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エッセイらしきものばかり

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何がエッセイなのかよく分かっていない人が書いたエッセイらしきものです。
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記事一覧

境目ばかり気になる人生

境目ばかり気になる人生

 気にしちゃいけないと思いつつも、境目が気になるんです。

 例えば、ターミナル駅のホームで電車を待っている時なんです。ただでさえ利用客の多いターミナル駅でございますけれども、出勤や帰宅の時間帯になりますと、より一層の利用客でごった返します。電車が来るたびに大量の客が乗り込む。車内が人で溢れていても、発車時刻が過ぎていてもどうにか乗ろうと試みる人さえいる。

 そうすると、駅員さんがこうアナウンス

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「浦島太郎」はどうやって生まれたのか

「浦島太郎」はどうやって生まれたのか

 浦島太郎って意味不明な話だと思いませんか。亀を助けたら海の底にある竜宮城に行って、お礼に接待を受けた上、玉手箱というお土産をもらって帰ってくる。でも、陸に戻ってきたら数百年が経っていて、お土産の玉手箱を開けたらおじいさんになってしまう。浦島太郎が親切心を出したばっかりに、ひたすら奇妙な出来事に巻き込まれ、故郷は事実上なくなり、いきなりヨボヨボにされる。何の救いも教訓も感じられないお話ではありませ

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ジョギングは奇妙な光景と出会う運命にある

ジョギングは奇妙な光景と出会う運命にある

 大体決められたコースをジョギングしているんです。なので、馴染みの道ばかり走っているわけなんですけれども、そんな馴染みの道でもたまにいつもと違った光景が出現するんです。

 例えば、私が川沿いの遊歩道を走っていた時のことです。遊歩道は何しろ公道ですから、散歩している人もチラホラいらっしゃいます。そんな方々に会釈をし、間を縫うようにして走るのがいつもの習慣だったんですけれども、やがて遊歩道の少し先に

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ギリギリ落とせる落とし物

ギリギリ落とせる落とし物

 昔から、冬になるとガードレールや電信柱に手袋が片方だけ引っ掛かってるなと思ったんです。最初は悪戯だと思っていましたが、どうやら違うと考え直しました。恐らく、落とし物を引っかけてあるんです。

 財布のような貴重品ならまだしも、片方の手袋だと交番に持っていくのはいささか大袈裟に感じる。しかし、道の片隅に放置したまま見て見ぬふりするのは忍びない。こうしている間にも持ち主が探しているかもしれない。そん

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千円札の記憶を、未来の私のために

千円札の記憶を、未来の私のために

 人の記憶は当てにならないと言われています。もちろん、全部ダメとは言いませんけど、全部正確に覚えている人もまあいない。

 例えば、私の実家の玄関には壁にこぶし大の穴があるんです。今でも掛け時計で穴を塞いであると思うんですけれども、その穴は私が高校生の頃、玄関でアホなダンスを踊った結果、肘で壁に強烈な一撃を与えてしまい空いた穴なんです。もちろん、当初はその件で私がちゃんと怒られました。

 でも、

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フッ素系蛇口が入浴をスリリングにする

フッ素系蛇口が入浴をスリリングにする

 フッ素という物質があるわけです。「これで歯をコーティングするといいですよ」みたいな話で聞かれる物質でございます。

 そんなフッ素、議論の余地はあるようなんですが、人体にとって必要な物質と考えられている。ただし、体内に取り入れる際には無視できない特徴もございます。それは適量の幅が狭いという点です。ちょっと減れば欠乏となり、ちょっと増えれと過剰になる。ちょうどいい量にするのが難しい物質でもあるんで

