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短編小説 「恋のもめごと」


ユメは、オフィスのカフェスペースで、ゆっくりとコーヒーを飲みながら、心の中で沸き上がる怒りを押し殺していた。彼女の視線は、窓の外に広がる都会の景色をぼんやりと追いかけていたが、心はここにはなかった。

先輩のミズキと交際を始めたのは、半年前のことだ。穏やかで頼りがいのある彼に惹かれ、自然と距離が縮まっていった。ミズキは職場でも評判の良い人だったし、ユメにとっては理想の相手に思えた。しかし、最近になってミズキの態度に違和感を感じ始めたのだ。

「なんだか、冷たくなったよね……」ユメはそう思いつつも、直接問い詰める勇気はなかった。曖昧な態度をとられ続けるうちに、不安は次第に募っていった。

そんなある日、ユメはオフィスの廊下で、ふと耳に入った噂話を聞いてしまった。「ミズキさんって、ユメさんの後輩のアヤカちゃんと一緒にいるの見かけたよ。すごく親しそうだったよね」その一言が、ユメの胸に深く突き刺さった。

「ああ、やっぱり……」心の中でつぶやくと同時に、怒りと悲しみが湧き上がってきた。ミズキとアヤカが仲良くしている場面を想像するだけで、胸が苦しくなった。

その日、ユメは仕事が手につかず、定時になるとすぐに席を立った。会社の玄関を出ると、夜風が肌に心地よく感じられたが、心の中の嵐は収まることを知らなかった。

次の日、ユメは意を決してミズキをランチに誘った。二人きりで話をしたかったのだ。いつも通りの笑顔を見せるミズキに、ユメはまっすぐに問いかけた。「ねぇ、ミズキさん、私たち、どうなってるの?」

ミズキは一瞬、驚いたような顔をしたが、すぐにその顔は曇り、答えをはぐらかそうとした。「いや、別に変わってないと思うけど……」その言葉を聞いて、ユメの中の何かがプツリと切れた。

「アヤカと浮気してるんでしょ?」彼女の声は震えていたが、言葉は鋭く、ミズキの胸に突き刺さった。

「ごめん」ミズキはうつむき、ようやく真実を告白した。その言葉を聞いた瞬間、ユメは迷わず立ち上がり、ミズキの玉を思い切り蹴り上げた。彼はうめき声を上げてうずくまった。

「もう、あなたなんかに時間を無駄にするつもりはないわ!」ユメはそう言い放ち、怒りに震えながらその場を去った。

その日の午後、ユメは会社を辞める決意をした。彼女はすぐに退職願を書き上げ、上司の机に置いてオフィスを後にした。再び都会の街並みを見渡しながら、ユメは新しい人生の始まりを感じていた。

「さぁ、次はどんな恋が待っているのかな?」そうつぶやくと、ユメは笑顔を浮かべながら歩き出した。彼女の未来には、まだ多くの可能性が広がっているのだ。





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