ファッションか変わり者か
紐で結ぶタイプの靴がありますね。ちょっとサイズが違っても靴紐をキュッと結べば問題なく履ける、なかなか便利な靴でございます。
皆さんも便利に思っているのか、電車で座っている時、立っている乗客の足元を見ると、結構な割合で結ぶタイプの靴を履いているんです。一大勢力と言ってもいい。どの靴も皆さん、大体蝶結びで締めています。
しかし、中には不思議な足元の方もいらっしゃいます。例えば、形はどう考えても紐で結ぶタイプなのに、靴紐をつけずに履いている方がいらっしゃったんです。靴紐を通すはずの穴は、その存在意義を奪われて、ただただ丸く空いているだけでございます。
別に、どんな履き方をしようと自由だとは思うんです。ただ、靴紐は必要だから存在しているわけで、これがなかったら靴をキュッとすることができず、歩くたびに靴が脱げそうになると思うんです。
これがひとりだけだったら、変わったセンスの人が変わった履き方をしていただけだと思ったでしょう。もしくは何らかのアクシデントで靴紐を失くしてしまい、仕方なく紐レス状態で履いているだけなのだと。
ですが、それからも同じような足元の方をチラホラと見るんです。みんな靴紐をつけないまま、平然と履いている。そこでようやくピンと来たんです。こういう履き方が一部で流行っているか、もしくはこういう靴が売っているのではないかと。
調べたらすぐ出てきました。コンバースのオールスター SLIP III OXというタイプのようです。
紐がない代わりにスリッポン仕様となっており、そのまま履いてもスポッと脱げたりしない仕組みのようです。ただ、紐を結ぶ穴自体は使うことができ、何だったら意味はないけれど靴紐でキュッと結ぶこともできるようになっているとのこと。靴紐が必要っぽく見えるけど、なくても全然履ける靴だったんですね。
すっかり納得した私、安心して電車内で他人の靴をぼんやり眺めるようになったんですけれども、しばらくするとまた奇妙な状態の足元を見つけてしまったんです。
その靴もまた紐で結ぶタイプでございました。今度は靴紐もちゃんとあり、蝶結びでキュッと縛ってあります。ここまでは普通の靴でございます。
靴紐の基本形は、つま先の方から何度もクロスさせながら足首方向に伸びてゆき、最後は結ぶという状態だと思うんです。しかし、その靴は蝶結びした時にできる紐の端っこが、クロスさせた部分の下に潜り込んでいるんです。
これはウッカリなるような形ではありません。意図的にやらないとできない形です。つまり、持ち主の意志が反映された結果こうなっている。
これもまた一部で流行り始めているファッションなのか、それとも変わった人による変わった履き方なのか。疑問解決のため、今日も私は電車の中で知らない人の足元を注視している次第です。
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