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夏が溶けて、秋が芽吹くはずだった日の夜

雨流る秋に佇む夜の端に僕の家がある。
そこには小さな光を雨伝う街に映しながらコーヒを片手に机に向かう人間がいた。そう、それが僕だ。

すっかり、街は秋の雨を落とし少し前までのじめっとした空気感はなかった。

天井には湯気が現を抜かす。
僕はまだ熱が冷めきっていない珈琲カップに口を付け流し込む。まぁ高々17の身で大人っぽい事に手を出し始めたのは少しばかり後悔することがある。はっきり言うと、僕は珈琲は好きだ。好きだけど熱々の珈琲は苦手なのだ。

でも、珈琲と言えば蒸気を纏った物で、それを平然な顔で飲んで作業をする。そんな大人にひどく憧れてしまっている。多分だけど映画の影響だと思うけど、僕はたまに火傷をしてしまうのだ。

大人の真似度と何て意味がなかった。

湯気がゆらゆらと街の風に吹かれ消え始める頃には珈琲はなくなりかけていた。

ふと、カレンダーを覗くと9月を示していた。
そうか。もう9月なのか。僕は季節が本格的に秋に差し掛かったことに喜びを感じると同時に明日から学校が始まる子供達がいることに少しだけ不安になった。

ふいに、窓を見るといつもなら遠くに見える港を拝むことが出来ないほどに雨は街を隠していく。今、僕と同じように同じ街を眺めている子供たちは一体何を思っているのだろうか。

きっと小さな体の中で喜怒哀楽が渦巻いているんだろうな。

僕は街から目線を逸らすとただひたすらに作業に集中した。

とりあえず、明日の事は考えたくなかった。

街を揺らす轟音と窓に打ち付ける雨音に身体を叩かれた僕は深い集中を解き時計を見るといつの間にか日を跨いでいた。

「もう、次の日か。」

そうやって、僕が放った言葉の先には誰かが作ったてるてる坊主が揺れているのを瞼の裏で見たような、そんな気がした。

そして、僕は、いつかと同じように目を背けた。

結局、僕はくそみたいな大人の真似事のままだったのだ。

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