雨奈川ひるる | 短編小説

毎日1200字程度の短編小説を投稿しています。ちょっとした時間に、さっと読める物語をお…

雨奈川ひるる | 短編小説

毎日1200字程度の短編小説を投稿しています。ちょっとした時間に、さっと読める物語をお届けします。こんな恋愛したい、こんな日常を過ごしたいなど、心温まる小説を投稿しています。いつもの日常に、少しの非日常をお届けします。

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    滅びた国で楽しく暮らすダンとジュンのお話し。

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    夢の中で喋るウサギとの不思議な出会いの物語です。

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  • 短編小説「BEAST NOON」シリーズ

  • 小説 「少年シリーズ」

    書いた小説の頑張る少年の話をまとめました。

記事一覧

短編小説 「コスプレ」

エミリーは、18歳の普通の高校生だった。友達と笑い合い、試験に追われ、時には将来について漠然とした不安を抱くこともあった。しかし、エミリーにはひとつ、誰にも言えな…

短編小説 「カメラ」

ジェムは政治家の汚職を暴くことに人生を賭けていた。正義感が人一倍強い彼は、23歳にしてフリーの政治記者として活動しており、昼も夜もなく汚職事件の証拠を追いかけてい…

短編小説 「ショートケーキのイチゴ」

イチゴは、自分の役割に少し不満を抱えていた。ショートケーキの上に乗ること、それが彼の定められた運命だった。しかし、イチゴはただの添え物として見られることに、心の…

短編小説 「ファイト!」

ホメルンは小さな存在だった。とある人の体内に潜むその姿は、見た目は小さな火の玉のようで、暖かな光を放っている。彼の仕事は、その人を褒め、励まし、やる気を引き出す…

短編小説 「グリン・グリン・グリン」

森の片隅に、ひっそりと暮らしている緑の小さな怪物がいた。その名はグリン。彼の体はこけむした岩のように緑で、森の木々に溶け込む姿は、自然の一部のようだった。彼は昼…

短編小説 「タルト・タン」

ケーキ屋のショーケースの隅に、タルト・タンはじっとしていた。彼はチョコレートとタルト生地でできた、控えめだが確かな味わいを持つデザート。しかし、その日はもう何日…

短編小説 「マジックバス」

夜の帳が降りる頃、薄暗い棚の奥で、ハーベスは心の中で静かに祈っていた。「食べられたくない……」その祈りは、小さな声で、しかし確かな願いだった。ハーベスは一箱215…

短編小説 「夏休みの海」

夏休みも終盤に差し掛かった8月のある日。高校生のハルキはエアコンが効いた部屋で、ひたすらスマホをいじっていた。画面をスクロールする指先には、何の感情もこもってい…

短編小説 「暑い日」

夏の日差しがじりじりとアスファルトを焼きつけ、空気が揺らめくような暑さが街を包んでいた。セミの鳴き声が耳に響き、風はまるで熱い息吹を吹き込むように頬を撫でる。そ…

短編小説 「休日の台風」

高校生のモヨコは、朝から窓の外を眺めながら、ニヤリと笑っていた。天気予報通り、台風が接近している。空は灰色に染まり、風が木々を揺らしていた。学校は台風の影響で休…

短編小説 「恋の夢」

ユメヒサは、高校二年生の普通の男の子だ。特別に目立つわけでもなく、ただ毎日を過ごしているだけの彼だが、ある日、変化が訪れた。 その日、ユメヒサは不思議な夢を見た…

短編小説 「恋のもめごと」

ユメは、オフィスのカフェスペースで、ゆっくりとコーヒーを飲みながら、心の中で沸き上がる怒りを押し殺していた。彼女の視線は、窓の外に広がる都会の景色をぼんやりと追…

短編小説 「波間に消えた恋」

ユウナは、静かな波の音に耳を傾けながら、桟橋の先に立っていた。夕陽が水平線に沈みかけ、空はオレンジ色に染まっていた。海風がそっと髪を撫で、心地よい涼しさをもたら…

短編小説 「恋の桟橋」

桟橋に立つと、波の音がやさしく足元をくすぐり、遠くの海面が夕陽に染まっていた。ユメコはその光景を見つめながら、胸の奥に残るあの夏の日の記憶をたぐり寄せた。高校三…

短編小説 「夏の光」

夏の夜は、静寂に包まれている。風がほとんど吹かず、ただ木々がささやくような音だけが聞こえる。ユカリはその静けさの中で一人、庭の古いベンチに腰を下ろしていた。彼女…

短編小説 「夏が終わり」

夏休みも終盤に差し掛かると、日差しが少しずつ和らぎ、空が夕暮れに染まるのが早くなった。ユマは、そのことに気づかないふりをしていた。まだ夏が終わるなんて信じたくな…

