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2021年3月の記事一覧

Etude (21)「リヨンからの便りー時間とは記憶」

Etude (21)「リヨンからの便りー時間とは記憶」

[執筆日: 令和3年3月30日]

 昨日、アフリカからフランスに転勤した、元同僚から近況を知らせるメールが届いておりました。勤務地は、遠藤周作がかつて留学していたリヨンの町。リヨンは、1996年でしたか、リヨン・サミットが開催された地で、私は東京から外国人プレス対応のため、一足先に、H外務報道官とともパリに先乗りし、パリの外国特派員との会食(ギイ・サヴォワというミシュラン三星レストラン等で)など

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Etude (20)「利他を考える」

Etude (20)「利他を考える」

[執筆日 : 令和3年3月29日]

 昨日は、久しぶりに恵比寿の職場の元同僚から、4月から、観光・ガイドの授業で、西洋の講座を週一回受け持つ仕事が見つかったと、嬉しそうに連絡がありました。しかし、ヨーロッパに住んだこともない彼がヨーロッパの歴史、文化・観光的な事を語ることが果たして出来るか、大丈夫かと思いながら、そういう仕事なら私もできそうなので、特別講義で講師で招待してくださいと、期待せずのお

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Etude (19)「真の孤独を知るために」

Etude (19)「真の孤独を知るために」

[執筆日 : 令和3年3月28日]

「教育の最高目的は、天才を養成する事である。世界の歴史に意義あらしむる人間を作ることである。それから第二の目的は、かかる人生の支配者に服従し、かつ尊敬する事を天職とする、健全なる民衆を育てる事である。(中略)教育の真の目的は、「人間」を作ることである。決して、学者や、技師や、事務家や、商人や、農夫や、官吏などを作ることではない。」

「人には誰しも能不能のある

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Etude (18)「時間の力」

Etude (18)「時間の力」

[執筆日 : 令和3年3月27日]

 老子という人は、生没年不詳で、実際存在した人であるのかよく分からないのですが、「道徳経」(これを「老子」という)を著し、「論語」では孔子に礼の道を悟る賢人としても登場します。「道徳経」は、「無為にして為さざるなし」という道家の思想綱領がほど尽くされている書として、後代に対する影響が大きい書であると、ブリタニカ国際百科辞典に説明があります。
 しかしながら、老

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Etude (17)「他人を理解することよりも、自分を理解することが遥かに難しい」

Etude (17)「他人を理解することよりも、自分を理解することが遥かに難しい」

[執筆日 : 令和3年3月25日]

「他人を理解するには、豊かな想像力がいるのに、今の日本には、そんな教育はない」
       イーデス・ハンソン(1988年8月31日朝日新聞「天声人語」)


 呉兢の「貞観政要」の続きと申しますか、最後でございます。先に、人物鑑定法なることを書きましたが、側近№1の魏徴が太宗から乱世の後の泰平の時代に、賢人の人材登用をはかる上で、自己推薦制を採用しよう

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Etude (16)「人物鑑定法」

Etude (16)「人物鑑定法」

[執筆日 : 令和3年3月22日]

 今日もいい天気のせいか、桜を愛でる人の何と多いことか。宴会はないけれども、人出は凄い。屋形船も満員御礼のような状態。桜の写真を撮る人も多いけれども、私は写真を撮るよりも、よく眺めた方がいいと思うのですが、冥土の土産なのかわかりませんが、でも、冥土では確かスマホは使えないと聞きましたが。
 長野の仙人は、老子のような生き方をして、得意な絵の写真や、とれたての旬

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Etude (15)「処世術は理性的で、合理的なものなのだろうか」

Etude (15)「処世術は理性的で、合理的なものなのだろうか」



[執筆日 : 令和3年3月23日]

 世の中捨てる神もいれば、拾ってくれる神もいるというか、やはり友達は有り難いものです。齢を取るというのは、友達がいても、なかなかそう簡単には会えなくなるということでもありましょう。昨日から吉村昭の「遠い日の戦争」を読んでいますが、敗戦間近の頃、日本軍が捕虜として捕らえていた米軍パイロット等(40名前後)を斬首して殺害したことがありましたが、その事件に係る話

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Etude (14)「人間はまだまだ科学では解き明かされない未知なる存在」

