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デンマークでの気づき

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デンマークで得た気づきを綴っていきます。
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フォルケホイスコーレ

フォルケホイスコーレ

「ダイアローグ」が壁を乗り越える力に

フォルケホイスコーレ

デンマークにはフォルケホイスコーレという「北欧独自の成人教育機関」が
70校ほどある。

今ではそれぞれの学校が何かしらの特色を持っていて、私が入学したのはエグモントホイスコーレという障がい福祉に特化した学校だ。

他の学校では、スポーツやアート、デザイン、シニア、スピリチュアリティ、伝統など様々な選択肢がある。

共通したコンセプト

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自分自身の才能を知る

自分自身の才能を知る

 デンマークでは、ヴィルヘルムハーツというハンドメイドの杖の職人の工房で半年間、丁稚奉公もした。日本でその杖を広める窓口をしているので、今でもその職人とのやり取りがある。

 先日、「なぜか東京にいると、見えないプレッシャーに襲われて自分を見失いそうになることがある」という感覚を打ち明けた時。職人は真っ直ぐこちらを見て言った。

 「人は自分の才能を活かして、誰かにとっての価値を作ることが大切なの

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循環を創る国

循環を創る国

長期的な視点が大切な「循環」

デンマークで過ごした1年を通して見えてきたことは、様々なことが循環するようにシステムが組んであるし更新されるということだ。

短期的視点ではなく、長期的な視点で。

大きいところでいうと、各々が現時点で「こんな国にしていきたい」という想いから、今自分にできることをやり、次の世代に何を残していったらよいのかを考え、実行し、その次の世代がそのさらに次の世代に残すことを考

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オズモンドとの出会い

オズモンドとの出会い

デンマークで半年間、丁稚奉公をしたハンドメイドの杖の職人にはオズモンドという自閉症の息子がいた。

移り住んだ当日、コーヒーを飲みながら職人たちと話していると、オズモンドが学校から帰宅し

「Hello, I am Osmond.」

と自己紹介してくれた。

自閉症ではいつもと違うことが起こるとパニックを起こしてしまうことがあるが、日本人の男性がこの家に来ることを前もって伝えてくれたようだ。

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ギャップイヤー

ギャップイヤー

立ち止まって考えることが許される国

エグモントホイスコーレは、17歳半以上であれば誰でも入学できる北欧独自の教育機関(フォルケホイスコーレ)の1つである。

そこに入学して驚いたことは、周りの生徒が高校を卒業し、大学に入る前の人たちが多いことだ。この教育機関は義務教育ではないため学費がかかる。

そんな学校に多くの人たちがいる理由に

「ギャップイヤー」

という風習があることが分かり、さらに驚

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自分の家を建てる(2)

自分の家を建てる(2)

自分で選び、責任を持つ喜び

ヴィルヘルムハーツという名のハンドメイドの杖の職人の所に丁稚奉公をすることになり、まず最初の仕事は自分が住むための小さな家を建てることからだった。

デンマークは室温を年中20〜22度の間に保つことが義務付けられており、建築物に関して断熱材の量まで厳しく決められている。

「人が心地いい空間を作るのが大工の仕事」

と、人を何よりも優先するという文化を目の当たりにした

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自分の家を建てる(1)

自分の家を建てる(1)

信じてもらうために、信じる

ヴィルヘルムハーツというハンドメイドの杖の職人の所に丁稚奉公をすることになり、いざ彼と彼の家族が待つ家に移住したその日のこと。コーヒーを飲みながら彼が言った。

「実はNao(筆者の呼び名)が住む家のスケッチを描いていたんだ。キャンピングカーを買おうかと迷ったが、冬は寒過ぎて、過ごせたもんじゃないから…建てた方が良いと思ってね」。

僕は驚きの余り「アメイジング!」ぐ

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Digging Angry(穴掘り怒り)

Digging Angry(穴掘り怒り)

疲れをコントロールするのがプロ
デンマークでは、ヴィルヘルムハーツというハンドメイドの杖の職人の工房で半年間、丁稚奉公もした。彼の本職である建具屋の仕事を手伝っていた時のこと。

庭先にサンルームを造るために、地面をシャベルカーで掘り起こし、深く張った根を手作業で地面から取っていた。ただひたすら根を引っこ抜いては脇に寄せる…。

それを黙々と続けていたらふと、無性に自分に腹が立ってきた。

「なん

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インフルエンザ

インフルエンザ

自分の身体を知る

健常者と障がいを持つ生徒が共に暮らして学ぶ、エグモントホイスコーレに入学して3カ月が経った頃、インフルエンザのような症状に見舞われた。デンマークでは住民になるとイエローカードと呼ばれる保険証のようなものをもらえ、外国人も医療費は無料になる。

2日目には我慢できなくなり、先生に「病院に行きたい」と相談すると、衝撃的な答えが返ってきた。「デンマークでは、そんな風邪は1週間寝てくだ

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「まわりの視線が怖い。」そんな生きづらさがあったからこそ、できることがある。-尚工藝代表・宮田尚幸さん-

「まわりの視線が怖い。」そんな生きづらさがあったからこそ、できることがある。-尚工藝代表・宮田尚幸さん-

「生きづらさを抱えていた僕でも、今こうして社会に関われている。生きづらさはかるくなる、ということを伝えたいんです。」

デザイナー・宮田尚幸さんとメールでやりとりするなかで、そんな言葉と出会った。

「生きづらさ」には、僕も心あたりがある。大学時代、人の視線がこわくて、就職活動はおろかバイトもできず、ニートになった。病院に行くと、「社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorde

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キャッシュレス社会

キャッシュレス社会

「幸せ」のために手を取り合う

デンマークで暮らし始めて現金を全く使っていないことに3カ月目で気がついた。一番の要因は「モバイルペイ」に尽きる。銀行口座と電話番号が紐づいた、スマートフォン用の送受金アプリだ。

健常者と障害を持つ生徒が共に暮らして学ぶ、エグモントホイスコーレに入学して最初のパーティーに参加した時のこと。若者2人が目の前でこんなやり取りをした。

「タバコ1箱もらえない?」「ありが

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「対話する」ということ

「対話する」ということ

多様性を認め合うプロセス

デンマークでは、人の数だけ考え方があるのは当然で、みんなの考えをシェアした上で一緒に何ができるかを考えることはとても自然なこととなっている。

それを可能にしている要因の1つが

「対話」

ではないかと思う。

彼らは日常生活の中でも、とにかくよく集まって話をしている。

世代を超え、家族でも友達でも、職場でも、そこに人がいれば対話があると言ってもいい。

健常者と障

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なんでもやらせる

なんでもやらせる

日本で7年間文具や服飾雑貨の開発デザインをしておりましたが、2018年全てを辞め、1年間デンマークに住むことに。デンマークでは、北欧にしかない「フォルケホイスコーレ」という教育機関の中の、障がいを持っている方、持っていない方が一緒に生活することで、共生とは何かを学ぶ学校である「エグモントホイスコーレ(以降エグモント)」で半年間寮生活。もう半年は、松葉杖をハンドメイド・オーダーメイドしている工房に住

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