短編小説 「コスプレ」

短編小説 「コスプレ」

エミリーは、18歳の普通の高校生だった。友達と笑い合い、試験に追われ、時には将来について漠然とした不安を抱くこともあった。しかし、エミリーにはひとつ、誰にも言えない秘密があった。

彼女はスーパーヒーローに憧れ、夜になると自らが考えたヒーローの姿に変身して街を守るという夢を抱いていたのだ。

その夜、エミリーはいつものように部屋の片隅に隠していたコスチュームを取り出した。赤い目出し帽に目から下を切

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短編小説 「カメラ」

短編小説 「カメラ」

ジェムは政治家の汚職を暴くことに人生を賭けていた。正義感が人一倍強い彼は、23歳にしてフリーの政治記者として活動しており、昼も夜もなく汚職事件の証拠を追いかけていた。その日も、彼はある汚職政治家を追いかけ、会員制レストランの近くで張り込んでいた。

ジェムはカメラを構え、息を潜めながら目当ての政治家が現れるのを待っていた。心臓が鼓動を速めるたびに、彼の手は少し震えた。しかし、そんなことに構っている

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短編小説 「ショートケーキのイチゴ」

短編小説 「ショートケーキのイチゴ」

イチゴは、自分の役割に少し不満を抱えていた。ショートケーキの上に乗ること、それが彼の定められた運命だった。しかし、イチゴはただの添え物として見られることに、心の奥底で不満を感じていた。真っ白なクリームの上に赤い輝きを放つ自分自身を、誰もがただの飾りとしか見ていないことが、どうにも納得がいかなかったのだ。

「僕だって、もっと特別な存在になりたい」と、イチゴはある日、ショートケーキの上から飛び降りる

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短編小説 「ファイト!」

短編小説 「ファイト!」

ホメルンは小さな存在だった。とある人の体内に潜むその姿は、見た目は小さな火の玉のようで、暖かな光を放っている。彼の仕事は、その人を褒め、励まし、やる気を引き出すこと。そうすることで、体内からエネルギーを送り込み、元気づけるのがホメルンの使命だった。

その人——アキラは、今日も目覚ましの音で起きたが、布団の中で重い気持ちに押しつぶされそうだった。疲れが溜まっているのか、心の奥底に何かが引っかかって

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短編小説 「グリン・グリン・グリン」

短編小説 「グリン・グリン・グリン」

森の片隅に、ひっそりと暮らしている緑の小さな怪物がいた。その名はグリン。彼の体はこけむした岩のように緑で、森の木々に溶け込む姿は、自然の一部のようだった。彼は昼間、森の奥で眠り、明け方になると、空から降ってくる生肉を待っていた。

毎日、同じ場所に決まって降りてくる肉。それをグリンは楽しみにしていた。ふわりと漂う朝露の香りと、夜明けの薄明かりが交じり合う時間が、彼にとって至福のひとときだった。グリ

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短編小説 「タルト・タン」

短編小説 「タルト・タン」

ケーキ屋のショーケースの隅に、タルト・タンはじっとしていた。彼はチョコレートとタルト生地でできた、控えめだが確かな味わいを持つデザート。しかし、その日はもう何日も、誰一人として彼に目を留めることはなかった。

店内の照明が柔らかくケーキたちを照らす中、クリームがたっぷり乗ったショートケーキや、鮮やかな色のマカロンたちが次々と売れていく。その賑やかな光景を見ながら、タルト・タンは自分が忘れ去られた存

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短編小説 「マジックバス」

短編小説 「マジックバス」

夜の帳が降りる頃、薄暗い棚の奥で、ハーベスは心の中で静かに祈っていた。「食べられたくない……」その祈りは、小さな声で、しかし確かな願いだった。ハーベスは一箱215円で売られているクッキーの一枚。他のクッキーたちは、人間の手に渡り、食べられる運命を受け入れていたが、ハーベスだけは違った。甘い香りとサクサクとした食感を持つ自分が、ただ消費されるだけの存在であることに耐えられなかったのだ。

真夜中にな

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短編小説 「夏休みの海」

短編小説 「夏休みの海」

夏休みも終盤に差し掛かった8月のある日。高校生のハルキはエアコンが効いた部屋で、ひたすらスマホをいじっていた。画面をスクロールする指先には、何の感情もこもっていない。夏の初めには「何かやるぞ」と意気込んでいたはずなのに、結局何も成し遂げられず、ただ時間だけが過ぎていった。

