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エッセイらしきものばかり

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何がエッセイなのかよく分かっていない人が書いたエッセイらしきものです。
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2022年9月の記事一覧

あぶりだせず

あぶりだせず

 あぶりだしというものがありますね。紙にミカンの果汁で何か書いて乾燥させると何も見えなくなりますが、火にあぶると文字が浮かび上がるという例のやつです。コトバンクによりますと、江戸時代に酒の席での遊びとしてやっていた記録があるんだとか。ざっと数百年の歴史がある遊びなんですね。

 当然、私が子供だった頃にもあぶりだしはございまして、本でそういうものがあると知った私は母に「やってみたい」とねだりました

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子豚のレースで打ち合わせ

子豚のレースで打ち合わせ

 友人と某イベントに行ったら、子豚のレースをやっていました。ルールは簡単で、ひとりずつ1頭の子豚につき、ゲートが開くと共に人が子豚の後ろから応援をして前進をうながし、子豚を最も早くゴールまで導いた人が勝利というものでした。1位にはちょっとしたイベントオリジナルグッズがプレゼントされるとのこと。

 イベントの性質上、小さな子供が主な挑戦者として選ばれていましたが、大人が出てもいいようです。非売品が

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勝手に自分のための道路が出来上がった

勝手に自分のための道路が出来上がった

 2年に1回、役所に申請しないといけないものがあるんです。必要な書類を用意して役所に出すわけなんですけど、役所と自宅の位置関係が悪い意味で絶妙なんです。どういうわけだか、公共交通機関を使うとかえって時間がかかってしまう。かと言って自力で行くにしても結構な距離があるので、どんなルートを使おうと時間も手間もかかってしまうんです。

 そして、何よりも申請の道を阻むのは複雑な道順です。自宅から役所までの

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全自動マシンで風呂に入りたい

全自動マシンで風呂に入りたい

 同じ立場のほうが気持ちは理解しやすいですよね。先生は先生の気持ちを、漁師は漁師の気持ちを、王様は王様の気持ちを理解しやすいのは当たり前と言えば当たり前です。同時に、先生も漁師も王様も個人差があります。同じ立場だからと言ってみんながみんな同じ動きをするとは限らない。

 たとえば、同じつらい立場にいたとしても、そのつらさを世間に訴え、問題解決に向けて社会へ働きかける人もいれば、別に同情されたくない

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宇宙人に道を聞かれる可能性が出てきました

宇宙人に道を聞かれる可能性が出てきました

 道を尋ねられやすいんです。20歳ごろからでしょうか、大体は年上の女性で、まれに男性からも聞かれます。

 聞かれるときは時間も場所も問わずに聞かれるんで困ってしまうこともあります。初めて来た場所で道を聞かれる時も1度や2度ではありません。明らかに観光客のつもりで来ているのに、明らかに観光客の格好をした人に地元民だと思われて道を聞かれたこともあります。そんなときは「すいません、初めて来たので僕も分

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畑の最晩年の景色だったのか

畑の最晩年の景色だったのか

 普段通る道のそばに畑があったんです。住宅地の中にそこだけポッカリと畑になっている。そんなに広くはありません。慎ましやかな民家を2軒も建てればギュウギュウになってしまうくらいの広さです。

 そんな畑ですが、毎年のように作物が育てられていました。大根だったり里芋だったり。どこかに出荷しているのか自宅で消費しているのかは知りませんが、熱心に作られていました。

 ある日のことです。私がいつものように

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道徳の教科書が現実になる

道徳の教科書が現実になる

 人の脳は大切なことや印象深いことを覚えているもんだと思っていたんですが、なんかどうでもいいこともしっかり記憶してるんですよね。メモリの無駄だと思うんですが、そんな私のパソコンやスマホにもなんで撮ったのか分からない画像が大量に眠っています。記憶とか記録ってそういうもんなのかもしれません。

