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土木業界を離れることとなったため、今までの仕事の経験をもとに初めて小説を書きました。 …

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土木業界を離れることとなったため、今までの仕事の経験をもとに初めて小説を書きました。 全85話で完結。約55000字となりました。 街から文学が生まれるのではなく、街づくり文学を目指して、真正面から書きました。 読んでいただけたら嬉しいです。

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  • 連載小説「戊辰鳥 後を濁さず」

    土木業界を離れることとなったため、今までの仕事の経験をもとに初めて小説を書きました。 全85話で完結。約55000字となりました。街から文学が生まれるのではなく、街づくり文学を目指して、真正面から書きました。 読んでいただけたら嬉しいです。

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

あらすじ 戊辰鳥 後を濁さず ―つちのえたつとり あとをにごさず― 第一部「釜場」 三月十五日(金)  農家であり地主であるトキ家の跡取り娘として生まれた私は、二十…

ジンベエザメのシミの味#なぜ私は書くのか

初めまして。モグラです。 小説の投稿を終えたので、書いていた時の所感とともに自己紹介をします。 6100文字程度。小説の大きなネタバレは含みません。 小説を書いたきっ…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」最終話

そう遠くないいつかの三月十五日  ゾウ山登山を楽しんだ人  新幹線の旅の疲れを癒す人  サッカーを楽しんだ人  毎日、仕事で頑張った人  そうやって、いろんな人た…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第84話

九月八日(日) 「まぁるくおさまった。」 と、ジンベエザメもホッとしている。 「ありがとう。ジンベエザメ。  これでいいんだよね。ジンベエザメ。」 「これでいいん…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第83話

九月六日(金)  投票用紙が届いた。  ペンギン候補とグリズリー候補はカピバラ駅の北口で、バイソン候補は南口で主に活動をしている。  選挙演説はカプバラ駅の線路…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第82話

九月一日(日)  対向車はあれど、海岸がよく見える。そろそろ江ノ島が見えてくるはずだ。  今日は、現場の工程の都合でジンベイザメらは、まとまった休みとなったらし…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第81話

八月二十六日(月)  クロヒョウが「調査費用を調達できた!」と、嬉しそうにやってきた。  だが私は、最近のことを整理したかった。  なので、「田んぼのあたりを歩…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第80話

八月二十日(火) 「トキさんは、露天風呂の水や、今こうやってプランターを洗った後の水がどこに流れていくか分かりますか。」と、ラクダが聞いてきたので、カピバラ市の…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第79話

八月二十日(火)  答えはイジワル問題で、何色でもなく、「咲かない。」が正解だった。  青色と回答していたラクダが、軽ワゴンでプランターの回収に来てくれた。 「…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第78話

著者補足  この出来事は、私にとって全くもって関係していない。  目の当たりにしていないから定かではない。  だが私なりに調べたので、記す。  キャラクターではなく…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第77話

八月三日(土)  新国立競技場の建設作業に携わっていた若い男性が過労で自殺していることをシマエナガさんは話してくれた。 「あれは、現場の問題ではありません。実際…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第76話

八月三日(土)  シマエナガさんと露天風呂に浸かっている。  あれからシマエナガさんは、カピバラ市のことを知ろうと市内の様々な場所に赴き、ゾウ山にも登ったらしい…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第75話

七月十三日(土)  だが、この線を辿ると、電車が小田原厚木道路と垂直に交差するようになっている。電車と道路が合流したその先には、ブタ川だってある。どうするつもり…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第74話

七月十三日(土)  シロクマが帰った後、なんでこんなに興奮してしまったのか分からず、自分のことが嫌いになった。  それを見かねてか、ジンベエザメが声をかけてくれ…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第73話

七月十三日(土)  ちょっと、トキには言いすぎた。当たっちまった。  俺だって、モグラの葬式には行きたかった。けれど、三人目が生まれるのと重なった。また娘だった…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第72話

七月十三日(土)  今日は横浜戦だ。  会場は新国立競技場。Jリーグが昨年から開催し出した「THE国立DAY」というやつだ。  とは言っても、私は民泊の駆けつけ要件で神…

