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映画ラブ

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素人の映画感想文的な何かです。
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#家族

映画『Coda コーダ あいのうた』

映画『Coda コーダ あいのうた』

 親と子がすれ違うのは自然なことなのだろう。
 育った時代も違えば、世界も違う。それに伴って言葉も価値観も違う。
 当然ながら年齢が違う。経験も違う。

 そして何より、親は子を産み育て、子は親に育てられる存在だ。この事実はひっくり返らない。さらに、親も子も相手を選べない。

 4人家族の中で末娘の自分を除いて皆が聾者(ろうしゃ)だったとしたら。家族と世間の間の通訳者として生きることを強いられる。

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ドラマ『夜がどれほど暗くても』

ドラマ『夜がどれほど暗くても』

 程度の差こそあれ、人は誰でも何かに巻き込まれている。それと同時に人を巻き込んでいる。

 意図せず不幸の渦中に放り込まれる人もいれば、使命が如くに人を不幸に落とし込む場合もある。一面では人を助ける善意も、逆さから見れば悪意にしか思えないこともある。

 私たちの視野の中には問題事しか無いのが普通だ。どんなに幸せに見える人々でも、全く問題が無いことはない。皆解決しなければならない何かに直面している

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映画『チケット・トゥ・パラダイス』

映画『チケット・トゥ・パラダイス』

 幸せな気分に浸ることがこんなにも心地よいことなんだと、この映画を観て久々に思った。

 娘が突如結婚すると言われて狼狽えない親はいない。
 昭和の男親なら奪いに来た男を殴り倒してでも阻止しようとしただろう。それがジョージ・クルーニーとジュリア・ロバーツに掛かるとコメディになる。娘を嫁にはやらないと言う親なんて古い価値観に思えるかも知れないが、自分事となると案外どんな親でも同じ轍を踏むのではないか

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映画『星の子』

映画『星の子』

 親がとある宗教に熱心な、いわゆる二世がどんな心境で生きているのか。勿論それはどんな宗教かに寄るし、家庭によっても様々だろう。自分が生まれる前から既に信者だったという親が多いのかも知れないが、親が入信した切っ掛けが子の病気を何とかしたいということだったとすれば、その子供にとっては複雑な心境だ。しかもその宗教のお陰で病が良くなったとすれば。
 この映画は、そうした家族が舞台だ。

 とかく宗教の場合

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Amazon Prime Video『ウイング・アンド・プレイヤー』

Amazon Prime Video『ウイング・アンド・プレイヤー』

 搭乗した航空機のパイロットが上空で気絶し、操縦不能となったらどうするか。しかも副操縦士がいなかったとしたら。あなたは代わりに操縦することが出来るだろうか。

 この映画は現実に起きた物語をベースしたものだ。
 たまたま乗ることになったプライベート機だったからこそ起きたこと。
 薬剤師である主人公の家族(夫婦、娘二人)が乗った双発プロペラ機「ビーチクラフト・キングエア200」の機長が離陸後の上昇中

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映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(Avatar: The Way of Water)

映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(Avatar: The Way of Water)

 契りを交わして集団のボスと親子関係になる。同じグループの仲間とは兄弟関係になる。私が知る限りそんな風習を残しているのはヤクザだけだ。そのヤクザですら生存の危機にさらされている。

 家族という枠を超えた大きな集団に属することで生命の営みが行われる、それが定住社会の共同体のあり方だった。そこでは、家族同士は緩やかに混ざり合い、協同して共同体の利益の為に働き、子供たちは全員が共同体の兄弟として、次世

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映画『パラサイト 半地下の家族』

映画『パラサイト 半地下の家族』

 エンドロールが終わってゆっくりと明かりが灯る。穏やかな照明の館内を進む。建物から出ると想像以上の明るい陽射しが降り注いでいる。それに反応して瞬間的に閉じようとする瞳孔が痛い気がした。
 見上げると青い空をバックにゆっくりと雲が移動している。街の喧騒はいつものようにビルの谷間を響き、歩道を行き交う人々を縫うように駅に向かった。
 歩きながら少しずつ映画の中の世界から現実に戻る。そうして架空の話だっ

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映画『グリーンランド ―地球最後の2日間―』

映画『グリーンランド ―地球最後の2日間―』

 万が一にも起こる可能性が無いと思われることが起きたとしたらどうするか。
 それを考えて対策をしておくのが本当のリスク・マネジメントだ。
 今まで遭遇したことが無いから自分の身にそんなことは起こらないと人は思いがちだが、これまで遭遇したことが無い分だけ、あなたにとってみれば、これから遭遇する確率は上がっているのだとも言える。もし、それがいつかは起こることなのだとしたらだ。

 いわゆるディザスタ

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