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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第79話
八月二十日(火)
答えはイジワル問題で、何色でもなく、「咲かない。」が正解だった。
青色と回答していたラクダが、軽ワゴンでプランターの回収に来てくれた。
「あれから誰も伺わなくて申し訳ないです。さぞかし不安だったでしょう。ようやく理由をつけてトキさんのところに来れました。」と、ラクダは深々と頭を下げた。
「あと、浸透圧発電については聞かなかったことにしてください。あれは思いつきでした。申し訳ありません。」と、また深々と頭を下げた。
謝るのはやめてほしい。こちらこそ、プランターをそのままにしてしまっていた。今から洗うので待ってほしいと伝えると、ラクダは手伝ってくれるという。
母屋の流し場で、並んでしゃがんで洗いながら、ラクダはまたボヤキ出した。
「トキさんは、市長選でどなたに入れるかもう決めましたか。」
そんなこと職員が市民に聞いていいのか。とは思うが、まだ迷っていると答えた。
「私たちも迷っています。今回の選挙は駅前開発が争点の一つになっています。そのため、イグアナ地区の大規模排水処理施設の計画も動けなくなっています。それは、イグアナ地区の方々が新たに住む予定の駅前マンションが建つか建たないかで変わってしまうからなんです。市議会議員さんと市役所は立場が違いますが、ああやってイグアナ福祉館で提案してしまったからには、イグアナ地区のトキさん以外の方々は駅前マンション以外の土地に住むのは納得しないでしょうし。」
待ってくれ。その話だと私は納得している人になってしまっている。
「なので、あれからトキさんのところには誰も伺わなかったんです。そもそも主となる担当部署も決まっていませんし、今は職員も他のことに関心をもってしまっています。だから安心してください。」と言う。
いや、待ってくれ。結局、宙ぶらりんとは安心どころか、ますます不安になってきた。
「私は管理職になれていないから事業の方針も決められません。
それに土木の知識も乏しいから都市計画の部署にも配属されません。
ですので、あくまで環境対策課という立場から自分の所管の範囲内のことを言わせてほしいです。聞いてくれますか。」と、聞いてきた。
いやいや、待ってくれ。と思っていたが、ラクダは構わず喋り出した。
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