 例えば、私が小学生をしていた頃に使っていた道徳の教科書です。表紙には数名の人物イラストが描かれていたんです

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何でもありに読めてしまう文章

何でもありに読めてしまう文章

 正しいことを言っているんだろうけど、それを言ってしまったらもう何でもありじゃないっすかとなる表現があるんです。言葉って不思議ですね。

 例えば、こんなことがありました。経緯は完全に忘れてしまいましたが、ネットでおならについて調べてたんです。もちろん大人になってからです。当たり前じゃないですか。

 おならと言えば、腸とは密接な関係があります。当然、腸の話がいろいろ出てきました。なぜかは知りませ

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戸惑いの電動カート

戸惑いの電動カート

 いつも川沿いをジョギングしてるんです。堤防沿いの道を走ってるわけですね。周囲は住宅地ではございますけれども、堤防がある関係上、民家からは少々離れている。

 堤防沿いの道は晴れていればご近所の方々が歩いたり走ったり自転車に乗ったりして活用しています。もちろん、それ以外の活用をする方もいらっしゃいます。さすがに原チャリは道交法上、押して歩かないといけませんが、電動カートは大丈夫なようで、たまに乗っ

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絶滅危惧立ちション

絶滅危惧立ちション

 大学生だった頃、一人旅で地方の電車に揺られていたんです。遠くまで広がる田園風景は収穫を待つ稲穂が風で波立っていました。

 ボーっと黄金の田んぼを眺めていると、景色の一番手前である線路わきに初老の男性がひとり、こちらを向いて立っているのが視界に入ってきました。男性は一瞬で視界から消えてゆきましたが、格好だけで何をしていたのかすぐに分かりました。立ちションです。思い切り線路に向かって放尿していたん

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日記責めの後遺症

日記責めの後遺症

 私が小学校6年生の頃でした。

 その時の担任教諭は過去にも担任だったことがあり、生徒の書く日記を読むのが好きな人だなあとは思っていたんです。しかし、始業式の直後、教室に戻った生徒を前に先生はにこやかにこう言いました。

「今日から1年間まいにち日記を書いてもらいます」

 当然、「えー」という声があがりますが、先生にとっては想定内の反応だったらしく、その笑みは崩れませんでした。先生がやると言え

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無駄遣いされてはじめて根づいたと言える

無駄遣いされてはじめて根づいたと言える

 その日の某路線は大き目の事故があったため、電車が止まっていました。不幸にも出勤時間と重なり、駅はホームを始め構内の隅々に至るまで人があふれ、極めて過酷な状態になっていました。

 私の友人もその事故の影響をしっかり受けてしまいました。某ターミナル駅までは辿り着いたのですが、ダイヤが乱れまくろうと意地でも職場に行きたい企業戦士が改札口に殺到しており、まさに立錐の余地もない状況でした。あんなところに

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初めての殺虫

初めての殺虫

 部屋に置くタイプの殺虫剤がありますよね。スイッチを押すと殺虫成分が煙のように出て、家主が室外へ出ている間に部屋の隅に潜んでいる虫まで駆除できる。一定時間、部屋に入れなくはなりますが、室内の虫を一掃できるのは大きい。スプレー式殺虫剤を片手に虫を追いかけ回す手間もありません。売れるわけです。

 と書いてはいますけれども、実は私、置くタイプの殺虫剤を使ったことがなかったんです。殺虫中の小一時間、外で

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郵便受けの変化を気にしない人たち

郵便受けの変化を気にしない人たち

 とある集合住宅が外壁を塗装し直していたんです。要は新たにペンキか何かを塗るということなんでしょう。集合住宅を取り囲むように足場が組まれ、複数の方が作業をしていました。それ自体はたまにあることなので、特に気にしてはいませんでした。

 その集合住宅は中の共用部、つまり共用の玄関や廊下まで塗り直すようです。私がたまたま近くを通った時には共用玄関の壁を塗装していました。共用玄関の壁には金属製の郵便受け

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