売り込まない! 営業の仕組みを変える

百貨店個人営業(外商)での経験を活かして、顧客戦略に関するコンサルティングをしています…

売り込まない! 営業の仕組みを変える

百貨店個人営業(外商)での経験を活かして、顧客戦略に関するコンサルティングをしています。マーケティングとは、売り込みではなく、おのずと売れる仕組みを創ること。売り込まない、関係づくりのための活動を通して結果として顧客のライフタイムバリュー拡大を図る働き方構築をお手伝いしています。

記事一覧

「孤立する『面倒見のいい上司』」~成果主義から“縁の下の力持ち”を大切にする組織へ

2024年6月20日付の『朝日新聞(朝刊)』に東畑開人さんという臨床心理士の方の「働き手不足から『有限性』を考える~「孤立する『面倒見のいい上司』」というコラムが掲載…

一事業に専心たらんとせば株に手を出すな ~三越の古典に学ぶ その22~

時代の特徴なのだろうと思う。株式投資=投機であるとの認識は今では、それはちょっと言い過ぎ…と思われるだろう。しかし、日平均株価が4万円を超え、米国ダウ平均が4万…

「世界標準の経営戦略」に優る現場発の改善活動

日本発の生涯顧客戦略を打ち立てよう! なんだかとっても大それたテーマを掲げてしまった。 慶應義塾大学商学部の岩尾俊兵准教授の『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか…

脱成果主義!~変化が激しい時代の働き方を~

2024年5月15日付『日本経済新聞(朝刊)』の「私見卓見」欄に次のような投稿があった。「人事評価はプロセスも重視せよ」 筆者は賃金人事コンサルティングオフィス社長の蒔…

グリコ出荷停止問題から考える「縁の下の力持ち人材」の課題

プッチンプリンがコンビニの棚から消えた。 2024年4月23日付『日本経済新聞』には次のように記述しています。 「グリコが(4月-引用者註)3日、調達や出荷、会計などの業…

【三越350年の記憶】その3:大阪三越

「三越350年の記憶」プロジェクトの鈴木です。商業史上、重要な役割を果たしてきた三越の歴史を後世に残すため、史料を収集しています。将来的にはデジタルライブラリーと…

【三越350年の記憶】その2:本店仮営業所

「三越350年の記憶」プロジェクトの鈴木です。商業史上、重要な役割を果たしてきた三越の歴史を後世に残すため、史料を収集しています。将来的にはデジタルライブラリーと…

【三越350年の記憶】その1:催事場

「三越350年の記憶」プロジェクトの鈴木です。商業史上、重要な役割を果たしてきた三越の歴史を後世に残すため、史料を収集しています。将来的にはデジタルライブラリーと…

我々は此意味で学者の助力を仰ぐ ~三越の古典に学ぶ その21~

日比翁助は「学俗協同」の精神を大切にしていた。それは、単に経営者として利益追求を目的とするのではなく、殖産興業、国の発展に貢献するのがビジネスであるとの信念だっ…

売った後が大切なのに…顧客放置戦略をとってませんか?

売った後こそ、大切なのに…。 そう思うことがあります。売り込むためには色々手を尽くすのですが、一度売れてしまうとその後は別の売り込みに気持ちが移ってしまっている…

先づ茲暫くは、学校出の人と経験のみで来た人の如何なる優劣があるか、試験時代である ~三越の古典に学ぶ その20~

日比翁助専務は人材の育成・活用に大いに関心を持っていたことが伺える。特に取り扱い商品の拡大を図るにあたって、旧来からの呉服については丁稚奉公からの社員を当て、新…

染織業の発達に資し精粹を全国に抜かんと欲す ~三越の古典に学ぶ その19~

伊勢丹との経営統合以前の三越の経営戦略の基本となっていたのは「顧客営業戦略」であると捉えている。耳目を集める広告で認知を高め、魅力的な催事・快適な店舗環境で来店…

吾人は製品は広く精粋を全国に求め其優等なるものを選んで愛顧の諸君に供給せんことを期して居る ~三越の古典に学ぶ その18~

いわゆる製造小売にはならないとの宣言なのだが、その一方で広く全国に埋もれた職人、銘品をもとめて、場合によっては育成することで精巧品を品揃えしていくという活動を繰…

「経営者は現場のことを分かってないんですよ」

今年(2024年)3月21日の『毎日新聞(朝刊)』に「人を動かすナラディブ 人生をつむぐ聞き書きの力」という記事がありました。 「誰かが語る人生の物語に耳を傾け、話し言…

其責任は我店が受けなければならぬ ~三越の古典に学ぶ その17~

商売に苦情は付きものである。現在では、テナント販売や委託販売ばかりとなり、お客様からの苦情は直接百貨店側に入ってこない。もしくは入ってきても、取引先に苦情対応を…

ポイントで獲得した顧客は、ポイントで離反する

“経済的特典で獲得した顧客は、経済的特典で離反する” 例えば、ポイント制度。 ビジネススクール時代における研究テーマは顧客ロイヤルティでした。百貨店個人営業部門…