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

あらすじ

戊辰鳥 後を濁さず
―つちのえたつとり あとをにごさず―
第一部「釜場」

三月十五日(金)

 農家であり地主であるトキ家の跡取り娘として生まれた私は、二十歳の時、祖父の養子となり、祖父からボロアパートを一棟譲り受けた。
 表向きはトキ家の血を絶やさないためとなっているが、実際は広大な土地を持つ祖父から相続を受けるためである。

 医師が祖父に宣告したおおよそ三年後までに私は相続税と

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ジンベエザメのシミの味#なぜ私は書くのか

ジンベエザメのシミの味#なぜ私は書くのか

初めまして。モグラです。
小説の投稿を終えたので、書いていた時の所感とともに自己紹介をします。
6100文字程度。小説の大きなネタバレは含みません。

小説を書いたきっかけ

ジンベエザメと、もう一度バカ話をしたい。
そう思ったのがきっかけでした。

昨年の七月ごろ、ジンベエザメからLINEの返信がこなくなりました。
私とジンベエザメのそれまでのやり取りの内容は、主に仕事の相談です。
いつもなら絶

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」最終話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」最終話

そう遠くないいつかの三月十五日

 ゾウ山登山を楽しんだ人
 新幹線の旅の疲れを癒す人
 サッカーを楽しんだ人
 毎日、仕事で頑張った人

 そうやって、いろんな人たちが集まって、その話題に花を咲かせている。

 ここは、「温泉旅館 朱鷺之湯」
 暖簾に書かれた屋号の周りには花丸が描かれている。

 この旅館には、さまざまなお風呂が用意されている。

 微炭酸の水泡の浮いた、それはそれは大きな大浴

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第84話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第84話

九月八日(日)

「まぁるくおさまった。」
と、ジンベエザメもホッとしている。

「ありがとう。ジンベエザメ。
 これでいいんだよね。ジンベエザメ。」

「これでいいんだよ。トキさん。」

 これでいいんだ。
 これでいいんだ。

「ねぇ、ジンベエザメ。私はこれからどうすればいい。」

 これでいいんだけど、どうしよう。
 わかんない。わかんなくなってきてしまった。
 そもそも、これでいいんだろう

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第83話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第83話

九月六日(金)

 投票用紙が届いた。

 ペンギン候補とグリズリー候補はカピバラ駅の北口で、バイソン候補は南口で主に活動をしている。
 選挙演説はカプバラ駅の線路を境に白熱している。

 さて、私は一体、誰の名前を書くべきだろうか。

 そうぼんやり思いながら、投票用紙とともに届いていた下水道使用料の領収書に目をやる。

 安い。

 金額がいつもより安い。
 慌てて、釜場を確認する。
 何も流

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第82話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第82話

九月一日(日)

 対向車はあれど、海岸がよく見える。そろそろ江ノ島が見えてくるはずだ。

 今日は、現場の工程の都合でジンベイザメらは、まとまった休みとなったらしく、母屋からその期間だけ出て行ったので、私も休むことにした。駆けつけ要件もなくなり、久々の外出だ。
 ビーバーのアメ車は左ハンドルだから、私の座る助手席は海を望める特等席だ。

「そういえば、シロクマから喧嘩したって聞いたぞ。大丈夫か。

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第81話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第81話

八月二十六日(月)

 クロヒョウが「調査費用を調達できた!」と、嬉しそうにやってきた。

 だが私は、最近のことを整理したかった。
 なので、「田んぼのあたりを歩かないか。」と、クロヒョウを誘った。 

 稲は所々黄色に染まり、収穫の段階へ移りつつあることを告げている。
 もたげだした穂先が風にゆれ、キラキラと西日に輝いている。

 洗いざらい話をした。

 下水排水費用で、資金がそろそろマイナ

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第80話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第80話

八月二十日(火)

「トキさんは、露天風呂の水や、今こうやってプランターを洗った後の水がどこに流れていくか分かりますか。」と、ラクダが聞いてきたので、カピバラ市の南西にある終末処理場だと答えた。

