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新譜レビュー/Gareth Donkin『Welcome Home』

8月25日リリース。期待を大きく上まる、まさに快作でした。

主宰が初めて彼の音楽を耳にしたのは2021年、コロナ禍の最中でした。当時はMaster Soul Boyという名義で活動していた。本作にも通底するループ主体ながらモーダルとコーダルの間を揺蕩う「Catharsis」Stevie Wonderの面影が残る「Dreaming」、御堂筋の銀杏並木を吹き枯らすような風を感じられる「Autumnbreeze」。フェイバリットを挙げ始めると本当にキリがない。

細かな節回し、ブレスワークそして聴衆のみならず自分自身まで鼓舞するかのようなフェイクにはMichael Jacksonの強い影響を覚えました。残念ながらアルバム未収録とはなりましたがquickly quickly、The Breathing Effectとの共作「GEEK OUT!」も素晴らしい。注目株筆頭ですからこれから色々な場所でコラボレーションが聞けそう、今からワクワクが止まりません。

あんまりステレオタイプな物言いは考えものですが、しかし彼のような才能の発信地となれば十中八九英・ロンドンを疑うものであって。言わずもがなのマルチ奏者、12歳の頃にはピアノに腰掛けジャズを弾きつつ時折ドラムも嗜んでいたのだとか。高校時代には独学でDJプレイを習得、リーズ音楽大学に進学し音楽制作の学位を取得。天は二物も三物も四物も与えまくった。

信じられないくらいの低再生回数ですので、どうか皆様サブスクのみならずMVも一緒に回してこうな。初来日公演を実現してもらうための先制打です。映像で観てみるとなるほど、若かりし頃のTOTOボビー・キンボールに似てるような似てないような。ジャンル分け不可能なサウンドと映る最大の理由はズバリ「あらゆるジャンルを呑み込んで生み出された音楽」だからです。

本作で最も心を鷲掴みにされたのは「Tell Me Something」。Tom Mischにも見られる特徴かも分かりませんが、80s音楽特有の"ゲート・リバーブ"感と地下クラブから漏れ聞こえてくる残響感のミクスチャーというか。ウェットな質感の宅録、みたいな音場を作るのって意外と根気の要る作業で難しいんですよね。それをいとも容易くやってのける23歳、何物でも与えられる男。


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