丘本さちを

短編『脳みそとみみずくん』第五回新脈文芸賞を受賞。既刊本『往復書簡 傑作選』『続 往復…

丘本さちを

短編『脳みそとみみずくん』第五回新脈文芸賞を受賞。既刊本『往復書簡 傑作選』『続 往復書簡 傑作選』。購入はコチラ→ https://t.co/BQahVMProJ 会社経営者。 謎の団体 ケシュ ハモニウムのメンバー。https://note.mu/kesyuhamonium

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  • 奇妙な味のショートストーリーズ

    これまでに書いた掌編、短編、ショートショートをまとめています。奇妙な味の作品が多いです。

  • 午前中のエッセイ集

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  • 子育てのエッセイ

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  • 弟くんは自閉症

    自閉症の弟についてのエピソード集です。

記事一覧

【掌編小説】鉄塔の見える家 #2000字のホラー

夕暮れになると香奈恵は景色を眺める。 家の裏手にある窓の前で、つま先立ちになって、じっと時を過ごす。 そこから見える物は三つしかない。 空、山、そして鉄塔。 携帯の…

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【掌編小説】あいちゃんはネコがすき #2000字のホラー

あいちゃんはね、ネコがすきなの。 おうちでいっぱいかっているの。 ママもネコがすきだから、いつもひろってきてくれるの。 さわるとホワホワして、とってもきもちいいん…

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【掌編小説】カサンドラ #2000字のホラー

地を這うように低い走行音にまじって、心地よい女の声が聞こえる。 ──何か音楽をかけましょうか? 「ああ、落ち着いたやつを頼むよ」と私は答える。 リン、と小さな鈴…

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古書店の敷居は高い

近所に古書店があるのだけど、一回も足を踏み入れたことがない。 なぜか古書店への敷居は高い。 古書店の店主は、まさしく本のプロという気がする。 相応の目利きができな…

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【エッセイ】本に関するお小言

実家に一時避難していた蔵書が戻ってきました。 蔵書といっても段ボール箱にして12箱分。幅90cmの本棚2つに収まる量なので、本気の読書家の方からすると「なんだそんなも…

12

【エッセイ】大金を払って気疲れした話

8月31日、と聞いてもまったく憂鬱さを感じなくなって、ああ僕は大人になったんだなぁと思います。 もちろん学生を卒業したのは、ずいぶん昔の話。 でも20代くらいまでは、…

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猫と娘と点と線【エッセイ】

我が家には3名の小さな生き物がいる。 生後半年の娘。そしてオスメスのきょうだい猫。 ずっと一緒に暮らしているのだけど、この3名、ちょっと不思議な関係だった。 うちの…

6

何の意味もなく、死ぬほど疲れた話【エッセイ】

書いたら面白そうなネタはいくつか思い浮かんでいるんだけど、季節の変わり目のせいか、今日はいまいち疲れて元気がでてこないです。 だから「疲れた」ことについて書くこ…

4

ギャンブルは弱くていいです【エッセイ】

ギャンブルが弱いです。 ギャンブルに弱い、ではなく、ギャンブルが弱い。勝てません。 競馬、パチンコ、麻雀といった、いわゆる博打だけではなく、相手と何かを賭けて勝…

3

ウィスキーを飲んでいた頃の話【エッセイ】

最近ほどんど晩酌をしなくなりました。 タバコも吸わないし(随分前に止めた)、ギャンブルもやらないので(すごく弱い)、真っ当すぎて逆に大丈夫なのかと不安になってき…

4

タバコを吸っていた頃の話【エッセイ】

タバコを吸わなくなって10年は経ったと思う。 いつ止めたのかちゃんと覚えていないんだけど、東日本大震災の時には吸っていなかったと思う。いや怪しいな。でも2012年には…

4

奥さんからのミッション、父娘でお出かけ【エッセイ】

今日はじめて娘をベビーカーに乗せて遠出をしました。 遠出といっても吉祥寺まで電車で行ってきただけなんですけど。 特に吉祥寺に用事があったわけではなく、ただふらっ…

9

Midjourneyは生産か消費か

先日、話題のMidjourneyを使ってみた記事を書いたのですが、その後もサブスクリプションに申し込んでAIお絵描きを楽しんでいました。 ぼくは風景写真と人物ポートレートが…

20

風呂場で思考の散歩をする【エッセイ】

シャワーを浴びながら20分程度、あれこれ考えを巡らせる時間を作っています。 時事問題だったり、読んだ本の感想だったり、小説の筋立てを考えたり。 なんだか瞑想みたい…

5

本棚が本で埋まるわけ【エッセイ】

本棚が完成しました。 自分で組み立てるタイプの本棚だったのですが、1ヶ月放置してやっと今日、組み立てました。 組み立てるのに要した時間は20分。 この20分に取りかか…

