって仕送りを受けるようになると、さすがにこづかい帳では管理しきれなくなり、ルーズリーフで家計簿をつけはじめた。
その家計簿は今も手元に残っている。

入学の翌月をピックアップ、いざ家計簿でタイムトラベル!

5/7
GWを過ごした神戸の実家を発ち、京都に戻る。
家賃19455円:いや格安物件すぎん?
賭150

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「そんなに冷たいものばかり飲んだらお腹の中のコビトさんがビックリするよ」「今ケガ治そうとコビトさんたち集まってきてくれてるよ」――まだ小さかった子供に、身体の中でいっぱい働いているコビトさんの話をよくした。
コビトさん今も元気かなぁ。今年のクリスマスはこれどうぞ。京・錦市場にて。

本気の汁をすすり、京の夜は更けていく

本気の汁をすすり、京の夜は更けていく

切っても切り離せない、日本人とみそ汁。
幼い頃から親しんだみそ汁からはなかなか離れられない。
もうすっかり舌に身体に染みついているのだ。

みそには、米みそ、麦みそ、豆みそなどがあり、地域性がある。
昔何かで目にしたみその分布図では、九州+山口+愛媛が麦みそ、愛知が豆みそ、その他は米みそが優勢とあった。
兵庫生まれ、兵庫育ちである僕は米みそ文化ということになる。

大学生活は京都だったが、せっかく

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伏見の酒を傾けながら心ゆくまで京のすしを楽しむのがよい

伏見の酒を傾けながら心ゆくまで京のすしを楽しむのがよい

東西のちらしずしの違いはかなり大きい。

関西のちらしずしは、味つけした具材をすしめしの上に散らしたもの。
おそらく全国的にこの手のちらしずしが多いはずだ。
載っているのは錦糸卵、でんぶ、味つけシイタケくらいで、よくてボイルしたペラペラのエビが1枚あるかないか。

対して関東のちらしずしは、にぎりずしのネタが豪勢にボンボンと載る。
醤油の入った小皿もついてきて、え? ちらしずしに醤油?
ネタだけ醤

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たった167日どすえ?

たった167日どすえ?

京都の知り合いは、大阪はどぎつくてかなんわという。
(意訳:何かと派手で困る)

一方で神戸の印象を問うと、神戸? 何があるんどすえ? という。
(意訳:歴史のない新参者は黙っとけ)

大阪のほうが印象があるだけマシといったところか。
あくまで僕の知り合いの大阪観、神戸観だけど。

神戸には歴史がないのか?

***

神戸の地が歴史の表舞台に立つのは平安の末、平清盛の時代。
神戸には奈良時代に開

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あのおじいちゃんだからめちゃくちゃでも許されたのだ

あのおじいちゃんだからめちゃくちゃでも許されたのだ

――変わった玉子サンドがあるらしいから、行かない?

変わったゆうて所詮、ゆで玉子とマヨネーズとパンやろ?
そんなん行かへん行かへん!

――ゆで玉子ではないらしいよ、厚焼きのオムレツだって。

ん? 行く行く! さっきから行くゆうてたやん! 早よ行こ!

レストラン〈コロナ〉かつて京都・西木屋町四条下ルに〈コロナ〉というレストランがあった。
知る人ぞ知るの人気店だった。

西木屋町は路地といって

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どちらの親子丼もちょっと「辛い」けど

どちらの親子丼もちょっと「辛い」けど

京都で親子丼を食べるとしたら、西陣〈鳥岩楼〉か、錦〈まるき〉に限る。
このどちらかでしか食べたことがないだけだけど。

西陣〈鳥岩楼〉〈鳥岩楼(とりいわろう)〉は、かしわ(鶏肉)の水炊きの店。
戦前に創業した、新鮮なかしわが堪能できる老舗だ。

入るのがためらわれるような風格ある店構え。
京都で過ごした学生時代にはもちろん縁があるはずもない。
東京の出版社に就職し、京都国立博物館の企画展に編集部5

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