部屋の窓からは、夏の陽射しが差し込んでいるが、カーテンは閉ざされたままだ。エアコンの音が静かに部屋を支配し、外の暑さを忘れさ

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短編小説 「暑い日」

短編小説 「暑い日」

夏の日差しがじりじりとアスファルトを焼きつけ、空気が揺らめくような暑さが街を包んでいた。セミの鳴き声が耳に響き、風はまるで熱い息吹を吹き込むように頬を撫でる。そんな中、ミヨミは学校帰りに近所のコンビニで買ったアイスを片手に、家の縁側に腰を下ろしていた。

アイスはミヨミのお気に入りのフレーバー、濃厚なバニラ味が口の中で溶けると、ほんの少しだけ暑さが和らいだように感じられる。ミヨミはふぅっと一息つい

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短編小説 「休日の台風」

短編小説 「休日の台風」

高校生のモヨコは、朝から窓の外を眺めながら、ニヤリと笑っていた。天気予報通り、台風が接近している。空は灰色に染まり、風が木々を揺らしていた。学校は台風の影響で休校になり、モヨコはその知らせを受けると、ベッドに飛び込んで歓喜の声を上げた。

「今日は一日、のんびりできる!」

普段は学校や部活で忙しいモヨコにとって、こうした「突然の休暇」は何よりも嬉しいプレゼントだ。枕を抱えてゴロゴロとベッドの上で

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短編小説 「恋の夢」

短編小説 「恋の夢」

ユメヒサは、高校二年生の普通の男の子だ。特別に目立つわけでもなく、ただ毎日を過ごしているだけの彼だが、ある日、変化が訪れた。

その日、ユメヒサは不思議な夢を見た。夢の中で、彼は学校の校庭で可愛い女の子と手をつないで歩いていた。顔立ちが柔らかで、笑顔が眩しいその子は、彼の隣で無邪気に笑っていた。二人は、桜の花びらが舞い散る中を歩きながら、お互いのことを話し合い、笑い合った。ユメヒサの心は温かさで満

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短編小説 「恋のもめごと」

短編小説 「恋のもめごと」

ユメは、オフィスのカフェスペースで、ゆっくりとコーヒーを飲みながら、心の中で沸き上がる怒りを押し殺していた。彼女の視線は、窓の外に広がる都会の景色をぼんやりと追いかけていたが、心はここにはなかった。

先輩のミズキと交際を始めたのは、半年前のことだ。穏やかで頼りがいのある彼に惹かれ、自然と距離が縮まっていった。ミズキは職場でも評判の良い人だったし、ユメにとっては理想の相手に思えた。しかし、最近にな

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短編小説 「波間に消えた恋」

短編小説 「波間に消えた恋」

ユウナは、静かな波の音に耳を傾けながら、桟橋の先に立っていた。夕陽が水平線に沈みかけ、空はオレンジ色に染まっていた。海風がそっと髪を撫で、心地よい涼しさをもたらす。その風が、まるで遠い記憶を呼び起こすように、彼女の心に触れていた。

桟橋に立つと、いつも思い出すのは、あの夏の夜のことだった。ユウナは、高校最後の夏休み、友達と一緒にこの桟橋に来た。その時、彼も一緒だった。幼なじみであり、ずっと気にな

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短編小説 「恋の桟橋」

短編小説 「恋の桟橋」

桟橋に立つと、波の音がやさしく足元をくすぐり、遠くの海面が夕陽に染まっていた。ユメコはその光景を見つめながら、胸の奥に残るあの夏の日の記憶をたぐり寄せた。高校三年の夏、ここで感じた胸の高鳴りと、今も変わらない後悔の気持ちが、彼女の心を支配していた。

あの日も今日のように、空は青く澄み渡り、海風が心地よく吹いていた。ユメコは、心の中でひそかに想っていたカズキと一緒にこの桟橋に立っていた。何度も話し

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短編小説 「夏の光」

短編小説 「夏の光」

夏の夜は、静寂に包まれている。風がほとんど吹かず、ただ木々がささやくような音だけが聞こえる。ユカリはその静けさの中で一人、庭の古いベンチに腰を下ろしていた。彼女の手には、父親から譲り受けた年代物の天体望遠鏡が握られている。

夜空は、まるで無限に広がるキャンバスのように星々で埋め尽くされていた。ユカリは何度もこの景色を見てきたはずなのに、毎回新鮮な感動を覚える。それは彼女にとって、現実の喧騒から逃

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短編小説 「夏が終わり」

短編小説 「夏が終わり」

夏休みも終盤に差し掛かると、日差しが少しずつ和らぎ、空が夕暮れに染まるのが早くなった。ユマは、そのことに気づかないふりをしていた。まだ夏が終わるなんて信じたくない、そんな気持ちを胸に秘めながら、彼女は最後の思い出を作るために走り回っていた。

高校最後の夏休み。ユマは、この夏を全力で楽しむことを決めていた。友達とプールに出かけ、キラキラと輝く水面に飛び込む感覚が忘れられない。海にも行き、波と戯れな

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