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Midjourneyで美男美女を作って遊んでみました

昨夜、友人たちと飲みにいったのですが、その内の一人が最近話題のAIによる自動画像生成サービスMidjourneyをやっていたので、やり方を教えてもらいました。 Midjorneyは…

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【掌編小説】鉄塔の見える家 #2000字のホラー

【掌編小説】鉄塔の見える家 #2000字のホラー

夕暮れになると香奈恵は景色を眺める。
家の裏手にある窓の前で、つま先立ちになって、じっと時を過ごす。
そこから見える物は三つしかない。
空、山、そして鉄塔。
携帯の電波も届かないような限界集落の外れ。
壁まで歪んだボロボロの民家が、香奈恵と父親、二人の住まいだった。

香奈恵はいつも一人で家にいた。
「外に出てはいけない」
ここでの生活を始めるにあたって、父は香奈恵に強く言い聞かせていた。
山の中

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【掌編小説】あいちゃんはネコがすき #2000字のホラー

【掌編小説】あいちゃんはネコがすき #2000字のホラー

あいちゃんはね、ネコがすきなの。
おうちでいっぱいかっているの。
ママもネコがすきだから、いつもひろってきてくれるの。
さわるとホワホワして、とってもきもちいいんだよ。

あいちゃんにはパパがいないけど、ネコがいるからだいじょうぶなの。
いつもネコといっしょだったら、しんぱいなんかないよ。
あいちゃんちにはおかねがないから、ママはジチタイからホゴっていうのをもらってる。
だからママとスーパーにいっ

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【掌編小説】カサンドラ #2000字のホラー

【掌編小説】カサンドラ #2000字のホラー

地を這うように低い走行音にまじって、心地よい女の声が聞こえる。

──何か音楽をかけましょうか?

「ああ、落ち着いたやつを頼むよ」と私は答える。

リン、と小さな鈴を鳴らすような音。それがカサンドラの応答だ。
コンソールのディスプレイに描かれるオーロラのような模様。
ほんの数秒間、彼女は思考する。
わずかな空白の後、車内スピーカーから静かで重いチェロの響きが流れてきた。
そうそう、こういう曲が聴

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古書店の敷居は高い

古書店の敷居は高い

近所に古書店があるのだけど、一回も足を踏み入れたことがない。
なぜか古書店への敷居は高い。

古書店の店主は、まさしく本のプロという気がする。
相応の目利きができなければ、ネット書店全盛のこのご時世、生き残ることは難しいはずだ。
生き馬の目を抜くような古書店業界。
彼ら彼女らの手は血に染まっている。

そんなプロを目の前にして、悠々と本を選ぶ度胸がぼくにはない。
絶対にこちらが客としての値踏みを受

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【エッセイ】本に関するお小言

【エッセイ】本に関するお小言

実家に一時避難していた蔵書が戻ってきました。

蔵書といっても段ボール箱にして12箱分。幅90cmの本棚2つに収まる量なので、本気の読書家の方からすると「なんだそんなものか」っていうくらいの量だと思います。
でも買った本が手元にないと調子が狂うところがあります。
「ああ、アレ読みたい!」とか「確かあの本に書いてあったはず!」っていう時に隔靴掻痒、すごくストレスを抱えてしまうから。
あと単純に何だか

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【エッセイ】大金を払って気疲れした話

【エッセイ】大金を払って気疲れした話

8月31日、と聞いてもまったく憂鬱さを感じなくなって、ああ僕は大人になったんだなぁと思います。
もちろん学生を卒業したのは、ずいぶん昔の話。
でも20代くらいまでは、あの地獄の門の前に佇んでいるような、夏休みの終わりの絶望感を引きずっていた気がします。パブロフの犬というか、もう心身に染み付いちゃっていたんでしょうね。あの重く沈んだ気持ちが。

誰しもそういった無意識に刷り込まれた、変なネガティブ感

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猫と娘と点と線【エッセイ】

猫と娘と点と線【エッセイ】

我が家には3名の小さな生き物がいる。
生後半年の娘。そしてオスメスのきょうだい猫。
ずっと一緒に暮らしているのだけど、この3名、ちょっと不思議な関係だった。

うちの猫たちは室内飼いで、ケージには入れずに自由に歩き回らせている。
だから娘の目には四六時中、猫たちの姿が飛び込んできている。
が、絶対に見えているはずなのに、すぐそばを通ってもまったくの無視。
わざと目の前に猫の顔を持ってきても、焦点は

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何の意味もなく、死ぬほど疲れた話【エッセイ】

何の意味もなく、死ぬほど疲れた話【エッセイ】

書いたら面白そうなネタはいくつか思い浮かんでいるんだけど、季節の変わり目のせいか、今日はいまいち疲れて元気がでてこないです。
だから「疲れた」ことについて書くことにします。

