雨奈川ひるる | 短編小説

こんにちは、2022年11月11日から小説家デビューし、毎日1200字程度の短編小説を…

雨奈川ひるる | 短編小説

こんにちは、2022年11月11日から小説家デビューし、毎日1200字程度の短編小説を投稿しています。ちょっとした時間に、さっと読める物語をお届けします。こんな恋愛したい、こんな日常を過ごしたいなど、心温まる小説を投稿しています。いつもの日常に、少しの非日常をお届けします。

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恋愛短編小説 「好きって言ってほしかった」

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提灯の灯りに照らされた、あなたの横顔を見ていると頬が熱くなっていく。

ドン、ドン、ドクン、ドン……。遠くで太鼓の音が響いている。あなたの顔をもう少しちゃんと見たい。あなたが見せてくれるのは横顔だけ……。「こっちを向いて少しでいいから」と心の中で手を合わせた。

ドォーン、ドドォーン。大きな音と共にあなたが私の方を向いた。「願いが叶った」そんなことを思いながら、青く照らされたあなたの顔を見つめた。

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始業時間五分前、同僚のナガタと一緒にエレベーターに乗り込むという小さな日常が、私にとっては何よりの贅沢だった。私は後ろから彼を眺めながら、密かな恋心を抱え、彼とのわずかな時間を心の中で噛みしめている。

ナガタは、私たちが働く会社の中でも特に目立つ存在ではない、少しダメな方かもしれない。彼は派手さはないけれど、その穏やかな物腰と、時折見せる控えめな笑顔が私の心を惹きつけてやまない。彼はきっと、他の

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短編小説 「未発掘の本」

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ある日、僕はいつものように図書館に足を運んだ。図書館は僕にとって、静かで落ち着ける場所だ。ここでは、誰もが読書に没頭している。その静けさが、僕の日常に平和をもたらしてくれる。

目的は少し変わっている、もちろんそれは本を借りることである。普段は人気のある新刊や話題の作品を手に取ることが多いが、今日は違う。誰も借りたことのない本、つまり「未発掘の本」を読んでみたいと思った。それが最近の僕の小さな趣味

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短編小説 「タコのこころ」

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今日の晩飯はアオリイカ。これで三十二食目だ。まだ足りない、もっとイカを食べなくちゃ。

誰しも夢を持っている。子供の頃からの夢、大人になってからの夢。しかし、僕の夢は少し変わっている。僕はタコ。名前はボブ。しかし、ずっとイカになりたいと思っている。その夢を叶えるためには、イカを食べるしかない。

ある日、イカを捕えた時、七色に光るイカが僕の前を通り過ぎた。「いくらイカを食べても君は所詮タコだ」と七

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その日は、夜空に星々が輝いていた。

自宅のベランダで寝転びながら空を眺めていると、一際輝く青い星を見つけた。ふと、心の中に潜んでいた遠い記憶が呼び起こされる。あの夏の日、僕と彼女が星空の下で交わした約束を。

星が降りそそぐ夏の夜、遠くには蝉の声が響いていた。僕たちは河川敷のベンチに座り、空に広がる無数の星を見上げていた。「青い星に願いをかけると叶うんだって」と彼女が言った。その言葉に心躍らせな

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その日は、夕焼けの空に大きな虹がかかっていた。

島根の実家の屋根裏部屋で高校時代の卒業アルバムや教科書、主に映画クラブの衣装やセットを整理している時、小さな丸窓から虹は見えた。その虹の輝きが、何か古い記憶の箱を開けたかのように、僕の心に静かに照らしていた。それはまるで、通りすぎた過去を引き戻すように、あの日の彼女との思い出が目の前に現れてくるようだった。

彼女との出会いは、高校時代にさかのぼる

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短編小説 「アタマのコブ」

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『妹の心』(十一ページ)より

二〇一五年四月十日、高校一年生の高村アキラは、クラスの女子生徒、岡田ミソラに恋心を抱いた。ミソラはその美しさで学校中の注目の的であった。それはアキラも例外ではなく、小中学時代からバレンタインのチョコを同級生のみならず上級生や下級生からいくつも貰うほどだった。しかし、アキラの頭、より正確に書くとすれば、彼の後頭部に生きる『妹』によって彼が恋愛をすることは強く反対され

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短編小説 「垂れ耳ウサギ」

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茶色いウサギのアーロンは、子供の頃は何かと他のウサギをいじめて毎日を送っていた。

