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「国民はバカだ」 の実例が 〈ネトウヨ〉である。 : 古賀茂明 『官邸の暴走』

書評:古賀茂明『官邸の暴走』(角川新書)

安倍政権とその路線を引き継いだという菅政権(口から出まかせの前首相と、まともに話せない現首相)の酷さは言うまでもないが、問題は、それをいまだに支持容認する日本国民の民度の低さと言うか、その「小賢しい諦めのよさとニヒリズム」であろう。

そして、こんな「悲惨な現実」が見えている者なら、絶望的な気分になりながら、それでも必死に自身を叱咤して闘い続ける古賀の姿に、どうしたって、痛みを伴った同情と共感を禁じ得ないはずだ。

実際、本書後半でも紹介されているとおり、世界における日本の地位は、目を覆わんばかりに低下している。
だが、そんな「現実」を見ることができずに、いまだに「日本すごい」という自慰的幻想にしがみついて現実逃避している「ネトウヨ」たちは、同様に、いまだに「WGIP」がどうとかと「知ったかぶり」を書いては、自己正当化の自己満足に浸っていたりするのだが、言うまでもなくこれも「中身のない雑学のひけらかし」に過ぎない。

「WGIP」とは「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」のことで、江藤淳あたりが最初に大騒ぎし始め、いまではネトウヨが、これ見よがしに担いでまわる「定番ネタ」だ。
要は、敗戦後の日本で、占領軍が日本国民に対し「日本が悪かった」という「洗脳的教育・宣伝」をやったのだ、本当は日本は悪くないのに一一という、ただそれだけの話。

しかし、天皇が「現人神」だとかいった「洗脳」教育によって「殉教=殉死=散華」を「正しいこと・美しいこと」だと思い込まされていたような「被洗脳状態にあった日本人」に対し、占領軍が、その「洗脳はずし」を行うのは、理の当然である。
それは、「オウム真理教」の信者を「社会復帰」させるために、「ポアは、救いではなく、単なる殺人です」といった「洗脳はずし(逆洗脳)」が必要だったのと、まったく同じ事情なのだ。

だが「WGIP」が、何か「すごい発見的事実」だとでも思い込んでいる、日頃から本を読まないネトウヨは、それをことさらに略号で「WGIP」と書いて「もったいぶる」。

なぜかと言えば、彼らは「俺はこんなことも知ってるんだよ。歴史を知らないパヨクは、WGIPも知らんだろうがね」と自慢したいからなのだ。ただ、それだけ。だから、説明しない。
要は、学のない人間ほど、つまらない知識を「知ったかぶり」でひけらかしたがる、業界用語を使いたがる、ということなのだ。

一一しかし、こういう馬鹿が、そこそこ目立つほどには存在するから、権力者も、日本国民をなめてかかる。

「モリカケサクラ」も、「オリンピック」をやって盛り上がれば、3日で忘れてくれるだろう、などとなめられ、実際、そうなるのである。
日本人の少なからぬ人が、そんな「鳥頭」(三歩あるいたら忘れる)であり、その極端な実例が「ネトウヨ」なのだ。

『 集団的自衛権の行使容認について、閣議決定前の(※ 20)14年5月に安倍(※ 晋三)氏が行った記者会見が印象に残っている人も多いだろう。そこには「赤ちゃんと子ども連れた日本人のお母さん」が外国で戦争に巻き込まれ、米国艦船で脱出しようとしているという設定のイラストパネルが置かれていた。そして、集団的自衛権を行使できなければ、この米国艦船を日本は守ることができない、と安倍氏はその必要性を滔々と語ったのだ。
 だが、これはそもそもの設定からしてあり得ない話である。紛争が起こった場合、一般的には各国艦船は民間人を乗船させず、民間の船や飛行機に輸送を要請するのが「軍事的常識」だ。軍の艦船は「敵」に攻撃され、民間人が巻き添えになる可能性が高いからだ。避難民に化けたテロリストが、艦船に乗り込んでくるのを防ぐ目的もあるという。
 この会見は、安倍氏と官邸官僚らの「国民は馬鹿だ」という一貫した哲学に支えられた戦略だった。赤ちゃんと子どもを連れた日本人のお母さんのパネルを見せれば、国民は馬鹿だから、集団的自衛権に賛成するはずだと考えたのだ。同時に、馬鹿なマスコミも馬鹿な国民に迎合する、という冷徹な読みもあったのだろう。』(P60)

見るからに馬鹿な日本人が、目の前でわいわい騒いでいるのを見ると、もうウンザリして「日本も終わりだな」と、そんな弱音を吐きたくもなる。

だが、私たちは、そんな馬鹿をも含めた「多様性」を引き受けるリベラル(「左翼」でも「パヨク」でも、好きに呼べばいいが)なのだから、そんな人たちでも、この先も呑気に生きていける日本を守らなければならない。厳しい戦いではあるが、それが、「見えている人間」に与えられた使命なのであろう。

初出:2021年7月13日「Amazonレビュー」
  (2021年10月15日、管理者により削除)

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