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書評

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#フランス

花のノートルダム【ジュネ書評】

読み終わる。

巻末。

手紙の出だし。

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1942年

創造を終え、

この手紙を書いているときのジュネ、貴方は

心底、物語を作る喜びを感じていただろう。
(本作は獄中で書かれた)

すくなくともわたしならそう感じる。

この美しい手紙を読んだら

わたしは泣くかもしれないし、

はたまた、

さすがジュネ、とでもいえるような可憐な裏切りに直面し

苛立つかもしれない

期待は恐

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「EDENA」English Edition【Moebius書評】

「EDENA」English Edition【Moebius書評】

フランスにコミック文化があるのをご存知だろうか。

Moebius(Jean Giraud)は1938年フランス生まれの漫画家、アーティスト(2012年没)。
SF、ファンタジーをメインの作品を数多く手掛け、ホドロフスキーやルネ・ラルーとも制作を共にした。

ホドロフスキー、ルネ・ラルーと聞いて察した方も多いであろうが、かなりユニークなアーティストである。

本作「The World of Ede

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死刑【『監獄の誕生』ミシェル・フーコー】

死刑【『監獄の誕生』ミシェル・フーコー】

甚だおぞましい話であるが、わたしが文学に溺れたきっかけは「監獄」と「死刑」である。

10代になったばかりの頃、『アンネの日記』を読み、そのあとにフランクルの『夜と霧』、収容所の魅力に溺れ、石黒謙吾の『シベリア抑留』、ソルジェニーツィンの『収容所群島』を読んだ。

続いてユゴーの『死刑囚最後の日』ジュネの『花のノートルダム』に『薔薇の奇跡』。

ああ美しい。

 

前置きが長くなってしまったが、

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現代では、いかにも起こりそうな単純な物語が最も異様な話とされている【ゴーチェ「オニュフリユス」書評】

現代では、いかにも起こりそうな単純な物語が最も異様な話とされている【ゴーチェ「オニュフリユス」書評】

19世紀フランスの作家、ゴーチェをご存知だろうか。

数年前、ネルヴァルに関する著書を、(日本語に訳されたものは)おそらく端から端まで読んだ。哀れなネルヴァルの人生には親しき、心優しい友人テオフィル・ゴーチェ(通称テオ)の存在が目立つ。

その年に、ゴーチェの『若きフランスたち』(井村実名子訳)を読んだ。いかにもフランス文学らしい、饒舌で、だけども厭らしくない、大変美しい文章を書く人だなあと思った

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