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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」最終話

そう遠くないいつかの三月十五日

 ゾウ山登山を楽しんだ人
 新幹線の旅の疲れを癒す人
 サッカーを楽しんだ人
 毎日、仕事で頑張った人

 そうやって、いろんな人たちが集まって、その話題に花を咲かせている。

 ここは、「温泉旅館 朱鷺之湯」
 暖簾に書かれた屋号の周りには花丸が描かれている。

 この旅館には、さまざまなお風呂が用意されている。

 微炭酸の水泡の浮いた、それはそれは大きな大浴場 甚平鮫ジンベエザメの湯
 熱いけれどお肌に優しい乳白色 白熊シロクマの湯
 笑っちゃうくらい香木や薬草が浮く 海狸ビーバーの湯

 周りからの熱を受けて自分もポカポカになった砂風呂 駱駝ラクダの湯
 湯の花が咲くぐらいその名の色に染まった 朱鷺トキの湯
 

 そして、その温泉たちの隅の方に、一風変わったお風呂がある。

 その名前は土竜モグラの湯

 その泉質は、熱かったり冷たかったり、ヒリヒリしたりぬるぬるしたりと日替わりで、入ってみないとわからない。

 ただ、これだけは言える。

 

 そのお湯は、
 決して、ぬるま湯ではない。


戊辰鳥 後を濁さず
―つちのえたつとり あとをにごさず―
第二部「煙柱」

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