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素敵なコンテンツの集い

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素敵な記事を勝手ながら集めさせていただきます! いつも心が揺れるような投稿をありがとうございます(´∀`*) 迷惑でしたらお手数ですがお声がけいただけると幸いです🙇‍♂️
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#小説

【掌編小説】ボクたちはナンバーワンでもオンリーワンでもなかった

【掌編小説】ボクたちはナンバーワンでもオンリーワンでもなかった

 晩秋の夕方は短い。
 ボクが下宿先に帰ろうと大学を出た頃には、既に空は暗くなっていた。
 駅までの道程では、昔から学生向けに営業をしている喫茶店や古本屋が、チェーンの牛丼屋やカレー屋と軒先を並べている。店先で明るいオレンジ色や赤色が目立っているのは、ハロウィーンやクリスマスに向けての装飾のようだ。
 楽しそうに大声で笑いながら数人の男たちが居酒屋に入っていく。アルコールを呑む前から意気揚々の様子

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わさび

「またぁ? 何人めよ、もう」

 いい加減うざい、という顔で、晴菜がこちらを見た。ちらりと横目で確認しつつ、今日二つ目の玉子をレーンから取る。

「でも、合わなかったんだもん」

 醤油にわさびをたっぷりと溶かして(さっきも溶かしていたのに辛くないのだろうか)、玉子に巻かれた海苔を丁寧に箸で剥がす。まず海苔を醤油に浸す。それから玉子の内側も。またやってるよ、とじろじろ見ながら、あたしは言う。

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『大人だって読みたい!少女小説ガイド』嵯峨担当作品リスト

『大人だって読みたい!少女小説ガイド』嵯峨担当作品リスト

嵯峨景子・三村美衣・七木香枝編『大人だって読みたい!少女小説ガイド』(時事通信出版局)告知第二弾です。私がレビューを担当した作品リストを一足先に公開します。諸々調整の結果、最終的には当初の予定よりかなり増え、93作品担当することになりました。私は「少女小説の人気作ヒット作を取り上げる」、「最新の作品を入れる」、「偏愛作品を紹介する」を柱に作品を選んでいます。数が多いので、レーベルごとにわけてご紹介

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【掌編小説】僕が知らなかったことと知っていること

【掌編小説】僕が知らなかったことと知っていること

 僕は知らなかった。
 一目惚れというものが、本当に存在することを。

 一目惚れなんて、実際にはあるはずがない。そりゃ、女の子を見て「可愛いな」と思うことはあるかもしれないけど、相手の性格や趣味なんかをよく知りもしないのに、突然恋に落ちるなんてあるはずがないじゃないか。それは、登校時に曲がり角でぶつかった美少女が実は自分のクラスの転校生だったとか、自分が知らないうちに親が決めていた許嫁が前触れも

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青いキャンバス

青いキャンバス

 砂利道には、薄いスニーカーで歩くとときどき足裏が痛い程度に石ころが転がっていた。行く手の地平線の先に眩しい太陽が光っていて、帽子を目深に被り直す。走って横を追い越していくひと、同じ速さで歩いていくひと、しゃがんで沿道の小さな花を見つめているひと。そこまで見て初めて、沿道に花が咲いていることに気がつく。

 世の中、見えていないことばっかりだなあ。

 わたしはのんびりと歩く。風が気持ちいい。どこ

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生き方をデザインする。

生き方をデザインする。

子供の頃、1度はこんな妄想に耽ったことはないだろうか。

「もし、魔法が使えたのなら」
「もし、私に秘められた才能があったなら」
「もし、白馬の王子様に求愛されたなら」

恥ずかしながら、私も幾度となくそんな事を妄想していた時期はある。
そんな思春期を乗り越え、一旦落ち着いたかと思いきや、社会人になって大多数の大人がこの妄想病を再発させるのだ。

自分の思い描いた理想とは程遠い生活、淡々と過ぎてい

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深夜の独り言 23

深夜の独り言 23

大学で、対面授業が始まりました。初めて会うひとたちと肩を並べて授業を受けることはとても新鮮で、でもそうだ、学校ってこういうところだったなと思い出します。一緒に勉強する仲間がいて、教えあって。毎日のように、他人とご飯を食べる。朝起きたら支度をして、今日一日頑張るぞ、と思いながら家を出る。帰ってきたら、こんなことがあった、あれが楽しかったと思い出す。

