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社団法人 全日本愛人認定協会

 友人と雑談していると、何の話の流れからか、友人がとある有名人に関するスキャンダラスな噂について話し始めたんです。業界どころか日本の至るところでその名が知られている某有名人が、愛人を囲っているらしいとの噂です。

 その手の話が人々の耳目を集めると理解はしていますが、どう頑張っても他人の恋愛に興味が持てない私、有名人だろうが愛人だろうがそれは同様でございまして、この話も普通に聞き流してしまおうかと思っていたんです。ただ、友人の言葉が気になってしまったんです。

「その人はさ、公式の愛人が何人もいてさ」

 公式の愛人。公式と呼ぶからには「社団法人 全日本愛人認定協会」みたいな認定機関があるはずなんです。機関から認定員が派遣され、実際に現場を視察、資料も収集しまして事務所に持って帰り、認定会議にかけて愛人か否かを判断する。そうでもしなければ公式の愛人なんて立場が生まれるはずがないと考えたんです。

 私は尋ねました。

「公式ってどこが認定するんだよ」

 「誰が」と聞かないあたり、全日本愛人認定協会が存在すること前提に質問をぶつけてしまっていることがバレてしまっていますが、それはともかく友人は「そんなことも知らないのか?」と言わんばかりにこう答えました。

「妻に決まってんじゃん」

 全くの盲点でした。おかしいと思ったんです。世に愛人がどれだけいるのか知りませんが、認定機関が日本中に認定員を派遣していたら社員がいくらいても足りません。交通費も馬鹿になりませんし。そこで配偶者に委託すれば事態は一気に解決します。何しろ、配偶者がいるからこそ愛人なんて存在が生じるわけで、言い換えれば愛人を作る人間には必ず配偶者がいる。協会としてはそこに委託するのが最も合理的です。

 当然ながら、このシステムですと愛人は公式より非公式の方がたくさんいるのは想像に難くありません。とにかく、愛人が公式認定されるかどうかは、配偶者の一存で決められるわけでございまして、全ての既婚者は自動的に愛人を公式認定する権利が付与される。いわば「社団法人 全日本愛人認定協会」みたいな認定機関の一員になるわけです。ですから、場合によっては実際に現場を視察、資料も収集しまして事務所に持って帰り、認定会議にかけて愛人か否かを判断するのでしょう。中では調査員としての活動が認められ、社団法人の正規職員として活動する方だっていらっしゃるでしょうし、何ならそこから代表にまで上り詰めた人だっているに決まっています。

 友人は「こいつまたロクでもないこと考えているな」という目で見ていました。正解です。

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