「孤立する『面倒見のいい上司』」~成果主義から“縁の下の力持ち”を大切にする組織へ

「孤立する『面倒見のいい上司』」~成果主義から“縁の下の力持ち”を大切にする組織へ

2024年6月20日付の『朝日新聞(朝刊)』に東畑開人さんという臨床心理士の方の「働き手不足から『有限性』を考える~「孤立する『面倒見のいい上司』」というコラムが掲載されていた。その主張の概要は以下の通りである。

人手不足の現代にあって、働き手に「いかに来てもらうか」ももちろん大切だが、「いかに居てもらうか」ということも重要だ。給与や労働時間などの待遇改善も大切だが、働き手は孤立するとき、働き続

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一事業に専心たらんとせば株に手を出すな ~三越の古典に学ぶ その22~

一事業に専心たらんとせば株に手を出すな ~三越の古典に学ぶ その22~

時代の特徴なのだろうと思う。株式投資=投機であるとの認識は今では、それはちょっと言い過ぎ…と思われるだろう。しかし、日平均株価が4万円を超え、米国ダウ平均が4万ドルを超えるような“バブル”経済の今、地に足をつける地道な経営活動の大切さは再確認しておく必要はあると思う。

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第三編 商品の活動
○商人と株式
◎私は(株)を持てぬに非ず持たぬなり
投機=株式の売買といふことをやつたこ

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「世界標準の経営戦略」に優る現場発の改善活動

「世界標準の経営戦略」に優る現場発の改善活動

日本発の生涯顧客戦略を打ち立てよう!
なんだかとっても大それたテーマを掲げてしまった。

慶應義塾大学商学部の岩尾俊兵准教授の『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増補改訂版『日本“式”経営の逆襲』』(光文社,2023)読んでいるのですが、とても面白いのです。
岩尾氏は、同書の内容を自由に要約、紹介して良いとのことなので、以下に一部引用します。

「…日本企業は、様々な人材育成施策、OJT、QCサ

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脱成果主義!~変化が激しい時代の働き方を~

脱成果主義!~変化が激しい時代の働き方を~

2024年5月15日付『日本経済新聞(朝刊)』の「私見卓見」欄に次のような投稿があった。「人事評価はプロセスも重視せよ」
筆者は賃金人事コンサルティングオフィス社長の蒔田照幸氏。蒔田氏の主張は明快で、“評価対象は成果だけでよく、プロセス評価なんて無意味”という昨今の風潮に対して警鐘を鳴らしている。「マニュアル通りにやっても結果が出なかった」など、無責任な発言をする人もいるが、マニュアル通りで上手く

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グリコ出荷停止問題から考える「縁の下の力持ち人材」の課題

グリコ出荷停止問題から考える「縁の下の力持ち人材」の課題

プッチンプリンがコンビニの棚から消えた。
2024年4月23日付『日本経済新聞』には次のように記述しています。
「グリコが(4月-引用者註)3日、調達や出荷、会計などの業務を一元管理する統合基幹業務システム(ERP)を全社的に切り替えたところ、障害が発生し、物流センター業務を一時停止した。18日に一部業務を再開したが、出荷データの不整合が見つかるなどとしたため、再度出荷を停止した。5月中旬の出荷再

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【三越350年の記憶】その3:大阪三越

【三越350年の記憶】その3:大阪三越

「三越350年の記憶」プロジェクトの鈴木です。商業史上、重要な役割を果たしてきた三越の歴史を後世に残すため、史料を収集しています。将来的にはデジタルライブラリーとして一般公開したいと考えます。

それぞれの史料に関する思い出などがございましたら、コメント欄に記して頂けると有り難いです。あわせて記録しておきたいと思います。

さて、今回も「大阪三越」です。

この写真の右奥の地上7階の建物は1917

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【三越350年の記憶】その2:本店仮営業所

【三越350年の記憶】その2:本店仮営業所

「三越350年の記憶」プロジェクトの鈴木です。商業史上、重要な役割を果たしてきた三越の歴史を後世に残すため、史料を収集しています。将来的にはデジタルライブラリーとして一般公開したいと考えます。

それぞれの史料に関する思い出などがございましたら、コメント欄に記して頂けると有り難いです。あわせて記録しておきたいと思います。

さて今回はちょっと複雑です。「本店仮営業所」です。

掲載の絵葉書を見つけ

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【三越350年の記憶】その1:催事場

【三越350年の記憶】その1:催事場

「三越350年の記憶」プロジェクトの鈴木です。商業史上、重要な役割を果たしてきた三越の歴史を後世に残すため、史料を収集しています。将来的にはデジタルライブラリーとして一般公開したいと考えます。

さて、今回は「催事場」です。
掲載した史料は「御婚礼衣裳陳列会」「趣味の衣裳陳列会」のパンフレットです。この史料にも年代の記述はありません。手掛かりとしては、「四階西館」「五階西館」との催事場の位置。19

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我々は此意味で学者の助力を仰ぐ ~三越の古典に学ぶ その21~

我々は此意味で学者の助力を仰ぐ ~三越の古典に学ぶ その21~

日比翁助は「学俗協同」の精神を大切にしていた。それは、単に経営者として利益追求を目的とするのではなく、殖産興業、国の発展に貢献するのがビジネスであるとの信念だったと思う。

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○商人は学者と提携せよ
◎学者を軽視する実際家
実際家は兎角学者を軽視する傾がある。
併し商人は日に日に進歩しつつある人を対手とするものである。一時一刻と雖も時に後れてはならぬ。記者が一時間に五十哩(マイル

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売った後が大切なのに…顧客放置戦略をとってませんか?