夜眠る前に、今日を振り返ると、ああ疲れた、でも楽

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月夜の口紅 エピローグ

月夜の口紅 エピローグ

月夜の口紅 1/4

 冬場は日が暮れるのが早い。住野くんが小さなあくびをして、もう外真っ暗じゃん、と呟いた。交換ノートを閉じて立ち上がる。

「そろそろ昇降口閉まるから早く帰りなよ」

 嫌がる住野くんを急かす。ボールペンを、かち、かち、かち。

「わかったよ、帰ればいいんでしょ。帰るから怒らないでくださいよ」

 住野くんは出していた筆箱と裏紙の束を鞄に詰め込んで、きいと音を立てながら椅子を引

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【短編小説】塩を入れる。そして砂糖をぶち撒ける。

【短編小説】塩を入れる。そして砂糖をぶち撒ける。

 
 カタン。

 紅音は塩を煮物に入れ、それを元の場所に戻す。
 それが運悪く、隣に置いてあった砂糖に指が当たった。
 その拍子に、塩と砂糖の入れ物がガシャンと床へ落ちる。

 キッチンに敷かれたカーペットが真白くなり、私は慌てて腰をおろした。
 紅音はしゃがみこんだまま、「えっとえっと」と戸惑うように呟く。

 口はあわあわと忙しなく動くが、目はじっとその白くなった床をじっと見つめている。
 

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静 霧一 『空の舞姫』

静 霧一 『空の舞姫』

「―――痛っ!」
 私は挫いた足首に顔を歪ませる。
 左足を使って恐る恐る床に座ると、私はテーピングで固定された細い足首を擦った。
 骨の奥を走る神経が、じんじんと鈍痛を発し、無言で私の心を殴りつける。

「危ないから、今日は隅で休んでいなさい」
 先生が私の背中をさすりながら優しく呼びかける。
 私はその優しい声に、自分の声を殺して涙を流した。

 バレエ教室の隅、鏡と壁の境界線に私は座り込む。

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色々

色々

青と黄色を混ぜると緑になるだなんて
誰が思いついたんだろう
そのひとはきっと気張った日々に疲れて
癒やしを求めていたんだろう

僕が見ている世界の色と
君が見ている世界の色は
同じようで きっと違って
名前を与えた 不確かな言葉で

世界は色にあふれていて
愛するひとは光を放って
つまらない日々が色付いて
緑の中で微笑んだ優しいひとよ

すべての色を混ぜると黒になるだなんて
誰が思いついたんだろう

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静 霧一 『水天一碧』

静 霧一 『水天一碧』

(序) 

 冷たい水の中に溺れてゆく。
 不思議と、苦しいとは感じなかった。
 むしろ「あぁ、私は溺れていくんだな」と、思えるほどであった。
 心許なく光っていた街頭の灯りがだんだんと薄くなっていく。
 私は静かに目を瞑り、「これでいいんだ」と細かな水泡となっていく命を吐き切った。

(一)

 水天一碧。
 空と海の境界線が溶けた世界に私は棲んでいた。
 たった一人、教室の隅の席で、私は佇んで

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水溜まり

水溜まり

楽しいことから始めよう
でも楽しいってなんだっけ
話題の本もアニメも音楽も
好きも嫌いもない ただそこにあるだけ

例えば光のない瞳が
意地悪く笑う眉が
小刻みに動く頬の筋肉が
僕に何をするっていうんだろう
好きも嫌いもない ただそこにあるだけ

みんな当たり前のように歌っている
妄想 夢 喜怒哀楽
わからないよ 知らないよ
寝て起きて食べて寝る僕に
それ以外 何か必要なのかい

悲しいことは止め

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【大自然シリーズ】汎用性の高い大地ワードはこれ!

【大自然シリーズ】汎用性の高い大地ワードはこれ!

人間が、生きる上で拠点としているのが大地です。つまり、最も馴染みのある自然です。

そんな大地ワードを大地・植物・花の3ジャンルに分けました。

今回の大地ワードは歌詞によく使われるので、作詞する方は要チェックです!

ワード大地
化石、丘、大地、野原、草原、平地、土壌、荒野、火、炎、煙、岩、石、石ころ、空洞、絶壁、木漏れ日、砂、砂嵐、砂地、砂漠、砂が舞う、砂利、土、泥、粘土、いばら、湿る、道、雫

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