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鍼灸こばなし

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一般的には知られていない日本鍼灸界の実情や、誰も教えてくれないであろうお役立ち鍼灸ネタを随時UPしています。
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#治療

逆子の灸法について

逆子の灸法について

中国では灸を用いた逆子治療が、1000年以上前から行われているそうです。実際に、8世紀頃に記された『太平圣惠方』には、棒灸を利用した逆子の治療法が紹介されています。棒灸を用いた逆子治療は妊婦への負担が少なく、経済的で、効果が良いため、現在でも中国では盛んに行われているようです。方法はとても簡単です。至陰というツボを10分ほど温めるだけです。

中医理論では、至陰穴は足の太陽膀胱経に属する井穴と呼ば

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胆嚢結石の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例4)

胆嚢結石の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例4)

ここ数年、メディアの影響で小食、粗食がブームになっており、1日1食が良いと主張する人もいれば、1日2食が良いと主張する人もいる。3食は獣、2食は人間、1食は聖などと言う人もいる。インドには食事を一切摂らず、「私は太陽を眺めているだけで生きてゆける」と主張する人もいるらしい。体を浄化するという断食も、根強い人気がある。

確かに大食、過食、偏食は心身を狂わせ、健康を損ねる可能性が高い。しかし常軌を逸

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腎臓結石の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例2)

腎臓結石の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例2)

食が欧米化し、飽食に溺れる日本人にとって、結石はもはや他人事ではない。しかし残念ながら、 鸡内金や金钱草、海金沙など、結石を溶かすと言われているような漢方薬を使った治療は、未だ日本では一般的ではないようだ。そもそも中药(漢方薬)は中国が発祥で、長い伝統ゆえに独自のノウハウが日々積み上げられている。傷寒論だけを読んで胡坐をかいているような日本人などは、相当な遅れをとっていると言えるかもしれない。鍼灸

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早発閉経の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例1)

早発閉経の予防と治療(『中華医薬』に学ぶ実際の症例1)

CCTVの『中华医药』では、中国国内の少数民族の伝承医学や、最新の針灸術、家庭で行える中医的な養生法などが主に紹介されている。中医関係の専門家も素人も、共に楽しめるような、有益な番組である。日本には「伝統医学に基づいた鍼灸を伝授します!」とか、「古典に基づいた鍼灸治療をしています!」とか、「ダイナミックな鍼灸で治します!」などと怪しく騒いでいる鍼灸師が少なくないけれども、そういった輩が主催する高額

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木枕について

木枕について

木枕は昭和期に流行した西式健康法で考案された枕です。しかし実際には枕とは言っても頭にあてがう枕ではなく、首に当てて首のコリをほぐしたり、頸椎の矯正を補助するための首枕です。ゆえに頭に当てたら全く効果は見込めませんので、ご注意下さい。

メーカーによっては硬枕とか、桐枕などと呼んだりします。私は10年以上前から木枕の存在を知っていて、実際に自分でも使っていたわけですが、とにかく木枕で寝ると安眠出来な

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偏頭痛とドッペルゲンガーと鍼

偏頭痛とドッペルゲンガーと鍼

以前、某テレビ番組で偏頭痛とドッペルゲンガーについての科学的な研究結果が公開されたことがありました。1996年、スイスのチューリッヒでドッペルゲンガーに悩まされている陶芸家がいた、という話です。ドッペルゲンガーとはいわゆる自己像幻視で、不意に自分と瓜二つな人物を目の当たりにする現象のことです。昔はドッペルゲンガーに遭遇すると死ぬ、などと騒がれていましたが、以下の内容を鑑みればその意味を医学的に説明

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真っ当な鍼灸師になるための心構え

真っ当な鍼灸師になるための心構え

以前、「鍼で気胸を起こすアホがいるが、ワシは鍼で気胸を治すんじゃ!ゴッドハンドじゃ!」とか、「神の手をもっている!」とか、中国語を解せぬのに「新中国の中医学に基づいた最高の鍼灸治療が受けられるのはウチだけじゃ!他はアホじゃ!」などと嘯(うそぶ)く鍼灸師がいた。

そもそも気胸は軽症なら安静にしていれば自然治癒するはずであるし、重症なら医師の元で適切な処置を施さなければ、死に至る可能性がある。まず気

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家庭で出来る灸治療

家庭で出来る灸治療

以下の内容は、2015年に院長が中国の最新文献を参考に、素人向けの灸療法の内容をまとめたものです。ご自宅での養生にご活用下さい。
*灸は誰にでもやって良いものではありません。特に妊婦や出血傾向がある患者、糖尿病など易感染傾向にある患者、乳幼児や高齢者には施灸しないでください。下記に記した注意事項は必ず守って下さい。火の取り扱いには十分ご注意下さい。また、灸は煙が大量に出ることがありますので、換気の

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不眠と針灸

不眠と針灸

昔から酷く疲れると、とたんに眠れなくなることがある。20歳を過ぎてから約10年間、完全夜型の不摂生な生活を続けていたことや、遺伝的に筋肉が凝りやすいことなどが少なからず影響しているのだろう。

確かに北京堂で師匠に施術してもらったり、自分で自分に鍼灸を施すようになってからは何もしていなかった頃に比べて心身の状態も良く、QOLは断然に上がっている。しかし今でも疲労が重なると、途端に眠りの質が落ちる

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最新の刺鍼法

最新の刺鍼法

中医経典の1つである『针灸大成(針灸大成)』には、“病滞则久留针(病が長引くのであれば、針を長時間留める)”、と記されている。

つまり、すでに古代中国では、一定時間の留針(置鍼)によって、より良い効果を得られることが知られていた。

それゆえ、中国では、刺鍼の刺激量に関する科学的な研究が古くから行われ、太い針を用いた方が明確な効果が出やすいことが常識となり、中医は好んで太い針を用いるようになった

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