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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第74話

七月十三日(土)

 シロクマが帰った後、なんでこんなに興奮してしまったのか分からず、自分のことが嫌いになった。

 それを見かねてか、ジンベエザメが声をかけてくれた。

「こういう時は、ワクワクした壮大な話をしよう。これからの話をしようや。」

 そう言って地図をダイニングテーブに広げてくれた。

 地図は、カピバラ市の都市計画図と平塚市の都市計画図をつなぎ合わせたものだった。それぞれの市役所でもらってきたらしい。この大きさはたぶんそれぞれA0であるハズだから、二つ合わせたら「都市計画図A-1.0」だ。
 A4用紙32枚分のそれはそれは大きな地図だった。

「まずここに書いてある線が、シマエナガさんが言っていたトラ急カピバラ線の想定される軌跡だ。

 俺は、ここの上に道路を通したい。

 おそらくだが、シールドマシンで地下40mを掘り進めると、大量の土砂というか泥が出る。これは、そのままどこかに持ってくと産業廃棄物として莫大な処分料がかかっちまう。だから、どこかにおんまけて、乾燥させて、量を減らして、土にして処分しなきゃいけない。どうせなら地盤の弱い箇所にちょっとずつ巻いて、この前の除塩作業のように乾燥材料と混ぜ合わせて放置する。それが一番安上がりだ。

 だがな、乾燥に途方もない時間がかかるし、シールドマシンが掘り終わるのを待たなきゃならない。だから二十年はかかると言った。

 それならばだ。線路と道路を一緒に通せばいい。道路が上で線路が下だ。下の方はコンクリートでできた穴の空いた箱状のものをひたすら並べて筒状にする。ボックスカルバートと言って、工場で作るからどんどん並べられる。それを整地する上でちょっとは土を掘らないといけないが、その出た土を箱の上に盛って丘にし、その上に道路を通す。最後は丘をジ・アウトレットのもうできている道路の高さに合わせて、電車の方はぐんぐん地下を掘って相模川の下を抜ければいい。

 こうすれば、無駄な土砂は生まれないし、工期も短縮できて、スタジアムも建設できる。道路があれば、試合終わりの駅前の混雑も解消できる。厚木南ICに乗れば、高速道路で帰れる。

 ジ・アウトレット近くの国道の交差点をアンダーパスにした工事があるが、その計画資料を見たら、あの工事は厚木南ICから降りてくる交通量まで加味して工事をしていない。だから新東名が全線開通したら、また大渋滞が発生しちまう。

 それならば、近くの国道から分岐して東に向かう横浜カピバラ線という道路をヒツジ川分水路のあたりで分岐させて、ジ・アウトレットに繋いじまうのがいい。」

 友達の友達は友達か。

 モグラの発言を思い出した。

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