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説教を創意工夫する

説教を創意工夫する

 けなそうと思えば何でもけなせるように、褒めようと思えば何でも褒められるものなんです。特に幼い子供相手ですと、大人はとにかく褒める傾向があります。

 褒められた子供はどういう気持ちなのでしょう。他人のことは分かりませんが、自分のことなら分かります。幼少期の私は「無理矢理に褒めてるな」と思っていました。

 そう書くと、他人の心の機微が分かる子供のように思われるかもしれません。逆なんです。だから、

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洗濯機下のスイートスポット

洗濯機下のスイートスポット

 以前、アパートの1階に住んでいたんです。近所は猫の多い土地柄なのか、特に夜、仕事から帰ってくると高確率で見かける。

 とある初夏の夜、涼しいそよ風を入れようと、カーテンも閉めず、窓全開でスマホを触っていました。そうすると、網戸越しに動くものが見えたんです。パッと横を見ると柵の上を歩く黒猫もまた私をジッと見ていました。

 翌日、ドアを開けた瞬間、足元で何かがぶつかるような音がしました。不思議に

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社団法人 全日本愛人認定協会

社団法人 全日本愛人認定協会

 友人と雑談していると、何の話の流れからか、友人がとある有名人に関するスキャンダラスな噂について話し始めたんです。業界どころか日本の至るところでその名が知られている某有名人が、愛人を囲っているらしいとの噂です。

 その手の話が人々の耳目を集めると理解はしていますが、どう頑張っても他人の恋愛に興味が持てない私、有名人だろうが愛人だろうがそれは同様でございまして、この話も普通に聞き流してしまおうかと

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ファッションか変わり者か

ファッションか変わり者か

 紐で結ぶタイプの靴がありますね。ちょっとサイズが違っても靴紐をキュッと結べば問題なく履ける、なかなか便利な靴でございます。

 皆さんも便利に思っているのか、電車で座っている時、立っている乗客の足元を見ると、結構な割合で結ぶタイプの靴を履いているんです。一大勢力と言ってもいい。どの靴も皆さん、大体蝶結びで締めています。

 しかし、中には不思議な足元の方もいらっしゃいます。例えば、形はどう考えて

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洗濯機でシャツを削りきる

洗濯機でシャツを削りきる

 消しゴムを使い切るのは難しいです。なぜなら、ラストの方になると消しゴム自体が小さくなり、紛失の危険性が極めて高くなるからです。消しゴムを使いきろうと頑張る小学生の私は、残り少ない消しゴムの紛失に何度となく泣かされてきました。

 だから、使い切った時は、事の小ささとは裏腹に、異常な達成感がありました。ビーズにも満たない大きさの消しゴムを指で押さえながらこすると、ノートの文字を薄くしながら消しカス

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自分のでも他人のでも、思い違いに苛まれる

自分のでも他人のでも、思い違いに苛まれる

 とある漫画家のインタビュー記事を見たんです。

 その漫画家はものすごく好きというわけではないんです。単行本を買ったことがないくらいですから、ファンを名乗るのはおこがましい。でも、その漫画家の作品が載っている雑誌を一時期ずっと買い続けておりましたし、SNSもかなり昔からフォローし、軽く動向をチェックしています。その漫画家はたまに短い漫画を載せてくれるため、地味に楽しんでいます。

 その漫画家は

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立派でなくても何とかなる

立派でなくても何とかなる

 「あなたは立派な人間か?」と聞かれて、間髪入れずに「そうです」と言える人間がどれだけいるでしょうか。多くの人間は立派とされる人物像から外れて、時にやるべきことはできないし、たまにやらなくていいことだってやってしまう。そういう障害を乗り越えて実現するから「立派」と言われるんでしょう。つまり、立派な人はどちらかというと特殊な人類と言える。

 世界中でマスクをしなければいけなくなった時期は、「人はな

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繊細な人間がスプレーを図太く使う

繊細な人間がスプレーを図太く使う

 制汗スプレーをもらったんです。しかも未使用。封すら開いてません。せっかくなので暑くなったら使ってやろうと思っていたんです。

 そこは地球温暖化がやる気を出している昨今ですから、使うチャンスは思ったよりも早く訪れました。まだ世間が花粉症でヒーヒー言っているうちから夏日を叩き出し始めたんです。暑ければ汗をかく。制汗スプレーの出番です。

 ワクワクしながらスプレーの封を破いたんですけれども、缶をま

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