コルベザグド遺跡の謎 序章
トーイ夫婦は、考古学者だった。
彼らはある日、途轍もない物を発掘する。
とても抱え切れない、秘密。
夫婦は親友である、生物学者のコスタ夫婦に相談する事にした。
そして4人は、この遺跡の研究を秘密裏に進めて行く事を決めた。
調査を進めて、5年。
トーイ夫婦は、10歳の息子を初めて遺跡へ連れて行った。
その時の光景、コスタ夫婦と共に守り抜いた途轍もない物。
ザナウェイ=トーイは、一生忘れないだろう。
その後、4人は姿を消した。
ザナウェイは、両親からデータディスクを預かっていた。
『もし自分達が戻らなかったら、このディスクを開きなさい』
ザナウェイは、すぐさまディスクを開いた。
『コルベザグド遺跡に関する調査報告』
途中まで読み進めると、其処から先はロックが掛かっていた。
パスワードは、知らされていない。
あの言葉だろうか。
恐らくそうだろうと言う確信はあったが、それ以上あの遺跡について知るのが怖かった。
2年間。
児童施設で生活しながら、ザナウェイは時を待った。
そして、12歳の時。
「ヴィエ…俺と来るか?」
同じ施設で育ったコスタ夫婦の息子、7歳のヴィエスタ=コスタに手を差し出す。
「うん…ザンと行く…ザンと一緒がいい」
ヴィエスタは、ザナウェイの手を取った。
2人は、廃墟のような空きビルに小さな小さな探偵事務所を開き、様々な仕事、様々な人脈、様々な技術、様々な情報…何でも、2人で掴み取りながら生きた。
そして…21年後。
ザナウェイは、姿を消した。
『すぐ、戻るさ…この事務所を頼んだぞ、ヴィエ』
その笑顔をかき消す様に、ヴィエスタは煙草の煙を吐き出した。
「っざけんな…クソ、ザン…っ」
手には、あのデータディスクが握られている。
追うべきか、追わざるべきか。
ヴィエスタは、21年間で集まった愛すべき事務所の面々に夕食を振る舞うべく、皆が待つキッチンへと向かった。
ー つづく ー
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