Etude (14)「人間はまだまだ科学では解き明かされない未知なる存在」

[執筆日 : 令和3年3月22日]

 昨日から今日にかけて、沢山の方からメールを頂戴しまして(多くは海外からのもので、英国在住の同僚のコロナ・ワクチンを打った話なども)、その返信と追加の発信で嬉しい悲鳴を挙げておりましたが、御紹介した内容は沢山あるのですが、今日は、その中で、絵画・音楽に関してのお話と、人間の行動に関しての興味深いお話を御紹介しながら、人間を考えたいと思います。
 あ、その前に

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Etude (13)「芸術家と人間性」

Etude (13)「芸術家と人間性」

[執筆日 : 令和3年3月21日]

井上ひさし(1934−2010)という作家がおりましたが、小説、戯曲、随筆、そして、テレビ、ラジオでも活躍し、多くの文学賞を受賞し、日本ペンクラブ会長なども務め、また様々な社会活動もされた、マルチ的な作家でありました。井上さんは、文化学院の講師もなさっていたようですが、国語学者も顔負けする程に日本語に対しての造詣があった人と言われ、私は彼の書いた文章に関しての

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Etude (12)「絵画の鑑賞の仕方とは」

Etude (12)「絵画の鑑賞の仕方とは」

[執筆日 : 令和3年3月20日]

「知識の差異こそが、民主主義社会で正当化されるただ一つの個人差であるから、個人はその差異を追求する形の他に向上の可能性を持たなくなる」
加藤尚武(1988年「文藝春秋」8月号「社会の停滞を招く民主主義の落とし穴」)

 人と人との違いは知識の差、というのはなんとも淋しい話ですが、令和は、まさにそうした時代であるかもしれません。が、しかし、デジタル世界では、知識

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Etude (11)「理想人とは、実現不可能なことに賭ける人」

Etude (11)「理想人とは、実現不可能なことに賭ける人」

[執筆日 : 令和3年3月19日]

 ゴッホの弟テロに宛てた手紙を基に「ゴッホの手紙」を描いた小林秀雄は、後に発刊された「近代絵画」でもゴッホを取り上げています(ゴッホの他には、詩人のボードレール、モネ、セザンヌ、ゴーギャン、ルノワール、ドガ、そしてピカソを扱っています。)。小林は、ゴッホの手紙を「没我のうちになされた告白文学」のように捉え、彼は、

「何んと告白好きが、気楽に自分を発見し、自分

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Etude (10)「無意識を意識すると世界が変わる」

Etude (10)「無意識を意識すると世界が変わる」

[執筆日 : 令和3年3月18日]

「人間の謎とは一体何んであろうか。それは次第に難しくなるものとなる。齢をとればとるほど、複雑なものとして感じられて来る。そして、いよいよ裸な、生き生きとしたものになって来る。」
       サント・ブウヴ(小林秀雄「ゴッホの手紙」の巻頭引用文) 

 以前、ある会社の方からカレンダーを頂いたのですが、そのカレンダーは藤城清治さんという方の作品を使ったカレンダ

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Etude (9)「どうやら巴里、仏蘭西は行く価値はありそうだ」

Etude (9)「どうやら巴里、仏蘭西は行く価値はありそうだ」

[執筆日 : 令和3年3月17日]

以前、「令和の徒然」でご案内した、木村尚三郎(1930-2006)さんの「パリ」(文春文庫)で挙げた、世界都市の要件を3つ、覚えておいででしょうか。

(1)一人ひとりがみな違う存在であるということを前提として、世界中の人々が、国籍、民族、肌の色などの点で別け隔てのない意識を持たずに住み合っていること、
(2)絶えず大きな知的エネルギーが都市から噴出し、様々な

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Etude (8)「言語なくして、人と人との交歓はない」

Etude (8)「言語なくして、人と人との交歓はない」

[執筆日 : 令和3年3月16日]

「言語都市・パリ 1862-1945」は、読む前には、フランス人が如何に言語を大切していて、フランス語を世界で最も美しい言語だと誇りにしていて、そして、パリが如何に素晴らしい国際的な都市であって、その華の都に憧れた日本人たちがそれぞれの夢を叶え、日仏の間には、アンドレ・マルローが思い描いた「西欧と東洋の融合」的出逢いがあって、前途洋々なる関係を築いた先人たちを

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