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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第73話

七月十三日(土)

 ちょっと、トキには言いすぎた。当たっちまった。

 俺だって、モグラの葬式には行きたかった。けれど、三人目が生まれるのと重なった。また娘だった。

 そりゃ男を望んでいたが、性別なんてどうだっていい。

―――――

「死ぬなというのは、親のエゴじゃないか!
 ものすごい悲しみだったんだ。
 子供の死を受け入れられないだけなんじゃないのか!」

「あのなぁ、トキ。考えれば考えるほど死んだ方がマシって状況でもなぁ。
 衝動的じゃなくて、冷静に考えて死んだ方がマシって状況でもなぁ!
 死んじゃだめなんだ!」

「わかるけど、わかるさ!
 わかるよ。けど、それをモグラに直接言えるか!
 シロクマは言えるのか!」

「ウルセェ!黙れ! 俺は娘にはそんなこと言わねぇぞ!
 それが親の気持ちだ!
 だから、俺らは精一杯、愛を送らなきゃならないんだ!」

―――――-

 自分が死んだときもそうだが、俺は愛したんだと胸を張れるくらい愛したい。
 時間は有限だ。
 俺は後悔したくない。
 だから俺は、胸いっぱいの愛を注ぐんだ。
 そう改めて思わせてくれて、ありがとな。

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