今までの人生で一番の疲れ。それは「100キロハイク」を歩き終わった後です。
「100キロハイク」というのは、ぼくが通っていた大学の名物行事で、埼玉県の本庄から東京の高田馬場までの約100キロを、一泊二日で歩き通すという物好き

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ギャンブルは弱くていいです【エッセイ】

ギャンブルは弱くていいです【エッセイ】

ギャンブルが弱いです。

ギャンブルに弱い、ではなく、ギャンブルが弱い。勝てません。
競馬、パチンコ、麻雀といった、いわゆる博打だけではなく、相手と何かを賭けて勝負をするといった物事全般に弱いです。
プリンが一個残っているからみんなでジャンケンなー、というシチュエーションでも、あまり勝てた記憶はありません。
人生ゲームとか桃鉄とか、そういうボードゲームでも戦績はパッとしません。2位まではいけるんで

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ウィスキーを飲んでいた頃の話【エッセイ】

ウィスキーを飲んでいた頃の話【エッセイ】

最近ほどんど晩酌をしなくなりました。
タバコも吸わないし(随分前に止めた)、ギャンブルもやらないので(すごく弱い)、真っ当すぎて逆に大丈夫なのかと不安になってきます。
現在、手を付けている唯一のいかがわしいことは、こうやって夜な夜なnoteにエッセイを書いていることくらいです。

でも独身時代はよくウイスキーを買って飲んでいました。
今でもシングルモルト、特にアイラ・モルトは大好きです。「アードベ

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タバコを吸っていた頃の話【エッセイ】

タバコを吸っていた頃の話【エッセイ】

タバコを吸わなくなって10年は経ったと思う。
いつ止めたのかちゃんと覚えていないんだけど、東日本大震災の時には吸っていなかったと思う。いや怪しいな。でも2012年には止めているはず。

逆にタバコを吸い始めた時ははっきり覚えています。
ぼくは大学で学生演劇を少しやっていたのですが、その公演中に吸い始めました。マチネ(昼公演)とソワレ(夜公演)の間に急いで弁当を食べるのですが、仲間から「タバコを吸う

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奥さんからのミッション、父娘でお出かけ【エッセイ】

奥さんからのミッション、父娘でお出かけ【エッセイ】

今日はじめて娘をベビーカーに乗せて遠出をしました。
遠出といっても吉祥寺まで電車で行ってきただけなんですけど。

特に吉祥寺に用事があったわけではなく、ただふらっと出かけて、ヨドバシカメラの中をうろついていただけです。
5階の家電コーナーで、冷蔵庫を見たり、空気清浄機を見たり、エアコンを見たりしていました。買う予定もなく、ただのウィンドウショッピングです。

平日の昼間なので結構空いていたんですが

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Midjourneyは生産か消費か

Midjourneyは生産か消費か

先日、話題のMidjourneyを使ってみた記事を書いたのですが、その後もサブスクリプションに申し込んでAIお絵描きを楽しんでいました。

ぼくは風景写真と人物ポートレートが好きなので、適当な語句をMijourneyに入力して、あれこれ試行錯誤しながら、仕事の合間を縫って自分好みの画像を生成していました。
こんな感じ。

これはこれで面白かったんですが、延々とAIに自分好みの画像を作らせていくうち

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風呂場で思考の散歩をする【エッセイ】

風呂場で思考の散歩をする【エッセイ】

シャワーを浴びながら20分程度、あれこれ考えを巡らせる時間を作っています。
時事問題だったり、読んだ本の感想だったり、小説の筋立てを考えたり。

なんだか瞑想みたいです。
でも瞑想というより、「散歩」という表現のほうが近いかもしれないです。
考えながら頭の中をぐるぐると歩いている感じ。

ひとつのトピックについて、
これは〇〇である。
ということは、□□になるのかな。
ということは、△△になりそう

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本棚が本で埋まるわけ【エッセイ】

本棚が本で埋まるわけ【エッセイ】

本棚が完成しました。
自分で組み立てるタイプの本棚だったのですが、1ヶ月放置してやっと今日、組み立てました。

組み立てるのに要した時間は20分。
この20分に取りかかるやる気を溜めるのに1ヶ月かかったのだと思うと、自分の無精さに笑うしかないですね。
(連日の猛暑のなか、書庫にはエアコンがないので、入るのをためらっていたという別の理由もありますけど)

これでやっと蔵書を回収できます。
部屋の模様

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Midjourneyで美男美女を作って遊んでみました

Midjourneyで美男美女を作って遊んでみました

昨夜、友人たちと飲みにいったのですが、その内の一人が最近話題のAIによる自動画像生成サービスMidjourneyをやっていたので、やり方を教えてもらいました。

Midjorneyは画像生成AIなのですが、命令はDiscordというコミュニケーションアプリから行います。
MidjourneyのBotとお友達になって、Botに向かって呟くと、それを拾って画像生成をしてくれる。そんなとてもお手軽なサー

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