宮田 尚幸

尚工藝、風と地と木 合同会社代表。日本で文具、服飾小物のデザインに従事後、デンマークの…

宮田 尚幸

尚工藝、風と地と木 合同会社代表。日本で文具、服飾小物のデザインに従事後、デンマークの福祉で有名なEgmont Højskolenへ留学。杖職人の家に住込でインターン、デンマークのモノづくりや働く姿勢を学ぶ。北欧の生き方を中心に書き綴ります。

マガジン

  • 風と地と木

    Design for Care / 風と地と木 合同会社

  • デンマークでの気づき

    デンマークで得た気づきを綴っていきます。

  • 尚工藝

    ダイアローグを大切にするデザイン事務所

  • Vilhelm Hertz Japan

    Vilhelm Hertz(ヴィルヘルム・ハーツ)についての物語や商品についての説明を書き綴っていきます。

  • デンマークで小さな家を建てる

    ひょんな事からデンマークで小さい家を建てることに。その完成までの経過を、日々起きたことを含めて書き綴ります。

最近の記事

14日間の旅 – デンマークから南アフリカへ −

言葉がなくても、通じ合おうとする姿勢○南アフリカを選択 エグモントホイスコーレは、17歳半以上であれば誰でも入学できる北欧独自の全寮制の教育機関(フォルケホイスコーレ)の1つである。障害を持った学生と持っていない学生が共に生活をして、どうやったら壁がなく人は生きられるのかを身をもって学ぶのが特徴である。そこに在学中の期末に修学旅行があり、私は南アフリカを選択。他にはイスラエルやフランス、イタリア、日本などいくつか選択肢があった。修学旅行は14日間。とても長いと思ったが、後日

    • リサイクルセンター

      自然な循環を生み出す仕組み○リサイクルされるモノを置きに来ている デンマークの各コムーネ(自治体のようなもの)に、平均1、2カ所はある巨大なリサイクルセンターにはとても驚いた。運営は税金でまかなわれており、切り倒した木から、土、大きな金属や木材、家電製品、電気製品、布製品…と〝家庭ゴミ〟以外は自由に持ち込むことができる。老若男女がせっせとものを運んでいる様子は「ゴミを捨てに」というよりも「リサイクルされるモノを置きに来ている」というように感じた。 ○社会全体がかかわる大き

      • フォルケホイスコーレ

        「ダイアローグ」が壁を乗り越える力に フォルケホイスコーレ デンマークにはフォルケホイスコーレという「北欧独自の成人教育機関」が 70校ほどある。 今ではそれぞれの学校が何かしらの特色を持っていて、私が入学したのはエグモントホイスコーレという障がい福祉に特化した学校だ。 他の学校では、スポーツやアート、デザイン、シニア、スピリチュアリティ、伝統など様々な選択肢がある。 共通したコンセプト 全てのフォルケホイスコーレに共通しているコンセプトは、原則として 17歳半

        • 風と地と木とは

        14日間の旅 – デンマークから南アフリカへ −

        マガジン

        • 風と地と木
          1本
        • デンマークでの気づき
          13本
        • 尚工藝
          1本
        • Vilhelm Hertz Japan
          5本
        • デンマークで小さな家を建てる
          16本

        記事

          自分自身の才能を知る

           デンマークでは、ヴィルヘルムハーツというハンドメイドの杖の職人の工房で半年間、丁稚奉公もした。日本でその杖を広める窓口をしているので、今でもその職人とのやり取りがある。  先日、「なぜか東京にいると、見えないプレッシャーに襲われて自分を見失いそうになることがある」という感覚を打ち明けた時。職人は真っ直ぐこちらを見て言った。  「人は自分の才能を活かして、誰かにとっての価値を作ることが大切なのだと思う。そしてその誰かがまた誰かの価値を生み出せるような…。価値とはお金ではな

          自分自身の才能を知る

          尚工藝の意味

          「尚」= “更に” 「工藝」= “機能的なものに美的装飾を加える” 「藝」= “草木を育てるように、普遍的な価値を育む” という、漢字のもつ意味を込めて、この屋号に。 美しさがより物事を円滑に機能させるということを信じて、普遍的な価値を育めるようなデザイン(モノ、平面、ブランド)の役割を目指しています。

          尚工藝の意味

          離婚もオンライン

          デンマークでの気づきの1つに、結婚の制度や価値観の違いがある。 デンマークの離婚率は45%近くあり、日本よりも高い。 その要因の1つとして、オンライン離婚が可能なこともあげられるのではないか。 約7千円払ってクリックするだけで、1週間以内に離婚が成立する。 養育費など支払う必要がある場合は、区に支払い、区から振り込まれる。 この制度側のシステムも人間のデリケートな部分をうまく支えてくれていると思う。 「男女の社会的地位がイコールになっている上に、変化が大きい社会で

          離婚もオンライン

          2018JAN05

          15:20 日本出国 この日から転出扱いになるので日本の住民ではなくなる。 23:30 Copenhagen着 Copenhagen airport から Central stationに電車で行き、そこからバスでAndy(4年前にカウチサーフィンで知り合い家に宿泊させてもらっていた友達)の家に向かう予定が、空港から電車が出発して2、3駅進んだところで停止して20分程度ストップ… 挙げ句の果てに空港にもどるから、そのまま乗っているか ここの駅で降りてMetroを使うか

