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「浦島太郎」はどうやって生まれたのか

 浦島太郎って意味不明な話だと思いませんか。亀を助けたら海の底にある竜宮城に行って、お礼に接待を受けた上、玉手箱というお土産をもらって帰ってくる。でも、陸に戻ってきたら数百年が経っていて、お土産の玉手箱を開けたらおじいさんになってしまう。浦島太郎が親切心を出したばっかりに、ひたすら奇妙な出来事に巻き込まれ、故郷は事実上なくなり、いきなりヨボヨボにされる。何の救いも教訓も感じられないお話ではありませんか。

 ウィキペディアによりますと、浦島太郎は古くから伝わる話でございまして、現代へ至るまでにいろいろ変化しているようです。ただし、亀を助けた浦島太郎がどこへ行くのか、そこで迎えてくれる人は誰なのか、お土産に何をもらうのか、などなど、枝葉の部分が異なるだけで、亀を助けたことがきっかけで別世界に連れていかれ、お土産をもらって現世に戻れば数百年の時間が経っていて、お土産を開けたら一気に年を取ってしまうという、話の根幹は同じのようです。つまり、救いも教訓もない話のまま、長いこと言い伝えられてきたお話なんです。

 作者はどういう意図で作ったんだろう。調べようにも、そもそも作者が不詳のため知りようがありません。ただ、そんな疑問を友人にぶつけてみたところ、興味深い仮説を展開してきました。

「外でしっかり不倫してから戻って来たやつがモデルになってんじゃねえの」

 適当に言っていることはよく分かりましたが、続きが気になりましたので聞いてみました。

「どういうことだよ」
「そういうやつは昔からいたはずだろ。嫁も子供もいるのに別の女性にいくやつ。で、よそでしっかり何年も楽しんできてから、ようやく家が恋しくなるんだ。ただ、帰るにしても正直に言うわけにはいかないだろ。そこで何かシナリオを考える必要があるわけだ」

 なんか常習犯みたいにスラスラ言う友人ですが、もちろんそんなことは口にせず、私はうなずいていました。

「不倫野郎は言うわけだよ。『亀を助けたら異世界に連れていかれた。そこでお礼代わりの宴を楽しんで戻ってきたら、こんなに時間が経ってしまった』。嫁は馬鹿な言い訳だと思うだろうが、何しろ昔の話だ。信じる人がいるかもしれない」

 つまり、誰かが適当についた嘘がベースになっているという仮説です。「そんなわけねえだろ」と言ってしまうこともできたでしょうが、なんかよく分からない説得力もありました。

 友人は更に続けます。

「きっといろんなやつが異世界や物の怪のせいにして好き勝手やってたに違いない。他人の家からものをパクったのがバレても、『あれはきっと狸に化けた俺だ』と白々しく言ったりとかな」

 物の怪の類が実在するかもしれないと思われていた時代ならば、確かに強力な言い訳になるでしょう。嘘が事実だと思われていたかもしれない。何なら「また狸が騙しやがったか」と言って、ありもしない事実をみんなで作り上げていたかもしれない。

 我々が生まれるよりずっと前の遠い昔は、ロマンのある世界だったとも言えるし、すごく適当な世界だったとも言えるかもしれません。

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