売った後が大切なのに…顧客放置戦略をとってませんか?

売った後こそ、大切なのに…。
そう思うことがあります。売り込むためには色々手を尽くすのですが、一度売れてしまうとその後は別の売り込みに気持ちが移ってしまっているようなのです。家電でも自動車でもそうなのですが、購入前には消費者はいろいろ調べて比較検討して商品を決定していると思うのです。

しかし、当該商品のカタログを一番真剣に読み込んでいるのは、実は商品を購入した後だ、と聞いたことがあります。消費者

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先づ茲暫くは、学校出の人と経験のみで来た人の如何なる優劣があるか、試験時代である ~三越の古典に学ぶ その20~

先づ茲暫くは、学校出の人と経験のみで来た人の如何なる優劣があるか、試験時代である ~三越の古典に学ぶ その20~

日比翁助専務は人材の育成・活用に大いに関心を持っていたことが伺える。特に取り扱い商品の拡大を図るにあたって、旧来からの呉服については丁稚奉公からの社員を当て、新規事業については学校卒業生を当て、それぞれの成果を認めていた。

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○私の人物採用の方針
◎経験と手腕
外国のデパートメントストーワは、極く上等な品物から台所道具に至る迄、あらゆる品物を販売して居るが、日本の現状は未だ夫れ

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染織業の発達に資し精粹を全国に抜かんと欲す ~三越の古典に学ぶ その19~

染織業の発達に資し精粹を全国に抜かんと欲す ~三越の古典に学ぶ その19~

伊勢丹との経営統合以前の三越の経営戦略の基本となっていたのは「顧客営業戦略」であると捉えている。耳目を集める広告で認知を高め、魅力的な催事・快適な店舗環境で来店を促し、魅力的な商品と公平な接遇で再来店を促し、生涯顧客へと育成していくというものである。1908年に仮営業所が竣工し、徐々に店内環境を整えつつあった三越は、催物についても充実を図るべく、全国に銘品を求めたと言える。

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吾人は製品は広く精粋を全国に求め其優等なるものを選んで愛顧の諸君に供給せんことを期して居る ~三越の古典に学ぶ その18~

吾人は製品は広く精粋を全国に求め其優等なるものを選んで愛顧の諸君に供給せんことを期して居る ~三越の古典に学ぶ その18~

いわゆる製造小売にはならないとの宣言なのだが、その一方で広く全国に埋もれた職人、銘品をもとめて、場合によっては育成することで精巧品を品揃えしていくという活動を繰り返していた。

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第二編 商略の秘密
○私が従来執り来りし商品の仕入の方針
◎商店が工場を設置するの不可
商品の仕入は商家の最も重要とする所である。低廉に精良なるものを仕入るるを得ば優に市場に独歩し優勢を占むべしと雖も、

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「経営者は現場のことを分かってないんですよ」

「経営者は現場のことを分かってないんですよ」

今年(2024年)3月21日の『毎日新聞(朝刊)』に「人を動かすナラディブ 人生をつむぐ聞き書きの力」という記事がありました。
「誰かが語る人生の物語に耳を傾け、話し言葉のまま書きとめて手作りの本にする。そんな『聞き書き』が近年、広がりを見せているという。」

こんな言葉から始まる記事でした。私も永らく労働組合専従として、職場環境の改善にむけて膨大な数の組合員の方々のヒアリングをして、その声を文章

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其責任は我店が受けなければならぬ ~三越の古典に学ぶ その17~

其責任は我店が受けなければならぬ ~三越の古典に学ぶ その17~

商売に苦情は付きものである。現在では、テナント販売や委託販売ばかりとなり、お客様からの苦情は直接百貨店側に入ってこない。もしくは入ってきても、取引先に苦情対応を任せてしまっていることがほとんどのようである。

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◎真物を贋物なりとの苦情
是も亦近頃のことであつた。地方の客から渡邊省亭市の蓬莱山の書を注文され、早速之を郵送した。
私の店の書画は直接に筆者に揮毫を依頼したものである。

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ポイントで獲得した顧客は、ポイントで離反する

ポイントで獲得した顧客は、ポイントで離反する

“経済的特典で獲得した顧客は、経済的特典で離反する”
例えば、ポイント制度。

ビジネススクール時代における研究テーマは顧客ロイヤルティでした。百貨店個人営業部門に在籍していた時に、担当者と顧客の信頼関係の重要性を現場の販売促進担当者として実感していたからです。お客様からは「担当の○○さんの成績にしておいてあげてね。」とか、「○○さんが勧めてくれるならば間違いないわね。」などとの会話が日常的聞かれ

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