          循環を創る国

          長期的な視点が大切な「循環」 デンマークで過ごした1年を通して見えてきたことは、様々なことが循環するようにシステムが組んであるし更新されるということだ。 短期的視点ではなく、長期的な視点で。 大きいところでいうと、各々が現時点で「こんな国にしていきたい」という想いから、今自分にできることをやり、次の世代に何を残していったらよいのかを考え、実行し、その次の世代がそのさらに次の世代に残すことを考える。そうすると、自ずとその逆転も起こり、若い世代が上の世代に何をしたいのかを考

          循環を創る国

          オズモンドとの出会い

          デンマークで半年間、丁稚奉公をしたハンドメイドの杖の職人にはオズモンドという自閉症の息子がいた。 移り住んだ当日、コーヒーを飲みながら職人たちと話していると、オズモンドが学校から帰宅し 「Hello, I am Osmond.」 と自己紹介してくれた。 自閉症ではいつもと違うことが起こるとパニックを起こしてしまうことがあるが、日本人の男性がこの家に来ることを前もって伝えてくれたようだ。 そのまま彼は薪割りをし始め、「この斧はこういう時に、こうやって使うんだ」と、英語

          オズモンドとの出会い

          ギャップイヤー

          立ち止まって考えることが許される国 エグモントホイスコーレは、17歳半以上であれば誰でも入学できる北欧独自の教育機関(フォルケホイスコーレ)の1つである。 そこに入学して驚いたことは、周りの生徒が高校を卒業し、大学に入る前の人たちが多いことだ。この教育機関は義務教育ではないため学費がかかる。 そんな学校に多くの人たちがいる理由に 「ギャップイヤー」 という風習があることが分かり、さらに驚いた。 ギャップイヤーとは中学や高校、大学を卒業後に1~2年、人生を立ち止まっ

          ギャップイヤー

          自分の家を建てる(2)

          自分で選び、責任を持つ喜び ヴィルヘルムハーツという名のハンドメイドの杖の職人の所に丁稚奉公をすることになり、まず最初の仕事は自分が住むための小さな家を建てることからだった。 デンマークは室温を年中20〜22度の間に保つことが義務付けられており、建築物に関して断熱材の量まで厳しく決められている。 「人が心地いい空間を作るのが大工の仕事」 と、人を何よりも優先するという文化を目の当たりにした。そして、だんだんと家に近づいていくと「部屋に入って目を閉じて立ってごらん」と、

          自分の家を建てる(2)

          自分の家を建てる(1)

          信じてもらうために、信じる ヴィルヘルムハーツというハンドメイドの杖の職人の所に丁稚奉公をすることになり、いざ彼と彼の家族が待つ家に移住したその日のこと。コーヒーを飲みながら彼が言った。 「実はNao(筆者の呼び名)が住む家のスケッチを描いていたんだ。キャンピングカーを買おうかと迷ったが、冬は寒過ぎて、過ごせたもんじゃないから…建てた方が良いと思ってね」。 僕は驚きの余り「アメイジング!」ぐらいしか返答できていなかった。自分の住む家を建ててくれるということに現実味がなく

          自分の家を建てる(1)

          Digging Angry(穴掘り怒り)

          疲れをコントロールするのがプロ デンマークでは、ヴィルヘルムハーツというハンドメイドの杖の職人の工房で半年間、丁稚奉公もした。彼の本職である建具屋の仕事を手伝っていた時のこと。 庭先にサンルームを造るために、地面をシャベルカーで掘り起こし、深く張った根を手作業で地面から取っていた。ただひたすら根を引っこ抜いては脇に寄せる…。 それを黙々と続けていたらふと、無性に自分に腹が立ってきた。 「なんで自分はこんなことをしているのだ…わざわざ日本から来てるのに」。 それでも、作

          Digging Angry(穴掘り怒り)

          インフルエンザ

          自分の身体を知る 健常者と障がいを持つ生徒が共に暮らして学ぶ、エグモントホイスコーレに入学して3カ月が経った頃、インフルエンザのような症状に見舞われた。デンマークでは住民になるとイエローカードと呼ばれる保険証のようなものをもらえ、外国人も医療費は無料になる。 2日目には我慢できなくなり、先生に「病院に行きたい」と相談すると、衝撃的な答えが返ってきた。「デンマークでは、そんな風邪は1週間寝てくださいと追い帰されるだけだよ。」 これが医療費無料の国の代償?熱は上がるし身体中

          インフルエンザ

          キャッシュレス社会

          「幸せ」のために手を取り合う デンマークで暮らし始めて現金を全く使っていないことに3カ月目で気がついた。一番の要因は「モバイルペイ」に尽きる。銀行口座と電話番号が紐づいた、スマートフォン用の送受金アプリだ。 健常者と障害を持つ生徒が共に暮らして学ぶ、エグモントホイスコーレに入学して最初のパーティーに参加した時のこと。若者2人が目の前でこんなやり取りをした。 「タバコ1箱もらえない?」「ありがとう」と1人から受け取り、スマホを取り出し、モバイルペイのアプリからタバコの代金

          キャッシュレス社会