特に、彼の目にはいつも黒い垂れ耳のウサギ、エリーが気になっていた。子供心にエリーの耳が普通ではないことを面白がり、他のウサギたちと共に彼女をいじめたものだ。

しかし大人になったいまは、アーロンはその行動を深く後悔していた。エリーに対しては特に、なぜあんなことをしたのかと自問自答の日々を送っていた。

ある日、アー

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短編小説 「はるか彼方の銀河系」

短編小説 「はるか彼方の銀河系」

星名高校の午前中最後の授業が終わると、二年C組の教室は日曜日のショッピングモールのように賑わっていた。窓際に座るセイナはデススターのリュックからミレニアムファルコン柄の風呂敷に包まれたお弁当を取り出した。

風呂敷をそっと開くと、C-3POの形をした弁当箱とライトセーバーの箸入れが現れた。彼女は高校で一、二を争うほど「スターウォーズ」オタクとして名を馳せていた。しかしそれは「エピソードⅣ/新たなる

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高校の一日の授業終わり、高校の玄関から見える景色は、大粒の雨に覆われていた。わたしは下駄箱の隅に座り、ぼんやりと雨を眺めていた。傘を忘れてしまったので、雨が止むのを待っているしかなかった。

そんなとき、クラスメイトのケイタが鼻歌を歌いながらやって来た。なにを歌っているかすぐにわかった。ビートルズの「レット・イット・ビー」だ。彼が歌うのはビートルズかビリージョエルの「アップタウンガール」の二曲のみ

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六月二六日、高校の帰り道に、一ヶ月後の河川敷で開催される花火大会について、わたしは好きな人を誘うべきか考えていた。

「好きな人を誘うべき」と友達は言うけれど、わたしは断られることを恐れていた。好きな人、それは、カズヤ、もの静かで目立たない存在だけど、わたしには魅力的に見えるかっこいい人。わたしにとっては、話しかけるだけで一苦労の存在だ。

七月十五日、わたしと妹は花火大会のために浴衣を選んでいた

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授業が終わった後のひと時は、僕にとってほっと一息つける時間だ。高校二年生の僕は、季節を問わずいつも長袖を着ている。日焼けが嫌いだからだ。そんな僕が、靴に履き替えて帰ろうとしたとき、女の子の声が聞こえた。

「帰るの?」声の主はアヤカ。彼女はクラスでも目立つ存在で、いつも元気で明るい。その日も制服を腰に巻き、Yシャツの袖をまくり上げて、まるで夏が来たかのように爽やかだった。

「うん、もう帰るよ。で

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ようやく高校の授業が終わった。下駄箱で靴に履き替えていた僕は、ふと隅で外を見つめているヒヨを見かけた。彼女はいつも静かで、クラスではあまり目立たない存在だった。僕もだが。ヒヨには何か秘密を抱えているような、不思議な雰囲気があった。

「雨、降るよ」とヒヨが静かに言った。その言葉が耳に入るか入らないかのうちに、突然、空が暗くなり、土砂降りの雨が降り始めた。まるで彼女が呼び寄せたかのようだった。

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恋愛短編小説 「余計な一言は命取り」

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「余計な一言が多い」と彼女に言われフラれた。それからというもの、何がそんなに悪かったのかよくわからない。

まあ、確かに、僕はハッキリと物を言うタイプだ。例えば彼女が「私、太ったかな?」と聞いてきたとき、正直に「うん、ちょっとね」と答えたことがあった。でも、そんなの悪意があってのことじゃない。正直なだけだ。だけど、彼女はそんな僕の言葉をいつもよく思っていなかったみたいだ。

「あなたは他人の気持ち

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桜が咲けば、梅は散る。

恋も同じだった。

誰かが恋をすれば、失恋する者もいた。そんな春の日のことだ。

「やっぱり、桜はいいなぁ」と、僕は満開の桜の木の下でため息をついた。隣には、長年の友人であるユウが座っていた。彼女はいつものように、照れくさそうに笑っていた。

「でも、梅の花もきれいだよ。桜ばかりが注目されるけど、梅が散ってから桜が咲くんだから、梅も大事だよね」とユウは言った。

「そうだ

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赤ずきんが誕生するちょっと前のお話し。

オオカミは赤ずきんに昔話しをしていました。

オオカミの俺は、森のなかの木の影から、森に入ってくる赤いエプロンをした若い女に目を奪われていた。

人間のことなど、いつもは食料か脅威としか見ていなかったが、彼女は違った。彼女の足取りは軽やかで、その笑顔が森全体を明るく照らしているようだった。少しでも長く彼女の姿を眺めたくて、こっそりと後をつけた。

彼女がキ

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