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短歌(和歌)と散文

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#私の作品紹介

【和歌】鈍色の秋の海には

【和歌】鈍色の秋の海には

生まれ落ちたその瞬間から、生きることが日々魂を殺され続けることであったような人間は、いったいどうすれば救われるのだろう… 。

否定されて生い立ち、間違った医療を施され、自分の人生を得られないうちにすでに、取り返しのつかない、あまりに多くのものを奪われてしまった。本当に生きることができないうちに老いてしまった、というチャタレー夫人コンスタンスの嘆きは、私自身の最も受け入れることのできない無念と不本

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小さいけれど大切なお知らせ

小さいけれど大切なお知らせ

『Art of Life I: 生きるための遺書』と題した私の文学作品の第一部が完結に近づいています。これまでは完成したところまでを無料記事として公開して来ましたが、第一部の完結という一つの節目を迎えるにあたり、今後適当な時期に全編を有料化する予定です。

本作品は、芸術家として、人間として、私が生きられるためには是が非でも書き上げ、世に訴えなければならない作品の一つです。これまで執筆を続けなが

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【短歌】令和5年春の自撰

【短歌】令和5年春の自撰

主に先月と今月詠んだ歌をまとめました。

単純にこの期間に作った歌を集めたもので、形式的にも内容的にも、何らかの統一性を持たせようとはしていません。現代語で詠んだものもあれば、古語で詠んだものもあります。内容も本当に、本当に様々です。

実際は昨年詠んだ秋の歌も入っています。その歌を詠んだ当時と同じ気持ちを再び痛切に経験することが今春にもあったため、あえて再びここに取り上げました。性愛を題材とした

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【短歌】連作「親友」―F1カーとバン―

【短歌】連作「親友」―F1カーとバン―

連作「親友」

中学高校時代に出会い、卒業後もずっと特別に大切な存在だった友だちとのことを詠みました。掛け替えのない思い出と、そのあとに起きた、信じられないような出来事と。

全13首です。

ふたりして通った劇場放課後の舞台に見つめたそれぞれの夢

一人だけ白のニットで浮く君と並んで聴いたX JAPAN

「五十嵐はF1カーさ。俺はバン」すべてを失くした俺に笑って

君にしか言えないだから打ち

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【短歌と俳句】初夏の東北を旅して―十四歳の思い出―

【短歌と俳句】初夏の東北を旅して―十四歳の思い出―

湖畔にてかすむ対岸にらみつつ朝もやの中われ逍遥す

車窓より見ゆる人影田植え人

中学三年生のとき、修学旅行で東北地方を訪れた際の作品です。私が通っていた学校は都内の大変喧噪な場所にありました。毎日、地下鉄の轟音と車の排ガスとにさらされて通学していた私には、初めて旅する東北地方の初夏の空気は実に涼しく、さわやかでした。

湖というのは十和田湖のこと。すぐ近くのホテルに宿泊していました。朝起きて、

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【短歌】連作「生きたいのに」

【短歌】連作「生きたいのに」

生きたいのにいつだつて壊れてくれと願つてた家庭という透明の牢獄

何もかも呪いのようなものばかり結婚家庭倫理道徳

親という悪魔も知らず恵まれたあなたの正義を押し付けないで

地獄だと擦り込まれて来た世の中で生きる手立てが見つけられない

生きたいと必死で踏み出す人の世に悪魔の顔がいつも重なる

補遺透明な家庭という名の牢獄で起こったことを誰も知らない

家庭など無くなれとずっと願ってた私に説くか

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【短歌】自撰三首―迷いない心のつばさで―

【短歌】自撰三首―迷いない心のつばさで―

あふれ出る言葉は泪泣くことのできない私の胸の奥より 題詠:「短歌」

否ばれて生ひ立てる身に消たれざる光ぞありて吾を生かしむ
歌意:否定されて生い立った私の中に、何ものによっても決して消されることのない光があり、それこそが私を生かしている

迷いない心のつばさで翔んでゆく私の空はどこまでも澄む

第一首と第三首は近作です。共に私を代表する歌として特別な愛情を持っています。特に第三首については、も

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【今日の短歌】令和5年6月15日

【今日の短歌】令和5年6月15日

完璧な歌を詠んだらサヨウナラもう人間ではいられないから

お題として与えられた初句を用いて詠みました。

主に知性によって作ったという意味で、数学の歌(6月9日)やお姫様の歌(6月11日)と同じ系統に属するということができます。

完璧という概念について私の中に色濃く存在し続けている心象を端的に描くことを試みました。

日常生活の中で完璧という言葉を用いることは、私は基本的にしません。

【今日の短歌】令和5年6月21日

【今日の短歌】令和5年6月21日

あなたなら優しく教えてくれそうでふたりがちゃんと消える方法

どうしたらいいの私は慕わしい人は誰しも自殺ばかりで

いずれも技巧を用いて意識的に作ったものではなく、抱え続けた思いが心からそのまま歌となってあふれ出たような、自然に生まれた作品です。

第一首は、決して自暴自棄に陥った不健康な歌ではありません。絶望ではなく希望の、死ぬためではなく生きるための歌です。

これは、様々の意味で限りある

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【短歌】ぼくの泪を誰も知らない—令和6年春の自撰—

【短歌】ぼくの泪を誰も知らない—令和6年春の自撰—

奪われしもののあまりに多かりき盛りを知れず朽ちてゆく花

あたたかい手もほお寄せる肌もなく泪は枯れてため息ばかり

冷えきった氷の壁が厚過ぎて未だに浮上できないクジラ

ちょうど良い関わり方が分からない愛してもらえたことがないから

今日もまだ起き上がれない今日もまだ自殺はしないのと引き換えに

遺言が書き終わらないそれだけで死でない方に居続けてゐる

良い子でいなければ生きられなかったぼくの泪を

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