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私的偏愛図録 ~紫のゆかり~

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「私は、なにかを”愛する”ことが得意なのかもしれない……」そんな発見から生まれた、中山かず葉が(偏)愛するものものについて書かれた記事を秘密の図鑑にしました。
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記事一覧

【#3行日記】 6弦に馳せて

【#3行日記】 6弦に馳せて

愛を返せずに離れたのは他でもない自分だが

時折思い返しては同じメロディーを指で辿る

こじれたロマンスをいつまで続けるのだろう

【短編】 「なにか」を求めて

【短編】 「なにか」を求めて

まだ蝉も鳴き始めない夏の日の朝。

私が生まれついたこの街は、「午後」に切り替わらないうちからうだるような暑さに占拠されるような所なのに、爽やかだった。

「爽やか」は、すごい。

停滞していたエネルギーがブワワワッ!と音を立てて流れ出すかのように、気づけば普段取らない行動にすんなりと身を委ねていた。

ただただ、歩く。「なにか」を求めて。



一体どれほど歩き続けたのだろう。

蒼く、時折緑

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【短短編】シャ・ノアール

【短短編】シャ・ノアール

あのこは今日も、ちいさな身体で必死に何かを訴えている。

耳をぺたんと折りたたみ、毛を逆立てて、
とびきり低いうなり声をあげながら。

んなぁぁぁぁぉん!
んなぁぁぁぁぉん!

美しいオッドアイから流れる悲しみを、
ふわふわの体毛に隠された見えない傷跡を、
もう二度と取りこぼすことがないように。

私は「わたし」の心に住む黒猫をそっと抱きしめた。

どうか、あのこの傷がすこしでも癒えますように。愛

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【プロフィール】自己紹介が苦手な私のセルフポートレイト

【プロフィール】自己紹介が苦手な私のセルフポートレイト

「自己紹介が苦手です」が私の常套句になったのは、一体いつからだろう。

学生時代から現在にいたるまで、
いざ自分のことを話そうとするとモゴモゴと口ごもって相手にうまく伝えられない。

それは文面に置き換えても同じで、
メモ帳にはスラスラと構成を作れるものの、いざエディタを開くとピタリと手が止まってしまうのが常だった。

それでも、ひとは書き手の”生き方”や”人となり”を知りたいものだと思うから。

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【202310(14)+X】 ”おとな”の居場所

【202310(14)+X】 ”おとな”の居場所

そう、マスターは言っていた。

話の脈略をたどると、それは友人に向けて放たれた文言だったのだけれど、そのフレーズはじんわり、ぽつーんと、たしかに私の胸にも光をともしてくれたのだった。

たったひと晩のできごとが、
今でも忘れられない。



▼ 1軒目
「おっす~!」

1年弱会っていないことがまるでウソみたいに、親友との再会はいつもどうりの軽やかな挨拶ではじまった。

進学・就職のために若くし

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2022年愛した50のことリスト

2022年愛した50のことリスト

2022年も今日で終わり。
ということで、今年最後のnoteは2022年私が愛した50のことについて書いていきます。

それでは、どうぞ!

1.椎名林檎さん

大好き!林檎さんの音楽に、というか存在そのものにいつも支えられています。今年は『旬』をよく聴いたなぁ。

2.東京事変

最ッ高の五人衆。『今夜はから騒ぎ』のピアノソロがね…もう…大好き。来年と言わず永遠に愛し続けます

3.レモン🍋

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福岡から遠く離れたこの街で、待ちに待った瞬間を迎えた日

福岡から遠く離れたこの街で、待ちに待った瞬間を迎えた日

ずっと、ずっと待っていた。
シーズンが始まった3月から、今に至るまで。

ずっと、ずっとこの日を夢見ていた。
途中、「もう今シーズンは見られないのかな……」と悲しい気持ちになっては「いや、まだ分かんないよね」と首を横に振り続けた。

気持ちだけではどうにもならない悔しさは、私も知っている。だからこそ、懸命にバットを振ってもフライに倒れる彼の打球を見ては、「悔しかねー、拓也ぁー」と呟きながら試合の行

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