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戸惑いの電動カート

 いつも川沿いをジョギングしてるんです。堤防沿いの道を走ってるわけですね。周囲は住宅地ではございますけれども、堤防がある関係上、民家からは少々離れている。

 堤防沿いの道は晴れていればご近所の方々が歩いたり走ったり自転車に乗ったりして活用しています。もちろん、それ以外の活用をする方もいらっしゃいます。さすがに原チャリは道交法上、押して歩かないといけませんが、電動カートは大丈夫なようで、たまに乗っている方を目撃します。電動カートとはタイヤが4つある原チャリみたいな外見だけど、進むスピードは成人が歩く程度ののんびり加減という乗り物で、お年を召した方がよく乗られている印象です。

 個人的にはそこまでではないけれども試しにちょっと乗ってみたい車です。でも、販売サイトを確認したらものによっては福沢諭吉が数十人は討ち死にするレベルの値段で、気軽に買えるようなものではない。買っても家に置く場所がない。将来の楽しみに取っておくのがよさそうだという、何とも平凡な結論に落ち着いています。

 さて、その日も川沿いをジョギングしていると、前方から電動カートに乗ったご年配の男性がのんびりと迫ってきました。まあ、そこまで珍しいわけではありませんでしたので、普通にすれ違おうとすると、どうもいつもの電動カートと様子が異なる。乗ってる男性は何の問題もなさそうな顔でハンドルを握っているんですが、電動カートから女性の声が聞こえてくるんです。

「バッテリーがなくなりました。まもなく停止します」

 電動カートから聞こえてきたのは運転手にとっては地味に焦る警告メッセージでございました。住宅地から離れた川沿いの道でバッテリーがなくなったら面倒なことになるの確定です。重量は100キロ前後のものが多く、重めの原チャリ並。体力に自信のある成人男性ならまだしも、電動カートで移動している男性にはしんどいのではないでしょうか。

 走りながら戸惑った私でございますけれども、男性は平然とハンドルを握っていました。いや、もちろん内心は「ヤバいヤバい」と思っていたのかもしれませんけれども、特に何も起きていない時から「大丈夫ですか」と助けるのはなんか違いますし、そもそも助け方もよく分からないですし、普通にジョギングを続けてしまいました。

 次の日も同じ道を通ったところ、電動カートに乗ったままぐったりしている男性がいるわけでもなかったので、何らかの形で無事にご帰宅されたんだと思います。男性があの窮地をどうやって切り抜けたのかだけは今でも気になります。

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