「そうです。カピパラ台地を西に一山越えた先の平地です。では、どうやってそこまで流していると思いますか。」

 確かにそう聞かれるとわからない。自然に流そうにもイグアナ地区と終末処理場は高低差があまりない

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第79話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第79話

八月二十日(火)

 答えはイジワル問題で、何色でもなく、「咲かない。」が正解だった。
 青色と回答していたラクダが、軽ワゴンでプランターの回収に来てくれた。

「あれから誰も伺わなくて申し訳ないです。さぞかし不安だったでしょう。ようやく理由をつけてトキさんのところに来れました。」と、ラクダは深々と頭を下げた。
「あと、浸透圧発電については聞かなかったことにしてください。あれは思いつきでした。申し

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第78話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第78話

著者補足
 この出来事は、私にとって全くもって関係していない。
 目の当たりにしていないから定かではない。
 だが私なりに調べたので、記す。
 キャラクターではなく、著者として、覚悟と責任を持って、ここに記す。

著者の著者補足
#創作大賞2024 #お仕事小説部門

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第77話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第77話

八月三日(土)

 新国立競技場の建設作業に携わっていた若い男性が過労で自殺していることをシマエナガさんは話してくれた。

「あれは、現場の問題ではありません。実際の現場の惨状は知りませんが、どう考えても計画の問題です。」と、シマエナガさんは言う。そして、それ以上は言わなかった。

「技術の結晶は、現場に現れます。
 私も現場で働きたいです。
 しかし、女性である以上、それはなかなか難しい。
 だ

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第76話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第76話

八月三日(土)

 シマエナガさんと露天風呂に浸かっている。

 あれからシマエナガさんは、カピバラ市のことを知ろうと市内の様々な場所に赴き、ゾウ山にも登ったらしい。その下山の際に、温泉に入りたい。と思ったらしく、いつかトキさんの温泉に入ろうと決めたんだ。だから今日は嬉しい。と、言っていた。

 ジンベエザメの案について、お話しした。うまく伝えられたか分からない。そうしたら思わぬ返答があった。

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第75話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第75話

七月十三日(土)

 だが、この線を辿ると、電車が小田原厚木道路と垂直に交差するようになっている。電車と道路が合流したその先には、ブタ川だってある。どうするつもりだろう。

「それは、これから考えるんだ。これからの話だ。
 橋だってトンネルだってなんだっていい。
 新東名高速道路もカピバラ市の区間でそれをやってのけたんだ。
 それを参考にして、自分の考えを持ってこれからのことを考えよう。
 シマエ

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第74話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第74話

七月十三日(土)

 シロクマが帰った後、なんでこんなに興奮してしまったのか分からず、自分のことが嫌いになった。

 それを見かねてか、ジンベエザメが声をかけてくれた。

「こういう時は、ワクワクした壮大な話をしよう。これからの話をしようや。」

 そう言って地図をダイニングテーブに広げてくれた。

 地図は、カピバラ市の都市計画図と平塚市の都市計画図をつなぎ合わせたものだった。それぞれの市役所で

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第73話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第73話

七月十三日(土)

 ちょっと、トキには言いすぎた。当たっちまった。

 俺だって、モグラの葬式には行きたかった。けれど、三人目が生まれるのと重なった。また娘だった。

 そりゃ男を望んでいたが、性別なんてどうだっていい。

―――――

「死ぬなというのは、親のエゴじゃないか!
 ものすごい悲しみだったんだ。
 子供の死を受け入れられないだけなんじゃないのか!」

「あのなぁ、トキ。考えれば考え

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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第72話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第72話

七月十三日(土)

 今日は横浜戦だ。
 会場は新国立競技場。Jリーグが昨年から開催し出した「THE国立DAY」というやつだ。
 とは言っても、私は民泊の駆けつけ要件で神宮外苑なんて行けるはずもなく、最近はサブスクの配信アプリ「ジュゴーン」での観戦の日々が続いている。そんな、私のことを心配してくれたのか、横浜サポーターのシロクマが私の家に来て母屋のTVで、あいまみえることとなった。応援合戦だ。

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